第18話 転校初日。動画投稿をした

 月曜日俺が新しい学園に行く日がやってきた。

 オーカマーさんが転校の手続きはしてくれてた。

 ほんとにあの人には頭があがらんよなぁ。


「あらあら、フブキちゃんはやっぱりいい男ね」


 ふふふと笑いながらそう言ってくれるオーカマーさんに俺は見送られて。


「行ってきます」

「頑張ってくるのよ」


 今日、初めての学園に登校することにした。

 事前に俺のクラスは伝えられている、2-C。

 それが俺のクラス。


 まずは職員室に向かうと、担任の先生が対応してくれた。

 でも、俺の顔を見て目を見開いてた。

 やっぱりこの異世界人っぽい顔立ちは珍しくて驚くらしい。


「え、えーっと、日本人って聞いてるけどほんとに?」


 どうやら疑われてるらしいけど。


「日本人です」


 そう答えると座っていた椅子から立ち上がる先生。

 そのまま俺の案内をしてくれる事になった。


 今までだと先生とこうして歩いていると居心地悪そうにされてたけど。

 別にそんな感じの表情はしてなかった。


 で、廊下を歩きながらこの後のことを伝えてくる先生。


「え、えーっと吹雪くん、だったよね?」

「どうでもいいけどこの学園は苗字呼びじゃないんですか?」


 そう聞くと慌てて訂正してた。


「ご、ごめんなさい。つい下の名前で呼んじゃいました」


 つい下の名前で呼ぶっていうのはよくわからないけど。


 次にこれからの流れについて説明してくれる。


「えー、まずはクラスに入って自己紹介をしてもらいます、それから私が席まで案内するので、そこで着席してくたまさい」

「分かりました」


 答えながら歩いてるとクラスの前に着いた。

 中からヒソヒソと声が聞こえてくる。


「転校生くるらしいぜ」

「女の子かなぁ?可愛かったらいいよなぁ」


 そんな声が聞こえてきた。

 悪いな、男だ!って心の中で答える。


「じゃ、入るわよ」


 俺は頷いて先生と一緒にクラスの中に入る。


 ガラッ。

 扉を開けた瞬間クラスの中の視線が全部俺に集まって、さっきまで聞こえてた話し声は一瞬にしてピタッと止んだ。


「じゃ、自己紹介を」


 そう言われて俺はクラス全体を見て名乗る。


「転校生の二木 吹雪です」


 クラスの中に適当にまんべんなく視線をやりながらそう名乗った。


 ザワザワ。


「あれ、ほんとに一般人?アイドルじゃねぇの?」

「星将にはアイドルを育成するクラスもあったもんなぁ?クラス間違えてねぇか?」


 星将学園、ありとあらゆる分野でエリートを排出し続ける学園。

 それにはアイドルやスポーツ選手などもある。


「自分は冒険者になるためにこの学園に来ました」


 そう言うと。

 ザワザワ。


 また教室が騒がしくなった。


「まじかよ」

「こんなイケメンならアイドルでいけるだろうに、なんで冒険者なんだ」


 そんなに俺が冒険者になることが意外だったのだろうか?

 クラス中が騒がしくなった。


 そんな空気でもクラスメイトの顔を少しでも覚えるために、視線をクラス中に向けていたが、その中にひとりだけ見覚えのある顔を見つけた。


「あ、あれ?!カリンちゃん?!」

 

 思わず名前を叫んでしまった。同じクラスだったのか!


