第5話 目が覚めた晴れの日

「……ん、まぶしい……芝生?」

「んんー、もう少し寝てもいいよね?」

彩人あやと? 俺ら、いつの間に寝てたのか」


 先に目が覚めたのはたくみの方だった。

 ゆっくりと体を起こすと、そこにあったのは見たこと無い景色だった。


 一面に広がる草原、どこかあったかい風、そして現代的な建築物が一切ない景色。

 遠くを見ると、正面には巨大樹。他には遠くに森が少しあるぐらい。

 空を見ると、きれいな青空とゆっくりと流れる真っ白な雲。


 彩人あやとの方はというと、横で呑気に寝ていた。

 ぐっすりと寝ている弟は置いといて、なんとなく空を見る。


「こうやって空を見るのは、久々かもしれないな」

「うーん、にいさん? えっと……ここって天国?」

「さぁな? というか高校生にもならずに兄弟そろってあの世に来たのかよ……」


 せめて憧れの高校生になってから来たかったと思ったが、現実とは相変わらず手厳しい。

 何かを忘れているような。

 目が覚めてから、頭の中で何か引っかかるものがあった。


「何か、大事なものを忘れている気が」

「まさかじゃないが、に戻る途中で記憶が飛んじゃったのか?」

「そうだ、黒猫‼‼」


 見上げると、そこにいたのはあの時の黒猫だった。

 どういう原理なのか分からないが、何故か前足で腕を組むような姿で浮いていた。

 体を縦にしているのもあり、どこか人間味がある。


「はぁ、オレサマはエイト。これ以上名乗りたくないんだが」

「浮いてる? に、兄さん! これって夢じゃないよね!」


 互いにほっぺをつねってみるが、結果は互いに痛いで終わった。

 エイトは機嫌が悪そうな態度で話を進める。


 最初に言ったのは、エイトが自分がこの世界出身ということだった。

 そう言われないと説明出来ない状態が出来ているが、困惑している兄弟を置いて説明を続けていく。

 この世界にあっちの世界のような技術力は無い。

 ただし魔術が存在し、そっち方面の技術だけが発展した。

 そして、この世界には人間以外の種族が多く生きていること。


「……さ、説明は分かったか?」

「はいそうですねーって信じられるかよ」

「で、でも! もしそれが本当なら、ここは本当に異世界ってことだよね、兄さん!」

「なんでそんなに目がキラキラなんだ……眩しい」


 にわかに信じられないたくみと、完全に信じ切った彩人あやと

 エイトからは、なんだか正反対な兄弟みたいに見えるとか。


「……そういや、最初の村は?」

「むらぁ?」

「ゲームにしろ小説にしろ、チュートリアルのようなものが必要だろ?」

「まさか……ゲートの先を、本人が決めれる、とでも?」


 そこまで言うと、痺れを切らしたエイト化け黒猫が大声で訴えてきた。

 そんなことが出来るのなら、最初からこんな何も無い空間には移動しない、と。

 そもそも最初から場所が分からないから2人を誘っただけであり、出た先を決めれるのなら1人で静かに暮らしていた。など。


「……んで、わんぎゃん叫んだ最後の感想は?」

「あー、言い忘れてたが」

「そういえば、今日は野宿?」

「野宿なんてする訳無いだろ










 家は、お前らが作るしな」


「「え?」」

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