第37話

「ゾンビの 量が 多いな・・・」


ボリツクルは 他のチームから 奪い取った

黒塗りの ゴツい車に 乗り込む

これで 一気に 山の頂上まで

駆けあがる気だ


「あれは 人間でも ゾンビでもない

人間でも ゾンビでもない

ただのゴミ」


自分に 言い聞かせる

ボリツクル

アクセルを 全開にし ゾンビを

次々と なぎたおす


一方 その頃


「お母さん?」


ネイスの 母親は あきらかに

様子が おかしい

右手に 握りしめた ほうちょうで

キッチンの シンクの ステンレスを

叩き 続けている


「あれ フライパンは??」


アーリントンが あたりを 見回すと

壁に 新たな キズが あり

床に フライパンが 転がっているが

まるでフランスパンのような 形状に

両側から つぶれ 二度と 使えないように

変形している


「・・・ねぇぇ」


ゆっくりと ふり返る ネイスの 母

やいばが ネイスたちへ向く


「お母さん 冗談でしょ・・・」


いつもの 様子ではない

あばれると 言っても ほうちょうを

振り回すことは ないからだ


「ギィー」


顔が ゆがんでいく ネイスの母


「二人とも 逃げて

お母さんは わたしが くい止めるから」


ただならぬ雰囲気の ネイスの母

腹の 前に ほうちょうを かまえ

ネイスめがけ 突進して来る


「キャアーーッ」


悲鳴を あげる アステーレ


「ヒィッ」


声に ならない声を出す

アーリントン


「はッ」


ネイスが ギリギリで かわし

母親の 両手を 押さえるが すぐ

ふりほどかれる

その様子を 見て 一目散に 逃げる

アーリントンと アステーレ


「お母さん 冷静に なろ」


なんとか 落ち着かせようとする

ネイス


「ポテトォ」


近寄る 娘に ほうちょうを

ふり下ろす ネイスの母


「キャッ」


すんでのところで 回避する


「キィエエエエエエエ」


咆哮する ネイスの母


「今日は どうしちゃったんだろ」


だんだん あせりだす

ネイス


ガタン


ネイスの 母が いきなり 飛び蹴りをし

それが お腹に 当たり 倒れこむ時に 後頭部を

強打する ネイス


「ギャハ」


目の前に 星が舞う ネイス

その スキに 二人を 追っていく

ネイスの 母


「イッターァ 待って」


家じゅうを ものすごい スピードで

探し続ける ネイスの母

クローゼットの 奥に 隠れる

アステーレ


「ウー」


部屋を なめ回すように 見る

ネイスの 母


「ひぃぃ」


すき間から その様子を 見て

クチを 手で ふさぎ

服の 奥へ さらに 隠れる

アステーレ


ガタッ


ネイスの 母が クローゼットを

開ける


チャクッ


ほうちょうを 服の 間に 突き刺す

ネイスの 母


チャクッ


チャクッ


アステーレの すぐ 目の前に ほうちょうの

ニブい ギラつぎが 飛びこむ


「ンぐぅ」


指の スキマから 声が もれ出る

アステーレ


「お母さん!!」


痛む頭を おさえつつ 母を 制止しようと

する ネイス


「あっ 待って ッツ」


横を すり抜け 走りさる

ネイスの 母

ネイスは 頭が 痛くて 機敏に

動けない


ダッダッダッ


階段を 駆け上る音


「こっち来た・・・」


ベッドの下に 隠れる アーリントン


「うぐうっっ」


クチを 手で おおう

アーリントン


チャクッ


ベッドに 乗り ほうちょうを

ふり下ろす ネイスの 母


チャクッ


「お母さん ヤメて」


母を 後ろから 羽交い締めにする

ネイス


「ウッウー」


手から ゆっくりと ほうちょうが

落ちる


ストンッ


アーリントンの 目の前の 床に

突き刺さる ほうちょう


「キャーーーーー」


木を 割く ような悲鳴が

アーリントンの クチから

あふれ出る


「アーリントン もう少し

隠れてて なんとか するから」


ネイスも 必死に 押さえるが

ふりほどき 逃げていく

ネイスの 母


「う゛ん」


変な 声が 出る

アーリントン


「よし イイこね」


なだめるように 言う

ネイス


タッタッ

ガチャッ


「ヤバい 外に 出ちゃった」


玄関の ドアが 開く 音に

さらに あせる

ネイス


「待って」


一生懸命に 追いかける ネイス


「どこ行っちゃうの

待ってよー」


どんどん差が 開いていく


ヴィーーーン

バチャッ


「えっ」


視界に いきなり 黒塗りの車が

出て きたと 思ったら ネイスの母の

姿は 消える


「スワットの 車

誰が 運転してるのよーッ」


走り去る車に 怒号を あびせる

ネイス


「なんだ こいつ

しがみつきやがって」


ボリツクルの 運転する車の 前方に

女が いきなり 飛び出し ガッチリと

くっついて 離れない


キーッキーーッ


車を 左右に 蛇行させる

ボリツクル


「クソッ

車を 止めた時に 撃ち殺してやる」


振り落とすのを あきらめる

ボリツクル

さらに 加速する


ドスンドスン


フロントガラスを 叩く 女


「ええい ウザいな」


未舗装の 山道へ 入っていく


「この揺れでも 落ちないのか」


激しく バウンドする 車

でも 女は 落ちない


「ふう やっと ついたぜ」


やっとの 思いで 頂上まで あがる

ボリツクル

車を 降りる


バンバン


「よし 女の捜索だ」


タブレットを 片手に 探しはじめる

ボリツクル


「うん??

なにか 動いているぞ」


草が ゆれたように 見える


「おいで 怖くないよ」


そーっと 近寄る

ボリツクル

しかし そこにいたのは・・・


「・・・えぇぇ

クーガー お前」


肉食獣だ


「あ゛ーーーッ」


バリボリという 音が 森に 響きわたる


一方 その頃


「こっちだと 思うんだがな~

おっ 公園だ トイレ行こう」


描いて もらった地図を片手に

トイレの 明かりに 尿意を もよおす

ニック

様子を 見ながら 入る


(個室に だれか入ってるな)


少し 警戒しながら 小便器へと進む


「ぅーッ」


だいぶ たまっていた


ガチャ


誰か 個室から 出てきた

思わず 二度見する ニック

キレイな 女の人が 出て来て

ニックの 股間を 凝視して

いる


「ぇ男子ト・・・」


言葉に つまる ニック

顔が 赤くなる


「ウフフ」


ニックの 顔を 見て ほほえむ 女


「あっ ポテトを・・・

なるほど」

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