10.家で②
……とは言ったものの……普段の生活習慣のせいで、全く眠れない。
取り敢えず日記を早めに書いても、まだ十一時だ。
そんな事を考えていると、玄関の扉が開く音がした。
夜見「……何、今日は随分早いわね」
私の目の前には、私と同じ……いや、それよりは濃い紫の髪に瞳をした女が立っている。
スーツの胸ポケットから少し姿を覗かせている名刺には、その名前である未禍と言う二文字が刻まれていた。
未禍「あら……何か不都合でもあるの?私の可愛い夜見?」
夜見「……半ば育児放棄をしておいて、よくそんな事が言える……貴方に明里の気持ちが分かる?
確かにお父さんの分まで貴方が働いて稼がなきゃいけないのは分かるよ。
でも、私はともかく明里は!?物心着いた頃にはもう貴方は働き詰めで家にほぼ居なかった!
子の気持ちを想った事は無いの!?いい加減にしてよ……!
明里がどれだけ貴方に会いたいと言ってるか……!」
未禍「……私はもう寝るから。夜見も早く寝なさい?ね?」
夜見「はぁ!?ちょっと待ちな……本当に……貴方は……母親失格じゃない……!」
私は自身の寝室に向かう未禍を、ただ見ているだけだった。
──
寝室に入り、電気を付ける。
鞄をベッドの傍において、ベッドに座り込む。
未禍「……はぁ、はぁ……あぁ……」
……全く、夜見は本当に……
なんて可愛いのかしら……!
サラサラな髪の毛も素敵だし目付きが鋭いのもチャームポイントよね……
いやでもさっき夜見に言われた事……
分かってるわよ私だって!
でもお母さんあの人の分まで稼いで貴方達が楽して生活できるようになるまで極力関わらないって決めちゃったのよ……!!!
だって私貴方達の事見るだけで感情が昂っちゃうもの!!!
可愛い我が娘を見て感情が昂らない人間って逆にいるのかしら???
いやでもほんと
明里には悪い事してるわよね……たまには顔を合わせてあげるべきかしら……
今度の日曜に休み入れられるか明日上司に聞いてみよ……
なんか頭の中で感情を爆発させてたら疲れてきたわ……寝ましょ……明日も仕事だし……明日って言うか毎日ね……
──
私は自室に戻り、ベッドに横たわっていた。
夜見「……はぁ、本当にあの人は……あの人の代わりに、私がちゃんと明里を守ってあげなきゃ……」
夜見「私も、今日はもう寝ようかしら……いっぱい口に出して、疲れちゃった。ねぇ、ナイト?聞いてるんでしょ、ずっと。」
ナイト『え、なんですか突然?確かに聞いていましたが……』
夜見「……あの人の事、どう思う?」
ナイト『……私には、夜見のお母様にもお母様なりの考えがあるのだと思います。
あの御方の顔は、その様な顔でしたので。』
夜見「ふーん……まぁいいや……ね、ナイト」
ナイト『はい』
夜見「貴方って、異能力者じゃない人からは見えないの?」
ナイト『……まぁ、見えない様にもできますね』
夜見「ふーん、じゃあさ、出てきてよ」
ナイト『……?分かりました、夜見が言うのなら……」
夜見「それ、脱いで?」
ナイト「……え、甲冑を、ですか?」
夜見「うん、脱げるでしょ?」
ナイト「はい……脱げますが」
夜見「……私、貴方の素顔が見たいな?」
ナイト「……?まぁ、夜見の言うことであれば……」
そう言ってナイトは甲冑を脱いでくれた。そこには黒い髪に紫のメッシュが少し入っており、後ろで小さく纏めている170cm程の女性が居た。
夜見「……それ、ジャケット?」
ナイトは、甲冑の下にジャケットの様な物を着ていた。
ナイト「あぁ、これはギャンベゾンと言いまして……甲冑の下に着て、衝撃を吸収したりしてくれるんです」
夜見「へー……取り敢えず、こっち来て、一緒にベッド入って」
ナイト「……??はい、良いですが……」
夜見「うん、ありがと……それじゃおやすみ」
そう言って、私はナイトを抱き締めて目を閉じた。
ナイト「……??待ってください???どういう状況ですかこれ??夜見?え、夜見もう寝たんですか???ちょっと待ってください……!?」
夜見「……うるさいなぁ……私寝たいんだよ、大人しく抱き枕になってて。あと朝になったら起こして」
ナイト「……わ、分かりました……では、おやすみなさい、夜見……?」
こうして私は眠りに就いた。
と言うか、やっぱりナイトの素顔、可愛いじゃん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます