Neshieru/転生王女の世界征服とアルターエゴの妹
ネシエル
第1話 空想はここに
地獄だ。
そう思った。仲間はみんな死んだから。
地獄だ。
そう感じた。もう自分しかいないと思ったからだ。
でも、後悔はしていない。
それだけは絶対してはいけないと思ったからだ。
俺の名は早水賢者。
復習するために人生を全て捧げた愚かな男の名だ。
やっと終わった。
暗澹城。
多くの犠牲を仲間の命を払ってようやく辿り着けた場所であり、
文字通り黒一色で染まった城。
本来は城の原材料の黒曜石の輝きで幻想的な美しさを誇ったが、
現在は先程の戦いで放置して廃墟になった城と変わらなくなった。
姿だけではない、匂いもだ。
香水で染めたこの王宮は血が、体液が、死体が
仲間だったものがそこら中に散りばめており、
激しい戦いのせいで
仲間の死体が王宮内を埋まってしまい腐敗による激臭が鼻に悪い。
これも、全て・・・
俺、早水賢者は手に持つ聖剣を使い、
目の前の男、黒の鎧を着た男。
悪の帝王、悪のカリスマにして
世界を恐怖のどん底に陥れた。
全ての元凶。ヴォーティガンの胸を突き刺さる。
「馬鹿なこのヴォーティガンが
こんな、こんな馬の糞にも等しいゴミなどに・・・」
聖剣は男の心臓は完全に貫いた。
鼓動は感じず、死んだ感触は手に伝わり脳に伝達する。
あ、やっと死んでくれた。
やった、やった、やったああああああ
夢にまで、見てた。
コイツを殺したい、何度も願った。
殺したい。ベットで何とも呟いた。
それだけで俺は人生を仲間を妹を犠牲に、
でも、大丈夫。
もうすぐ、俺も・・・
愚かの俺の心臓の鼓動も完全に止まった。
△▼△▼△▼△
私はいつもここにいる。
目覚めてもいつもの天井。
消毒液の独特なにおいをする特別な病室に私がいる。
ここの匂いはいつも、鼻にツーンと来るが我慢するしか無い。
正式名称は高杉病院秘密病室。
政府まあ、厳密に言えば違うが
私、早水凛はここで暮らしている。
地下数十階に位置し、最高峰のセキュリティを敷いており
いくらヴォーティガーンでもこのセキュリティを突破することはできないと自負している。
なぜなら、この天才科学者。
早水凛が作ったセキュリティシステムだから。
代償として太陽もなく、窓もない
この寂しい部屋で私は死ぬ。
一応、料理も洗濯も専門のスタッフがやってくれるから生活に文句はないけど
やはり、窮屈と感じてしまう。
だから、私は祈る。
神ではなく。
私の唯一の血の繋がった兄であり、
唯一の肉親が無事に生きて帰ってくるように。
「凛さん!」
この病室に入れるのはが限りられた医師か
国連が許可した研究者のみ。
病室の自動ドアを開けて入ってきたのは
清潔感のある女性。高橋勇気。
私の専門の医者であり、
私の友人の一人でもある、この堅苦しい病院で唯一気軽に話すことができる人。
頭もよく、世界最高峰の頭脳を持つ私も認めるほどの天才にして努力家。
まあ、いつも、目の下にクマができてのが難点だか
「何ですの」
「討伐隊のみんなが帰ってきました。」
討伐隊。
それは、ヴォーティガーンを殺すためだけで作り上げた
国連が結成した殺人チーム。
ターゲットはヴォーティガーン。
米国、日本を滅ぼし、世界の半分も手に入れた野心家。
世界征服を目的としており、
その過程で確認できるだけで数億人の人々を殺し、
世界最も人を殺した殺戮者のランキングで一位に乗るなど
規格外な実績の記録保持者。
「本当、お兄ちゃんは無事・・
あがぁあ」
「ダメです。」
「ごほっごっほごほ。
はぁ。ぱあ」
鼻に血が匂いが来る。
嫌な予感だ。
私の感は悪い時にいつも発動する。
今回もだ。
それが、感が当たった。
それじゃ、今回は何が犠牲に。
仲間?家族?
「今回の生存者はキルス・スタイーン
ただ一人です。早水賢者は残念ながらヴォーティガーンと相打ちになり死亡・・・」
兄が死んだ。
その事実に凛は友人である勇気の言葉も聞き取れず
茫然とした。
何も不思議の話ではない。
相手は勝つが負けるの結果によって世界の命運を決める。
後に、天魔決戦と呼ばれる戦いに参加したのだ。
無事では済まないだろうと思っていた。
無事で帰られるほどヴォーティガーンは甘くないし弱くもない
兄は必ず勝手世界を平和にして帰ってくると言った。
でも、私は世界なんでどうでも良かった。
ただ、生きてほしかったのだ。
唯一にして愛する兄を病気で死ぬ自分の前に居てくれたら。
「それは、どれほどいいだろうで」
「おい、凛、死ぬな!!!
