第4話 黒猫話す扉の日
『おいおい、オレサマを見る前にビビるなよ』
子供にも大人にも聞こえる、生意気な話し方をした声がまた聞こえてきた。
どこか人間離れした声。
けど周りをいくら見渡しても、人の姿はどこにもない。
『お前らなぁ……兄弟だが知らんが、無視するのは流石によくないな』
ビチャ、ビチャ、ビチャ……
歩いてくる音があった。
その怖さに、2人が抱きあって1つの傘に入り込む。
そして音がした方を見ると……
「喋る……猫?」
「尻尾が2つに分かれてたら死んだ猫なんだっけ?」
1回互いを見て、深く深呼吸をする。
そして歩いて来た黒猫の方へ、一緒に歩く。
一歩、二歩、三歩目で届く距離になった。
逃げる様子は無く、静かにこちらを見つめていた。
『誰かと思えば、お前たちか』
「本当に話したよ兄さん‼‼」
「もしくは俺達が家でする途中で死んだか、か。13年、短い人生だったなー」
『タクミは死んで無いし、アヤトは隠れるな‼‼」
「「……っ!?」」
その言葉に見開く2人。
こんな黒猫は知らないし、過去に猫を助けた記憶もある訳が無い。
なのにこの小さな黒猫は自分達のことを知っている。
しかも手慣れた対応をしていた。
『忘れたなんて言うなよ? これでも8番目の
ふふん、と鼻を高く上げて自慢しているように見える。猫と比べて何倍も大きい人間からしたら可愛いものにしかならない。
シュクネコ? そんなものは聞いたことも無いし、教科書でも見たことが無い。
(首輪が無いってことは野良猫ということでいいんだよな? まさか漫画とかに出てくる科学者が発明した人語を話す猫とかじゃないよな?!)
『失礼な、オレサマはこれでも有名人だぞ。……ゴホン、そろそろ本題に戻ろうじゃないか』
「本題? まさか猫缶を買えとか」
『ネコカン? 違う違う、家出のことだぞ。い・え・で』
ここでようやっと話が本来の場所に戻った。
「それで、それがどうしたってんだ?」
最初に口を開いたのは
強気に言っているように聞こえるが、緊張しているのが顔に出ている。
喋る黒猫(?)は何かに気付いたのか、雰囲気がガラリと変わった。
『もう一度言おう。家出ってやつ、手伝ってやろうか?』
「理由は? 目的は? 一応言っておくが、今は猫缶1個すら買えない手持ちだぞ?」
『一旦食から離れろ……そうだな、理由を教えよう』
そこから黒猫は、手伝う理由と方法を教えてくれた。
と言っても、全てを話してくれた訳では無い。
1つ
家出先はこことは違う次元の世界。
2つ
その世界に移動出来るゲートが開けるのは今日だけ。
3つ
2人の家出を手伝うのは、恩返しである。
「正直言って、どれも信じられねーよ」
『そうかよ。それで、一緒に行ってくれるのか?』
「……最後に1つだけ」
『答えられる範囲内でなら、な』
「俺達じゃないといけない理由は?」
『元の世界に戻るなら
そこまで言うと、3人は白い光に包まれて、そして、消えた。
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