第17話 名門学園の理事長からの連絡

 翌日の土曜日。


 朝からスマホに着信があった。

 着信音で目が覚めた。


(知らない番号だ。たしか星将の理事長から電話、だっけ?その人かな?)


 朝早い、とは言え10時くらい、非常識ではない。


 ベッドから出ながら電話に出た。


 すると優しそうな男性の声が聞こえてくる。


『初めまして。私は星将学園理事長の星川という者ですが、二木くんの番号で間違えないですか?番号は王さんと言えば分かりますか?彼から聞きました。突然の非礼をまずは謝罪します』

「はい。二木ですが」


 ほんとうに来た。

 オーカマーさんに伝えられていた超名門学園の理事長からの電話。


『良かった。少し会って話せないかな?君にがあるんだが』

「特別な話?」

『単刀直入に言います。星将学園への転校に興味はありませんか?』


 衝撃がはしった。


 星将学園は超名門。

 色んな分野の天才が多く集まっている学園。


 それで、そんな天才を数多く輩出している学園だからだ。


「えーっと、俺は勉強が……」


 ぶっちゃけ俺の頭はよくない。


 誰でも察せるように、俺が通ってた学校はあの高安が入れるくらいの学校でしかない。


 それを考えたら俺がそんな名門になんてっていう感じだが。


『もしも勉強についていけそうにない、という話なら星将は個別の教師をつけることができます。1対1で教える。その環境が整っています』

「で、でも、授業料が」

『こちらで全額負担します』


 全額負担?!

 それは本当なのだろうか?!


『王さんには話を聞いています。今いる高校は環境がひどいとのことですが、星将ではそのようなことはありません。興味があるようでしたら本日にでも星将学園へ来て欲しいのですが、もっと詳しいお話をしたいと思っています』


 それは願ってもない話だった。


 転校できるなんて。

 あの、高安と二度と関わらなくていいことになるなんて。夢のようだ!


「い、行きます!」

『いつ来れますか?』


 時計を見た。

 ここから星将学園だと12時にはいけるだろうか。


「12時には行けますが」

『では12時に校門前に来てもらえますか?』


 でも俺はその返事を聞いて思った。


「なんで、俺なんかにここまでしてくれて。招待までしてくれるんですか?」

『それは会ってみればすぐに分かりますよ。ではお会い出来るのを楽しみにしています』


 俺は元気よく返事をして電話を終えた。



 星将学園の校門前へつくと俺を出迎えてくれたのはふたりだった。


 この前に会ったカリンと名乗った女の子と男の人。


 カリンがまずは挨拶してくる。


「ようこそ星将学園へ」


 次にカリンの後に隣にいた男が口を開いた。


「私が理事長の星川 大我です。よく来てくれましたね。こっちは星川 夏鈴。私の娘です」


 そう言って紹介してくれた。


 カリンって理事長の娘だったんだ。

 このとき初めて知った。


「娘の担当をしてくれている王さんから全部聞いたよ。君は今の学校でいい扱いを受けていない、と。それから大切な娘を痴漢から守ってくれたとも話を聞いた。そこで君に恩を返したいと思ってね」


 それが俺をここに招いた理由だ、そうだ。

 そんなことで?

