第14話 フードコート

 そして、


 ガヤガヤ、ガヤガヤガヤ


 僕と篠宮さん。

 今はお昼を食べてる。

 ショッピングモールの2階にあるフードコートで、2人でご飯を食べてるんだ。


 ちなみメニューはと言うと、篠宮さんは石焼ビビンバ。

 でもって僕は、たこ焼き。


 モグモグモグ


 篠宮さんとはよく一緒に食べてるけど、こういう学校以外の場所は初めて。

 このたこ焼きの味もそうだけど、なんだか新鮮な感じ。


 お互いに私服で、学校とはまた雰囲気が違う空間。

 これってちょっと……デートしてるみたい


 篠宮さんはどう思ってる?

 

 チラッ、


 あっ、黙々と食べてる。

 僕なんかよりもビビンバに夢中だ。

 でも不思議と美味しそうに食べてるようには見えない……

 いつもと違って、ただ無言で食べてる。


 どうしたんだろう?


 そもそも、なんでこんなことになってるのかって言うと、、、


 あの後、姉さんたちと鉢合わせた後、どうせなら遊んで来いってお金を貰った。

 で、2人は僕を置いて先に帰る。

 で、せっかくならってことで篠宮さんとお昼を食べることに。


 そして今に至ると……


 はあ、母さん、完全に誤解してた。

 篠宮さんが僕の彼女だって。

 まだ何も言ってないのに、勝手に話を進めて。

 全部あのバカ姉さんのせいだよ、バカ姉さん。


 2人とも僕らに気を利かせたつもりだろうけど……

 帰りは徒歩で帰らないと。

 あと帰った後、2人に絡まれてめんどうになること確定。


 はあ、なんだか億劫。


 ジ~ッ……


「篠宮さん、なに?」


 僕の方をじっと見てさ。


「別に、何でもな~い」

「……もしかして篠宮さん、僕のたこ焼き、狙ってる?」


 なんだ。

 欲しいなら最初から言ってくれればいいのに。

 篠宮さんのためならそれくらいお安い御用だよ。


「一つで良いならあげるよ。これ11個入りだし」


 本当は10個入りだったんだけど、なぜか店員のお姉さんが一つおまけしてくれたんだ。

 何も言ってないのにサービスしてくれるなんて、世の中には良い店員さんもいるんだね


「はい、まだ熱いからゆっくり食べて」

 

 ちゃんとフーフーしてね。


「違うよ。冬木くんの中の私って、そこまで食い意地が張ってるのかな?」

「いや、そんなことないけど」

「ふ~ん、どうだろうね」


 篠宮さん、もしかして怒ってる?

 心なしか機嫌が悪いような……


 そうだよね。

 早く帰って漫画、読みたいよね。

 明日からまた学校だしプライベートタイム、欲しいよね。


「はあ……」


 篠宮さんの大きなため息。


「ごめん、僕の家族が勝手に……」

「ううん、そうじゃなくて。冬木くんのお姉さんってすごい美人なんだな~って」


 えっ、


「姉さんが? そうかな? 全然そんなことないと思うけど」

「うそ、絶対そうだよ。顔もそうだけどスタイルも細くて良いし、それにすごくオシャレ。絶対モテるよね?」

「う~ん……」


 正直、いつも一緒にいるから分からない。

 確かに姉さん自身、こうみえて自分はモテるんだって日々自慢してくる。

 だけど、実際には彼氏いない歴年齢なのを僕は知ってる。


 それに、外ではしっかりしてるように見えるけど、普段家にいる時はガサツ過ぎて目も当てられない。

 僕はもうそっちのイメージの方が強すぎて。

 今さらメイクなんて覚えたところでどうにも。

 だってアレをずっと見てきたら、ね。


「そっか、そうだよね……あんな綺麗なお姉さんがいるんじゃ、普通の子に興味なんか持たないよね……」


 篠宮さん、ストローでグルグルしてる。

 さっきからどうしたの?

 姉さんと会ってからずっとこんな感じだよ


「アレで料理もできるんだよね? はあ、私なんかじゃとても敵わないよ……」


 ……もしかして姉さんと張り合ってる?