 ザワザワ。


「あの転校生どっかで見たことあると思ったわ。この前ドラマの撮影してたやつだよな?見に行ってたんだよなぁ俺」

「や、やっぱり、あの人なんだ」


 ザワザワ。

 騒がしくなる教室。


 そこで先生が咳払いして、いったん場を静かにしてくれた。

 それから


「二木くんは来たばかりです。皆さん仲良くしてあげてくださいね」


 そう言ってから俺の席を案内する先生。

 俺が指定された席は偶然だろうけどカリンの横だった。


 そのまま歩いて席に座ると。


「よろしくね」


 俺はカリンちゃんにそう挨拶した。


「よろしくお願いしますね」



 放課後。


 俺の机の周りをクラスメイトが囲ってきた。

 それでいろいろと話しかけてくれるけど。


「ごめんね、ちょっと今日は用事があるからさ」


 俺はそう言ってみんなに謝りながら席を立つ。


 ここの学生はマナーがいいからかすぐに俺を解放してくれた。


 それにこうやって囲まれるのって慣れてないんだよね。


 それから家の方に帰ることにした。


 その途中も、主に女子生徒の視線はずっと向いていた。


 顔が良くなったのはいいけど、これだけ見られるのも絡まれるのもちょっとあれだよね。


 そんなことを思いながら家まで帰ってくるとルゼルが迎えてくれた。


「おかえりなさい。フブキさん」


 いつもみたいな笑顔を浮かべてくれる。


「うん」


 そう答えて俺は今日はある事をしてみることにした。


 そのある事というのは


 俺、やってみたいことがあったんだよな。


 えーっと。

 たぶんゲームとかやる人なら誰でも考えつくことだとは思うけど。


 チラッ。

 玄関のところで正座していたエルーシャに目を向ける。


「なにしてるの?」

「ぴざの配達を待つ練習をしています。私はあの味に魅了されたのです」


 ぴざの配達を待つ練習ってなんだろうって思うけどエルーシャを呼ぶと近付いてきてくれた。


 スマホを取り出してカメラアプリを起動する。

 動画を撮影するモードに変えてエルーシャに向ける。


 それでエルーシャにお願いする。


「必殺技見せてよ」

「なぜ私が?」

「またこんどピザ買ってあげるから」


 そう言ってみると頷いた。


「ぴざのためなら仕方ありませんね」


 了承してくれたのでエルーシャを立たせてから、空いてる部屋の真ん中に立たせた。

 俺はカメラの外に立つ。


 帰りに買ってきたメロンをアンダースローでエルーシャに向けて軽く投げてみた。


 すると


「エルーシャ・スラッシュ!」


 シュン!シュン!シュン!


 一本の剣から一度に複数の斬撃が飛び出して、メロンを6等分した。


 で、最後に


「なにかひとこと言って」


 小声で言ってみると


「ぴざ食べたい!」


 そこで、動画を撮るのをやめた。


 ちなみに今の【エルーシャ・スラッシュ】は名前適当だけどめっちゃ強い技。


 みんなのトラウマ製造機って感じの技。


 それでメロンを斬ってもらった。


 スマホでちゃんと動画が撮れてるかを確認。

 再生してみると動画の中ではエルーシャがメロンを斬っていた。


(よし。あたりまえだけど現実世界でもちゃんと映るんだな)


 頷くとエルーシャが歩いてきた。

 そんな彼女に聞いてみる。


「これアップしていいかな?」

「あっぷ?」

「世界中の人が見れるようにしていいかなってこと」

「この箱の中にいる私が世界中の人に見られる、ということか?どうやって?」


 俺は簡単に説明してみた。

 とは言えこの人に理解できるかは分からないけど。


「なるほど。だいたい分かった」


 ほんとにぃ?って思ったけど


「私の剣術が多くの人の参考になれば、それでさいわいだ」


 との事らしいので


【エルーシャさんにエルーシャ・スラッシュでメロンを斬ってもらった】


 ってタイトルでヨーチューブにアップしておく。


 俺になんで特殊能力が備わったのかは分からないけど、せっかく備わってこうしてエルーシャ達をゲームの外に連れ出せるようになったんだ。


 だから、ほかの人たちにも日本で暮らすエルーシャを見せたいなってそう思ったのでこうやって動画撮影した。


 だって、リアルエルーシャだよ?


 フェイファンをやった事ある人なら生エルーシャ見たくない?って俺は思うんだけど、コスプレを見る人なんて結局そういうのが見たいからだよね?


 でもその点これは本物だ。

 これ以上はない本物。


 みんな生エルーシャを見ていいよ!



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