第12話 俺だけスキル取り放題


ふたりを連れ帰った翌日。

エルーシャには昨日適当に俺の部屋でこの世界に慣れてもらった。


で、そろそろ外に出てみようと思う。


「そういえばフブキ殿。認識阻害の魔法はかけ直していいか?」

「この世界にエルフは絶対にいないからね。もちろんかけちゃっていいよ」

「感謝する」


そう言うとエルーシャの耳は普通の人間のようになった。


(すごいよなぁ。この人。認識阻害の魔法ずっと維持してるもんなぁ)


そうしてフードを被ろうとしてるエルーシャの手を止めた。


「日本でそれはいろいろと、ね」


ローブみたいなマントは逆に目立つ。


「なにか、服はないだろうか?」

「ちょっと待ってて」


押し入りを探すと俺が昔に着てたのが出てきた。


それをエルーシャに渡す、前に。


「先に風呂でもどう?」


って言ってから思い出す。


オーカマーさんはシャワーも浴びずに出ていった。

まぁあの人別に臭くはなかったけど。


エルーシャの方も別にそこまで酷くないけど、せっかくだ。


「お風呂、というものは分からないが、世話になろう」


風呂まで案内をして説明をしてから外で待つ。


待ってる間に俺は気になってたことについて確認してみることにした。


「【アイテムポーチ】」


こうやって願うと日本でも持ってるアイテムリストが表示された。


【所持アイテム】

・バクレツノタネ



(ん?)


俺、ウルフからドロップアイテム拾わなかったっけ?

ってそう思ってると、見慣れない文字が追加されてることに気付く。


【所持アイテム】

・バクレツノタネ




【換金履歴】



(換金履歴?)


そう思ってこの項目をタップしてみると。



【換金履歴】

【自動売却設定済みのもの】

・ウルフの牙 3000円

・ゴブリンの牙 1000円



(え?なにこれ。ゲーム世界で手に入れたアイテムが換金されてる?!日本円で?!)


急いで財布の中を見てみると。


(お、お金増えてるぅぅぅぅぅぅ?!!!!!)


これ、このお金使ってもいいんだろうか?

とりあえず……自販機くらいで試してみる?



エルーシャに着替えさせてから俺はルゼルも連れて三人で外に出る。


道を歩いていると通り過ぎる人たちの俺への視線は明らかに変わっていた。


ザワザワ。


「あの男の子イケメン過ぎない?」

「きゃー!!!どっかのモデルなのかな?!」

「あんな顔日本人でなれるのかな?!」


そんな言葉が聞こえてきて男子からは


「横並んでるふたりもかわいすぎないか?!」

「外国人なのかなぁ?日本人じゃないよなあれ」


そんな声が聞こえてくる。


(やっぱ目立つよなぁ……)


って思いながらあんまり目立つのも好きじゃないので早足で目的地に向かうことにした。

で、俺たちは日本のダンジョンにやってきた。


今日検証することはいろいろとある。


まずはルゼルやエルーシャの魔法やスキルが現代日本のダンジョンでも通用するのかどうか。


今日やってきたのはDランクダンジョン。


(ダンジョンに入るの初めてかな。その初めてを大好きなゲームのキャラといけるなんて最高すぎるよなぁ)


中に入って歩きながら俺は追加でルゼルとエルーシャにスマホの使い方を説明していく。


この先ふたりも俺と離れて活動することもあるかもしれないし。

まぁ、極力ないようにはするけど。


オーカマーさんは、俺はあの人を信じてるからまぁ問題ないだろう。

あれでいて、頭の回る人だ。実際この世界には既に馴染んでいるらしいしもうスマホも契約したらしい。

すげぇハイスペック!


で、問題は。

俺のスマホを触って画面と睨めっこしてるエルーシャだ。


「あぷり?たっぷ?すわいぷ?」


俺のスマホのホーム画面をタップしたりいろいろとしてるけど、よく分かってないらしい。


「でんわ?つうわ?よーちゅーぶ?ぶらうざ?」


そう言いながらブラウザをタップして、タブを開いて何をどうしたのか分からないけど、


「ひ、ひぃっ!」


エルーシャは俺のスマホを落としてしまった。


「あっ……ぶな」


落ちる前になんとかキャッチできた。

しかし、その画面を見て俺は気付いた。


(なにをどうやってエロサイト開いたんだ?)


タブを消しながら俺は立ち上がった。


「す、すまないフブキ殿。驚いて落としてしまった」

「いや、いいよ」


そう答えながら俺は立ち上がって。


必要なことだけ教え込むことにした。


とりあえず必須なところ。


ロック解除、と通話アプリだけ。


しかしここまで機械オンチだとは思わなかったな。

オーカマーさんはすぐに覚えてくれたから、なんとかなるだろうとは思ったけど、楽観視しすぎたかな。


(エルーシャはダメそうだな。ルゼルは大丈夫そう?)


