9.家で①

……ん?

あれ。私……あ、そうだ。

確か、明里と二人揃って寝ちゃったんだ。

……明里、まだ寝てるな。今、何時?

……うわ、八時だ。


夜見「……明里、起きて?もう八時だよ」


そう言って明里の身体を揺する。


明里「ん……ぅ……?おねーちゃん……?」


夜見「そう、お姉ちゃんだよ。もう八時だから……起きて、明里?」


明里「……うん……おはよぉ……」


夜見「晩御飯……食べる?今日もお母さん、帰ってくるの遅いらしいから」


明里「うん、たべる……最近、お母さんとあんまり会えないなぁ……」


夜見「……仕方無いよ。お母さん……お金、稼がないとだから」


明里「うん……そうだよね、頑張ってるんだもん、わがまま言ってちゃダメだよね」


夜見「……うん、取り敢えずお姉ちゃん、晩御飯作るから。」


明里「……うん」


……あぁ、慰めるのが下手だな、私

本当に……ダメだなぁ。

ううん、明里の前だけでは、頼れるお姉ちゃんじゃないと……

さ、料理、始めよう。

明里がテレビを見ながら楽しんでいる声を聞きながら、私は料理を作った。


夜見「……明里、出来たよ。今日はハンバーグ。」


明里「……!おねーちゃんのはんばーぐ……!!」


夜見「うん、お姉ちゃんのハンバーグだよ。さ、一緒に食べようか?」


明里「うん!」


あぁ、良い笑顔だなぁ。

明里には、このままで居て欲しいな……

そんな事を思いながら、明里と話しながらハンバーグを食べた。


明里「美味しかったぁ〜!おねーちゃんの料理、美味しくて好きだな……」


夜見「ふふ、ありがと。これからも頑張るね」


明里「うん!楽しみ!」


夜見「それじゃあ明里はいい子だからもう寝ようね?ほら、もう十時前だよ。」


明里「はーい!おねーちゃんおやすみー!」


夜見「うん……おやすみ。」


そう言って自分の部屋に駆けて行く明里を見届けて、私は食器を洗い始める。

……明里は、本当に良い子だな。

私なんかとは違う……きっと、幸せになれる。

……気付いたら、洗い物が終わっていた。


……十時か

まだ、十時か。

……どうしようか。

あ、比良坂先生にお礼の連絡を入れておかなきゃ……

スマホを取り出して、比良坂診療所の固定電話に繋がる番号にかける。


かけて数秒で、電話が取られた。


ミコト「はい、こちら比良坂診療所ですが……?こんな時間にどうされました?」


夜見「あ、比良坂先生?」


ミコト「……あれ、倉橋さん?」


夜見「はい、今日はお世話になったので、お礼をと」


ミコト「わ……そんな、大丈夫だよ、倉橋さんは出来た子だね……」


夜見「いえ、そんな事はありませんよ……とにかく、今日はありがとうございました。そう言えば、紅音はどうしてるんですか?」


ミコト「あぁ、岡本さん?さっき晩御飯を食べたら、あっという間に寝ちゃったよ。」


夜見「はぁ……なにも問題無いなら大丈夫なんですが」


ミコト「うん。それで……今日はそれだけ?」


夜見「あ、いや……一人、私達の協力者になってくれる人が見つかって……水浮蓮夏……って言うんですけど」


ミコト「え、水浮さん!?」


夜見「え、知ってるんですか?」


ミコト「知ってるも何も……その子も昔、遥さんが診てた子だよ」


夜見「えぇ……?どれだけ顔広いんですか、あの人」


ミコト「まぁ……それなりに名の知れた精神科医だから……遥さんは。それにしても……知っている人が仲間になってくれるなら、心強いね。」


夜見「……そうですね。それでは、今日はこれくらいで。今日はお世話になりました。比良坂先生。」


ミコト「ん、分かったよ。おやすみなさい。倉橋さん。」


そう言って電話を切った。

……今日くらいは、早めに寝るか。

そう思って、私は自分の部屋に戻って、ベッドに寝転んだ。

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