 とも思ったけど。


 俺からしてみたらたしかにありがたい申し出だった。


「今日一日うちの学園を案内してみたいんだが、どうだろうか?」


 まさか、自分がこんな名門の学校の敷地に入れるなんて思ってもいなかったな、そう思いながら俺は頷いた。


「お願いします」


 そう言って俺は理事長直々の校内の案内を受けることになった。


 カリンは部活があるといって部活のほうに行った。


 俺が来たのは昼休み、ということもあり食堂から回ることになったんだけどすごい数の視線が俺に向けられていた。

 部活に来る生徒のために土日もこの食堂は開いてるそうだ。


「誰だ?あれ、どこの学校の制服だ?」

「いやいや、そんなことよりイケメン過ぎんだろ、アイドル枠できたのか?あれ」

「じゃねぇの?ウチはそういうのも力入れてるもんなぁ」


 そんな声が聞こえる中俺は理事長に聞かれた。


「昼食は済ませてきたかな?」

「まだです」

「ふふふ、そうか。ウチの食堂はおいしいことで有名だ、是非どうだい?」

「ぜ、ぜひ!」


 俺はそう言って財布を取り出してみたけど。


「あっ、しまった。昼食代忘れちゃった」

「私が呼んだのだ。代金は気にする必要はないよ」


 そう言って理事長は食堂の券売機の方に向かってった。


 そうして俺にメニューを見せてくれた。


 簡単だけどどんなメニューか分かるような写真まである。


「どれがいい?」

「うわーっ。すごっ。メニューがこんなに?!」


 俺が適当に見た感じだけどメニューは100くらいある気がする。


 学食でこんな数を用意できるんだ。


 俺は気になるものをとりあえず口にしてた。


「からあげ定食、ラーメン、チャーハン、ハンバーグ、カツ丼、カレー、んー。全部おいしそー!」

「全部食べてみるかい?」

「いいんですか?!」


 そう聞くと驚く理事長。


「ど、どうしたんですか?」


 って聞いて思った。

 あー、そっか。


 少しは遠慮しろってことだったか。そりゃそうだよな。


「からあげ定食だけで」

「あ、いや。すまない。食べてもいいんだが、そんなに食べられるのか?」

「食べれますよ?」

「そ、そんなに細い体に入るのかい?」


 そう聞かれて思った。

 あ、そういえば俺今はめっちゃ痩せてるんだったな。


 太ってた時にはいっぱい食べてたけど、今はもう無理だろうな。


 その時の感覚で言ってしまってた。


「そ、そっか。気持ちが変わって食べたくなったら言ってほしい、ご馳走様するよ」


 そう言いながら理事長は券を買ってくれた。



 食事を終えると午後からの授業見学に向かう。

 結論から言うとからあげ定食だけでおなかいっぱいになってしまった。


 あのころのブタだった俺はもういなくなってた。

 ひととおりの見学も終えて午後3時くらいに理事長室へ向かった。


 この学園はすごかった。土曜日も勉強したいっていうならそういう生徒のためにも先生が勉強を教えてくれるらしい。

 ちょっとしか見てないけど名門とか、人気って言われてる理由がよく分かった。


「どうだったかね?星将学園は」


 そう聞かれて俺は答える。


「すごくいい場所でした」

「ふふふ、そうだろう。自慢の学園なんだ。どうかな?入学したいとは思ってもらえたかな?もちろん気にいらなければいつでもやめてもらってかまない」


 そう言われて俺は答える。


「転校したいです」


 机の引き出しからいろいろと書類を出してくる理事長。

 それを机の上に置いた。


「家庭が複雑という話は聞いているよ。今は王さんが保護者というのも聞いている。詳しい話は彼に通しておくから今日はこれを持ち帰ってくれないか?君はまだ子供だ。転校の手続きは王さんに頼めばいいさ」

「は、はい!」


 俺は答えて書類を受け取った。


 それから理事長が聞いてくる。


「転校するのはいつがいい?」

「できるだけ早い方がいいです」

「そうか。今日は土曜だから、最短で来週の月曜というのもでそうだが、どうだろうか?」

「そ、そんなに早くできるんですか?!じゃあ、それでお願いできますか?」

「分かった。ではそのように君の今の学校にも話を通しておこう」


 そう言ってメモを取っていく理事長に聞く。


「な、なぜそこまでしてくれるんですか?」

「娘の恩人なんだ。当然だろう?それに私としても君という人間に引かれたよ。だから自分にやれることはやる。それだけだよ」


 そう言ってから改めて俺を見てくる理事長。


「では、月曜日。星将の生徒として登校してくれるのを心から待ち望んでいます」

「は、はい!」


 そのあとに制服の採寸とかもしてくれた。

 予備があるらしく明日中に家まで届けてくれるようだ。


 それにしてもこの超名門学園に転校できるなんてすごくうれしーなぁ。

 

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