オサムの成長 その②

戸塚オサムの決心

 警察や学校の聴取、マスコミからのインタビューなど色々とあったが、林間学校遭難事件は既に過去のこととなっている。


 林間学校が終わるとすぐに期末試験があるうえ、その次は夏休み待ちでソワソワとし始めるからだ。


 そんなある日の帰り道――。


「ふんふんふ~ん」


 なんと、戸塚オサムは下手くそな鼻歌に興じていた。


「――なんか機嫌良さそうだね、オサムきゅん」


 一緒に下校しているつもりのキララが尋ねる。


「何かイイコトあったの?」

「ふむ」


 今日も後をつけて来るのはなぜか、と少し不審に感じているオサムが答えた。


「そういえば、今朝――」


 来る日も来る日も、トモダチを手に入れるため、オサムは教壇に立ち「おはよう」の挨拶をして来た。


 その不気味さゆえにシカトされ続けて来たのだが、


「――おは」


 そっぽを向きながら、すこぶる気怠い雰囲気で――いや、それでも白鳥ミカは返事をした。


 隣で双葉アヤメも口パクだけはしていたのだが、残念ながらオサムは気付いていない……。


 ともあれ、固い扉が開かれたのである。


 ――小さな一歩だが……。


 朝に感じた喜びを、今再びオサムは噛みしめていた。


 ――おっぱいに繋がる大いなる第一歩だろう。


 だが、その背中を見詰める天王寺キララは、ギリギリと奥歯を噛んでいる。


 ――あ、あのクソ女どもがあああッ!!


 ◇


「とはいえ、だな」


 ボロアパートに戻り一人になったオサムは、独り言を呟く。


「まだ問題がある――」


 クラス名簿を眺めていた。

 女子の横には、78、79、81などの数字が並んでいる。


「もう残っていないな」


 告白できる、おっぱいの大きな女子が、同じクラスには居ないのである。


 クラス替え直後から、どうも巨乳女子が少ないクラスだとの危機感は抱いていた。

 望みを託した双葉アヤメからは速攻で断られている。


 もちろん、再度告白するという機転がオサムにあれば、事態は変わっていたのだろうが――。


「他のクラスで探す――ううむ」


 さすがのオサムも、見ず知らずの相手に告白したところで、絶対に成功しないということは分かった。


 相手との接点が必要なのである。


 顔見知り → 挨拶 → 世間話 → 徐々にプライベートな話題 → ラブ。


 オサムは熟慮しつつ、ノートにサササと上記のようなフローを書いた。


「やはり、フェーズ4に至ってから告白すべきだな」


 だが、これが難しい。


 オサムが良く行くコンビニの店員相手では、とてもフェーズ4に至れる気がしない。

 レジでピッピッするのに忙しいだろうし、客と無駄話をしていたらクビになる可能性があるとオサムは考えた。


 ここまで思考プロセスを進めたところで、ハタと閃くものがあった。


 オサムは深夜に「とあるバイト」をしているが、まるで女っけが無い。だが、夏休みだけは、別のバイトをしたらどうだろうか?


「コンビニか」


 だが、シフト次第では男と組む羽目になる可能性がある。


 女性と長い時間を過ごせるバイトが良かった。なおかつ、確率論で考えるなら、女性比率の高いバイト――いや女だらけのバイトが望ましい。


「よし。ともかく女性だらけのバイト先を探そう!」


 その時、隣の部屋ではモニタが一台破壊されたのだが、万全の防音設備によりオサムの耳には届かなかった。


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次回から夏休みバイト編です。

法律無視したアホな内容となりますけどノーツッコミでよろです。

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