別にバカにしてるワケじゃない。

というより安心したよ。


原作ではエルーシャは大陸最強の戦士として崇められてて完全無欠、そんな評価を受けていて人間離れしてた。


それで孤高の存在とかって言われてたんだけど


(ここまで機械オンチなのか)


恥ずかしそうにしているエルーシャにもう一度スマホを渡して慣れてもらう。

これがないとさすがに不便だろうしなぁ、なんて思ってると。


今度はエルーシャが俺の肩をトントンしてきて


「フブキ殿、すまない。9万円の請求をされてしまった」


そうして画面を見せてきたけど、映ってたのはえろサイトのワンクリ詐欺の画面。


(なんでそうやってエロサイトばっか見てるんだこの人は!機械オンチって嘘だろ?!)


異世界人にスマホを持たせるのは速かったかもしれない。


そんなことを思いながらも歩いていると、俺たちは中ボスの部屋までやってきた。


歩きスマホダメ絶対、とかって思うけど。

詰め込むことが山ほどあるから仕方ない。


それから次の説明に入る。


「ここが、ボス部屋って呼ばれるところ、ね」


ふたりに説明する。


ふたりとも頷いてくれた。


「じゃ、行くよ」


俺はボス部屋に続く扉を開けると。

中にはビッグゴブリンがいた。


通常のゴブリンよりデカくて、攻撃力とかも高い個体。

それを目にして


「2人とも戦闘態勢……」


を取れ……って言おうとしたら。


「パラライズ!」


ルゼルは俺が口を開く前に体を動かして、右手を前に突き出して魔法を放つ。


ビリビリ!

ビッグゴブリンは動きを止めた。


ダッ!


隣にいたエルーシャが走り出して。


ズバッ!


シャッ!


さっきまで隣にいたはずのエルーシャは20メートルくらい先にいて、ゴブリンの死体を踏んずけていた。


ここまで、わずか3秒くらいだろう。


「これでDランクか。我々の世界だと子供の遊び相手だな」


そう言って俺の近くに戻ってくるエルーシャ。


内心で笑う。


実の所はそこまで期待してなかったし、こっちに来たらエルーシャは弱体化してるんじゃないか?って思ってたけど。


(強いぞ、エルーシャ!さすがは大陸最強と呼ばれた冒険者だ!)


とりあえずの検証は終わった。

世界を行き来しても……少なくとも日本⇔異世界の間で実力が変動することは無い、ということが分かった。


少なくとも弱体化はしてないように見える。


それらを確認した時


「ギィィィィィ……」


エルーシャが倒し切れなかったのか、ゴブリンが起き上がろうとしていた。

それに対して俺は


「エルーシャ、剣を貸してくれないか?」


頷いてエルーシャは渡してくれた。


【エルーシャソード】


と表示された。


なんでこの人は武器とか技に自分の名前を付けるんだろう。

そう思いながらゴブリンに視線を戻す。


ゴブリンはまだ完全には起き上がっていない。

根性で生き延びてるんだろうが。


【神速】


を発動させてゴブリンとの距離を詰めて


「スラッシュ!」


エルーシャソードを振る。


豆腐のようにサクッと斬られるゴブリン。

そのまま倒れていくのを見て、状況を分析。


エルーシャソードがたぶん強いのもあるんだろうけど。


(ゲーム世界で覚えた【神速】は問題なく使えるのかやっぱり)


地球には【神速】なんてスキルはない。


だから


(今地球で【神速】を使えるのは世界を探しても俺だけ……)


しかもそれだけじゃない。

これから先俺がゲーム世界でどんなスキルを手に入れてもそれを使えるのは俺だけなのだ。


俺だけがゲーム内のスキルをどれでも手に入れ放題……。

欲しいスキルは総取りだ。


そして、


(魔法も……たぶん使えるようになるのは俺だけ)


その事を考えると。


興奮が止まらなかった。


「ステータスオープン」


名前:フタキ フブキ

レベル:125

攻撃力:180

防御力:175

魔力:90

体力:300


装備

武器:エルーシャソード


所有武器:

ゴミ捨て場の日本刀(破損)

パチンコ


魔法:

なし


アクティブスキル:

神速、影分身、異世界換金所


パッシブスキル: 

世界を繋ぐ扉、ランナーLv1、視力強化Lv10

情報処理能力Lv10

   

称号:

忍び寄る影、言語マスター、ゴブリンキラー



この帰り道、自販機で増えたお金を使ってみたけどエラーとかは出なかった。

仕組みは不思議だけど増えたお金は本物のようだ。

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