 僕のことがそうだから?

 そんな、他の人は知らないけど、僕基準だと篠宮さんが天と地の差で圧勝。

 比べるまでもない。

 

「いや、あんなの所詮外面だけ。アレだよ、外ではちゃんとしてるように見えるけど、家ではどうのこうのって」


 うちの姉さんは特にそれが酷くて……

 だから、


「ううん。しかもお母さんまであんなに綺麗で……あの姉にあの母親……はあ、冬木くんが可愛いのもうなづけるよ」


 可愛いって……いや、なにそれ?

 あの、僕、男なんだけど? 

 それを言うなら僕なんかよりも篠宮さん、君の方がはるかにそうだよ。

 可愛いよ。


 はあ、やっぱりそんなワケないか。

 篠宮さんも僕のことって、ちょっと期待しちゃったよ。


 ……まあいいや。


「それで篠宮さん、この後どうする?」

「ん、なにかな?」

「なにがって、そのままの意味だよ。今日はこのまま解散するか、それかもう少し遊んでいくか、どっちにする?」


 母さんに貰ったお金もまだまだある。

 余った分はおそらく没収されるだろうし、せっかくだから使い切りたい今日この頃。


「それで、僕としては……その、遊ぶ方がいいなって……篠宮さんが良ければだけど」


 一緒にいられるなら、少しでもそう。

 これは遊びもとい、デートのお誘い。

 今日の僕、結構勇気を出してるよ。


「うーん……どうしようかな〜」


 か、考えるんだ……

 遊ぶって即決してくれないんだ……

 どうしよう。

 勇気を出して誘ったまではいいんだけど、断れたら結構くる……


「……私がこのまま帰るって言ったら、冬木くんはどうするのかな?」

「えっ? そんな、なら僕も帰るけど……」


 他に選択肢、なくない?


「ふ~ん、帰ってお姉さんと遊ぶんだ」


 なんでジト目なの。


「そうだね、一緒にゲームでもやろうかな」


 僕と姉さんってさ、実力がほぼ互角だから、やってて結構白熱するんだ。

 激戦の末に勝った時はもう。

 その分負けた時は悔しいけど。


「それで、よく取っ組み合いのケンカになることもあって……って、あっ」


 篠宮さん、無言だ。

 悩んでるようではなさそうだし。

 篠宮さんのその顔、なに考えてるの分からないよ。

 それとも、


「……やっぱり、嫌だよね」


 僕なんかと一緒に遊ぶの。

 うん、初めから分かってた。

 弁えるべきだった。


「ごめん、無理言っちゃって……」


 早く帰ってソレ、読みたいよね。


「……いいよ」

「ん?」

「いいよって言ったんだよ。せっかくだし少し遊んで行こうよ」

「っ! いいの⁉」


 本当に⁉


「何度も言わせないでよ。それに冬木くんが出してくれるんだよね?」

「うん、任せて。と言っても、さっき母さんに貰ったヤツだけど」

「じゃあ、遠慮なく甘えさせてもらうね。私、さっきコレにほとんど使っちゃったし」


 ふう~、良かった。

 篠宮さん、どうやら僕と遊んでくれるみたい。

 嬉しさよりもホッとした感じの方が強い。

 

 グーン↑↑


 うん、僕のアプローチ力が+3上がった。


「それで、どこに行くの?」

「決まってるよ、それは……あっ」


 と、その前に、


「それ僕が持つよ。手ぶらだし」


 篠宮さんの漫画。

 バックにその漫画、流石に重いだろうし。

 男である僕が持つべきだと思うんだ。


「い、いいよ、全部私が持つから」

「ダメ。僕が持つ」

「ホントにいいから……」

「でもずっと持ってたら、篠宮さんの腕が明日筋肉痛になっちゃうよ」

 

 重い荷物は男が率先して持つのが常識。

 それくらい僕でも心得てる。


「それに、ここは男である僕が持った方が絵面的にも──」

「しつこいよ」

「……ごめん」


 ……怒られちゃった、レベルダウン。


 シューン↓↓ 


 

 うん、元通り。

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