こどもの日

5月5日(金)

　お父さんとお母さんが、ゲームを買ってくれた。

　ずっと前からほしかったやつ。すごくうれしい！

　さっきからお兄ちゃんがあそんでる。

　お兄ちゃんも、このゲームがほしかったみたい。

　ぼくもやりたかったけど、ダメだって。

　そんなに夢中になるくらい、おもしろいんだ。わくわくする。

　でも、かしてっておねだりしすぎて、たたかれちゃった。

　ほっぺがいたい。でも、ぼくのせいだから。

　ちゃんとはんせいします。

　今日のごはんは、すごくごうかだった！

　こどもの日だから、とくべつだって。

　お兄ちゃん、すごくよろこんでた。

　ハンバーグもエビフライも、ぜんぶおにいちゃんにたべられちゃった。

　でも、お兄ちゃん、すごくニコニコしてた。

　だからぼくはがまんする。

　ぼく、いい子かな？　えへへ。

　デザートもあったよ。イチゴがのってる、おっきなケーキ。

　でも、ぼくのぶんはなかった。たぶん、ぼくはまだ小さいから。

　食べすぎになっちゃうから、わざとよういされてなかったんだとおもう。

　それでも、どうしても食べたかった。すごくおいしそうだったから。

　ひとくちちょうだいって言ったら、またなぐられちゃった。

　こんどは、あたまがいたかった。

　まっぷたつにわれちゃうかと思った。

　でも、わがままを言ったぼくがわるい。

　またはんせいしなきゃ。

　お兄ちゃん、ごめんなさい。

　こんな弟で、ごめんなさい。

　あした、なかなおりできるかな。

　また、いっしょにあそびたいな。

　おこらせないように、がんばるから。

　だから、もうゆるして。

　おねがい。

　ぼく、もっとおりこうさんになるから。

　もう痛いのはやめて。

　つらいよ。

　おふろに入るとき、キズがいたいの。

　そんなぼくを見て、お兄ちゃんはたのしそうにしてるね。

　ぼくのキズに、わざと水をかけるよね。

　やめてっておねがいしても、わらってるだけ。

　ぼくが泣いたら、もっとうれしそうにする。

　なんで？　どうして？

　ぼくは、こんなにくるしんでるのに。

　ぼく、お兄ちゃんがこわいよ。

　なにを考えてるのか、わかんないよ。

　毎日毎日、まるでぼくはお兄ちゃんのオモチャだ。

　一体どういう気分なの？

　僕が苦しんでるのがそんなに面白い？

　お前は人の心がないの？

　僕はお前が人間だと思えない。

　あー、なんか馬鹿らしくなってきた。

　アホな小学生を演じて日記書いてきたけど、そろそろ飽きてきた。

　それに、もう限界。

　こんな風に虐げられる日々に、もう耐えられる気がしない。

　あのクソ兄貴。早く死ね。

　いや、殺そう。

　包丁で刺して、ぶっ殺してやる。

　お前に散々浴びせられた暴力。

　今度は僕が復讐する番だ。

　恨むなよ兄貴。

　僕は、ついに解放されるんだ。

　……だめだよ、お兄ちゃん。

　そんなに泣いてもゆるさないよ。

　あぁ、もう。うるさいな。

　それじゃあ、たくさんたたいてあげるね。

　こわれかけのテレビって、たたいたらなおるんだって。

　お兄ちゃんのあたまは、なおるかなぁ？

　いたい？　ねえ、いたい？

　あはは、おもしろい。

　もっと、いたくしてあげるね。

　ぼく、がんばっておにいちゃんをなおしてあげる。

　えらいでしょ？　ねぇ、ほめてよ。

　そっかぁ、こんなきぶんだったんだね。

　ぼく、すっごくたのしいよ。

　ねえねえ、ちゃんとわらってみせて。

　せっかくいっしょにあそんでるのに。

　お兄ちゃんも、たのしいでしょ？

　ねえ、お兄ちゃん？　ちゃんと聞いてる？

　……あーあ。

　ざんねん、こわれちゃった。

　なおしてあげられなくて、ごめんなさい。

　じょうずにできなかったから、「はんせい」しなきゃね。

　……あははっ。

　もうお兄ちゃんは、なんにもきこえないかー。

　うわぁ。ぼくもお兄ちゃんも、まっかっかだね。

　いやなにおいがする。

　早くおふろに入りたいな。

　お兄ちゃんも、いっしょに入る？

　お兄ちゃんの全身のキズ、ぜんぶあらってあげるよ。

　ちゃんとこすってきれいにしようね。

　どれくらい、いたいのかな？

　すごくこわいね。

　こんなことかんがえるなんて、ぼく、おかしくなっちゃったのかな？

　でもね、お兄ちゃん。

　全部、お前のせいだよ。