死んでは。私が許さないからな!!!」
兄が死んだことで何かが切れた。
生きる目的だ。
最初はただ言われたことをやってだけだ。
ヴォーティガーンを倒して復讐をすることも
両親の仇を取ることも、
全部どうでもよかった。
物心を付くときから兄は家族であり
兄は両親がヴォーティガーンに殺されたことが
きっかけで復讐鬼になり強く恨んだ。
兄は仇を討ちたい。
だから、助けた、頑張った。
兄は私も仇討ちを望んだと思っているが。
違う。
私は兄と一緒に暮らしたいと思った
復讐なんかどうでもいい
ただ、一緒に暮らしたい。
でも、言えなかった。
言ってしまえたら、兄は私を手放すと思った。
それが、とても怖くて。
自分の本音を閉じた。
後悔はある。
「一緒に暮らしたいと言えばよかったな」
△▼△▼△▼△
『一緒に暮らしたいと言えばよかったな』
私は夢をよく見る。
私ではない誰かの夢。
幼い頃によくお母様の胸の中で寝ているときによく見る夢。
とても悲しくて後悔している夢。
「まだ、この夢」
奇妙な夢から私、第二王女アルメリア・フルメンスは目覚めた。
蝶々が飛び交う。
この世界では珍しい虹色の羽根を持ち
それを、羽ばたいてこの空で自由で奔放で翼を使い
この優雅な城の中で飛び花の蜜を吸いに来た。
腕利きのある庭師によって作り出された人工の楽園。
プロビアス城内の噴水広場を中心に咲く花を外の他国の外交官を常に驚かせ続ける。
その中に、特に存在感を漂わせた少女が居た。
太陽の光を利用して
反射した金髪はスポットライト代わりになり、
綺麗な白い肌と肉付きのよい体。
ブルーダイヤモンドの色をした宝石のような瞳を相まって
この楽園に住む精霊と言ったって信じてしまう美貌の持ち主。
信じなくても誰かが作り出した人形の方が信憑性があるのかもしれません。
少女は花を撫で、
花びらを傷つかないように注意する。
相当な集中力が必要であり、
少女は誰にも邪魔させたくない。
「おい、アルメリア。
でめぇ、こんなところで何をしている。」
邪魔されたくない
少女、アルメリアの思いを無視して
楽園を入ったもの。
紅く、血のように濃く
瞳の漆黒に相まって誰をも威圧感を放ち
この楽園の庭を盛る王城の持ち主の王族の一族
フルメンス第一王子。バルト。
同じくフルメンス第二王女である
アルメリアの兄である。
正確に言うと従兄弟である。
「お前はいつも、ここに居るのな。
そや、汚れた血の入った王族だもん。
叔母上であるオーレリアの頼みでなければ
今頃、王族ではなく庶民として生きたかもしれなかったのにね。」
「・・・」
何も言うことはない。
事実だし・・・否定する要素もない。
嫌味として聞こえるかもしれないが
事実だ。
フルメンス王国の王であり最高権力者である。
母、オーレリアの実の娘である。
アルメリアに対して貴族たちは
表ではアルメリアを王女として讃えているが
裏ではアルメリアに入っている忌々しい血を陰で悪口を言っている。
実際にそう言った目線を物心を付いた時から浴びていたものだ。
「おい、謝罪は?」
「謝罪?」
誰に、いったい、
何を謝るの?
「何て、生まれたことだろう。」
「え」
「生まれてきてすいませんでしょうが!!!
