第6話 家を作る快晴の日
「家を、作る……僕達で?」
「現実味が無い言葉を伝えられると、人間ってこうなるんだな」
「何もそっちの世界みたいに木を切る所から始める訳じゃない。ちょーっとした魔法を使うだけだ」
「「魔法?」」
「そう。しかも、このオレサマが作ったとびっきり凄い魔法だ」
にししと口を両手で隠しながら笑うと、2人の周りをクルクル飛び始めた。
何をしているのか、目が回りそうな速さで飛ぶエイトを見ていると足元から水色の光が溢れそうになってることに気付く。
これが、魔法。
夢の世界と言われればしっくり来てしまうような光景が広がっていく。
しかし異世界にワープしたと言われたら、それで納得してしまいそうな自分もいる。
光の先端の揺れ具合を見ている
そんな姿を気にかけることも無く、飛んでいたエイトがピタッと止まった。
その短い腕で腕組みをしたら、今度はニヤリと笑いながら2人を見下ろす。
「ふーん、予想通り。いや想定以上か?」
「足元が光るわ予想通りと言われるわ、結局俺達は今何をされてるんだ?」
「今は気にするな。この魔力量と魔質、高品質なんて単語じゃ終わらないな。それとも……『共鳴』が関係しているとか」
「急に小声になって、どうした?」
「……気にするな。それじゃあ始めるぞ」
そう言うと、地面に着地する。
そして右手が地面に触れると、光っていた地面から巨大な魔方陣が2人を中心に広がる。
意味は分からないが、文字だの円だの、五芒星に太陽と記号がとにかく散りばめられていた。
「イメージはそっちの世界との共通点である木にしよう。一本木でいい。けれど中身は部屋が沢山。サイズや数はイメージと連動する」
「つまり、僕達の
「形やサイズに縛りは無いが、イメージ出来なかった瞬間それは出来ない」
「非現実的過ぎるのは逆にダメ。家具は作れるのか?」
「1回でも使ったことがあるのをオススメするぜ。高級品の質感とか、イメージ出来るのか?」
そう言われたら出来ないものだ。
こうも
しかし今は落ち着いて指示に従おう。
細かく、それでいて多少のわがままを混ぜたイメージ……
「……お前らのイメージ、完成したようだな」
「な、なんだか自分1人の世界で作った感覚じゃなかったんだけど!」
「そりゃ最初にオレサマが魔力の波長を合わせたからな。それが出来ればイメージの共有化なんて、子供でも出来る」
「どーりで癖のある想像をした訳だ。いつもとは違う感覚で、どうも調子が狂う」
頭を抱える
相変わらず両極端の2人。
(ま、こいつらがいつまで経っても同じ姿なのも納得はするが)
1匹で何かを納得するエイト。
はぁ、と軽く息を吐くと……
トンッ
「「え?」」
柔らかい肉球で2人を魔方陣から押し出す。
どこかふわりとした、目に見える時間がゆっくりに見える不思議な空間が生まれた。
手放さないように抱きかかえた弟の感触を忘れる程、その動きに目を奪われる。
「……」
黒猫が詠唱を終わらせた時、魔方陣が更に強く輝き出す。
そして次に目を開いた時には、巨大な木がその場所にあった。
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