聞けよ。このメス豚!!!」
頭を草むらの上に押し付ける。
男と女、腕力の差は歴然だった。
「痛い、痛い、やめて!!!」
「うるせぇ!汚れた盗賊の血を入っているくせに
どうせ、生まれたきたのも王族になりたいと思っただろう。
死ねよ。さっさと死ね。
生まれてきてごめんなさいで言え」
「やめて!!!」
「だから、ごほ」
アルメリアの頭を押し付けたバルトの顔面に謎の衝撃が放った。
衝撃はバルトの体を数メートルを吹き飛ばしてた。
アルメリアは自身を抑える手が消えたことで頭を上げると
「大丈夫!アルメリア」
そこには、銀髪の髪に白い肌。
紅の瞳を合わせた美少女が居た。
フルメンス第一王女。
メルイン。
国王であるオーレリアの実の娘にして
アルメリアの血の繋がった実の姉である。
「お姉ちゃん。」
王族らしからぬ名称で呼ぶ。
アルメリアの頭を優しく撫でる。
優しく丁寧にバルトが押し付けた頭を
痛みを和らげるために撫でる。
そして、血の繋がっている妹をいじめた醜い男を見る。
「メルイン、てめえ、
一体誰を殴ったが知っているだろう。」
「さあ、誰でしょうね。
女の子をいじめるゴミなんか知りませんよ。」
「いつも、そうやって知らないふりを。
俺はこの国の次期国王だぞ。」
漆黒の瞳を怒りに燃え上がった。
それと伴って、周囲の温度が高まる。
表現の話ではない。
自分を陥れた奴を許さない。
憎しみの感情を浮かび上がって、その情熱は
生命力は魔力に変換されて、
万能の元素は火に・・・
「・・・バルトぉ」
火は発する前に威圧を伴う言葉という水に沈められる
「!!!」
「あなたは私たちのことをどう思っているのかは興味ありませんが
仮にも同じ王族の血を流れている同士。
仲良くしませんか」
「は、はははははは。
メルイン、てめえは俺を笑い殺す気がはははは
ふざけるな!お前たちは生きてはいけない生物だ。
汚れた盗賊の血を引いた王族の恥さらしだ。
お前たちは生まれてきた時点で大罪人であり
生まれてきたのも、王家の資産を求めて生まれてきたのだ。」
バルトは服に付く土を払い立ち上がり、王宮内に入った。
その顔は汗まみれになり、さっきの威厳などなかった。
「お姉ちゃん。」
アルメリアは自身の姉を見る、
自身と同じ汚れた血を唯一繋がってくれた家族を。
「はい、よしよし、痛かったよね。」
「うん」
アルメリアの頭を撫でて少しでも痛みを和らげることに繋がることに期待する。
「ねえ、お姉ちゃん。」
「うん?何」
「私たちは生まれてはいけないのですか?」
汚れた血を受け継がれている自分たちは本当に生きてよかったのか、
母は優しいかった。
望まない子でも愛してくれた。
その愛は深くアルメリアを苦しめている。
「!!!」
メルインはアルメリアの頬っぺたを引っ張った。
地味に痛く、肉が悲鳴を上げている。
「痛い、痛い」
「アルメリア!!!」
怒りの表情を浮かべ
アルメリアを見る。
「生まれてはいけない人間なんで、存在しない。
あれの言うことを真に受けないし、
ましてや、ただの他人の言うことで死んでもいいなんで思わないで。」
「だって、みんなは生き恥だって。
何で生まれてきたのだって言っている。
みんなそう言っているのに・・・」
「いい、アルメリア。
自分の人生は自分で決めなさい。
他人に自分の人生を決めさせるな。
勝手に言わせばいいのだ。」
「それって、どういう意味?」
「生きていいという意味よ。」
△▼△▼△▼△
「うぅん!」
「よし!よし。
ごめんね。アル。」
メルインは泣いているアルメリアを母フルメンス王国の王。
オーレリアがいる部屋に連れてきた。
アルメリアは母の胸に飛び込み、
母の暖かさと心臓の鼓動が子守唄になり静かに眠りについた。
オーレリア、フルメンス王国の歴史でたった三人しか確認されていない女の身で
国王になった人物である。
知能高く、慈悲深い名君として名をはしている。
アルメリアに非常に顔たちが似ていて、
血の繋がった家族と第三者でも分かるほど。
「お母様、ここ最近バルト王子の愚行は目立ちます。
今日に関してはアルメリアにも虐待をしてしまい、
王子と言えど妹をあんなひどい扱いをするのはいかがなものかと。」
メルインはアルメリアの頭を優しく撫でながら詳細を語った。
バルトはオーレリアの兄の息子であり、
死んでしまった兄の子を迎い入れたものの
問題行動が目立ち、実の娘であるアルメリアはバルトの虐待が原因で怪我をしてしまうことは
オーレリアは黙ってはいけない。
兄の息子だろうと一番可愛いのは自分の娘だと。
「バルトにはこれから、アルメリアに一切の接触を禁じます。」
「有りがどうこざいました。お母様。
いくら、バルト義兄様は父と母がお亡くなりになったことで自暴自棄になってしまうのは
心が痛む話ですか。
それを、周りにぶつけるのは別問題。
今後、こういうことが起こらないことは保証できません。
接触禁止は妥当と思いますが護衛をつけますか。」
「それも、いいかもしれませんね。」
△▼△▼△▼△
私はここにいる。
いつか、きっと・・・
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