第33話

ニックたちが ファッション専門店から

出て 暗闇の町を 歩き 警察チームの

本部に 向かっている時のこと


「ねぇ オオワクダニヤマ」


最後尾を 歩く オオワクダニヤマに

アステーレが 話しかける


「なんでしょう アステーレさん」


月あかりで かろうじて アステーレの

顔が わかる


「あなたの ウチに 銃とか

ないの??」


今 安心できる ツールが欲しい

アステーレ


「あっ そういえば 護身用の銃が

ありまーす」


すっかり 忘れていた 銃を

思い出すオオワクダニヤマ


「やっぱ あるよね

なんで 持ち歩いてないの??」


なぜ 丸腰なのか 問う

アステーレ


「それは 護身用なので

万が一 身の危険が ある時にって」


今まで 危険性を 感じて いなかった

オオワクダニヤマ


「今が その万が一 って時

じゃあないの??」


鋭く つっこむ

アステーレ


「あっ そうですわね」


ハッと する オオワクダニヤマ


「それじゃあ 取りに行ってよ」


意地悪そうな 笑顔を 見せる

アステーレ


「そう・・・ですわね」


どうも ハッキリしない

オオワクダニヤマ


「なに??暗闇だから コワいんだ~」


オオワクダニヤマの 肩を

ツンツンする アステーレ


「そんな こと ありません」


強がって みせる

オオワクダニヤマ

ツカツカと みんなと 反対側に

歩いて行く


「あーあ 行っちゃった」


思わず ふき出しそうになり クチを

おさえる アステーレ


「あれ オオワクダニヤマは??」


1人いないことに 気付く

アーリントン


「ああ トイレだってさ

アーリントンも トイレ 行ってこいよ」


また 意地悪そうに 笑う

アステーレ


「いえ 結構です」


なにかを 察知する

アーリントン


「チッ」


悪態を つく

アステーレ


「おい どうかしたか??」


後ろを 気にかける

ニック


「い~え

全員 そろってますよ」


あからさまな ウソを言う

アステーレ


「ああ それなら イイんだ」


暗くて よく わからない

ニック


「はーい 行きましょ」


アステーレの声に 背中を 押され また

歩きだす ニックたち


「ああ 暗い・・・

ああっ」


地面に なにかが あって つまづきそうに

なる オオワクダニヤマ

よく 見ると 死体だ


「なんだ ビックリしちゃったじゃ

ないの」


つま先で 蹴りとばす

オオワクダニヤマ


「ウゥ」


ゾンビ化して いるようだ


「ヒッ・・・」


あわてて 走り出す

オオワクダニヤマ


「ハッ ハッ ハッ」


通りの 真ん中を 堂々と 走る

オオワクダニヤマ


「はぁぁ 心臓に 悪いわ」


やっと 自宅に たどりつく


ガチャ


「ここまで 来れば 安心ね」


家じゅうの 電気を つける

オオワクダニヤマ


「寝室の ここ・・・

あった」


ベッドの脇に ランプが あり

その下の 引き出しに 大きめな

ハンドガンが ある


「弾は PLR-16の弾は・・・」


弾の 残数を 確認する

オオワクダニヤマ


「マガジンに 1発

あと これを 入れてっ

全部で 10発・・・」


マガジンを 確認して 全部 装填する


ビーヴィーー


玄関の ブザーが 鳴る


「えっ 誰かしら」


こんな 状況で 来客が来るなんてと

思う オオワクダニヤマ


「どなた??」


「開発部長 わたくしです

リーリーナ ボルチモアです」


オオワクダニヤマは 名前は

わかったが 驚きを 隠せない


「あっ え

なんで こんな夜中に」


ウチに 突然 リーリーナが来るなんて

とんだ サプライズだと 思う

オオワクダニヤマ


「部長こそ なんで 出社して

来ないんですか??」


腕組みを して 質問する

リーリーナ


「ちょっと ここでは なんだから

家に 入って」


あまり 騒がしいと ゾンビが

寄って来るかも 知れない


「そうですか

それじゃあ 入らせて もらいます」


ズカズカ入る

リーリーナ


「どうぞ」


リーリーナの 態度に なにかを

感じとる オオワクダニヤマ


「なんか 久しぶりに 部長の家に

入ったなぁ」


部屋の 中を 見回し ドカッと

ソファーに 座る リーリーナ


「で 要件は なにかしら」


間髪入れず 本題を 聞く

オオワクダニヤマ


「やだなぁ サンモルトの社内から

部長の家に 明かりが ついているのが

見えたから 急いで 来たんですよ」


はぐらかす リーリーナ


「そ そうなの」


しまったと 思い うつむく

オオワクダニヤマ


「ねぇ 部長 なんで 目を そらすん

ですか」


ソファーから 立ち上がり

オオワクダニヤマの 顔に

顔を 近付ける

リーリーナ


「いえ 別に 意味は ないけど」


顔を そむける オオワクダニヤマ

その アゴを 掴み グッと

引き寄せる リーリーナ


「ひっ」


クチに キスされるかもと 固くなる

オオワクダニヤマ


「これ以上 休むのなら わたくしが

部長に なりますよ」


顔を 耳元に 近付け 小声で言う

リーリーナ


「えっ・・・」


絶句する オオワクダニヤマ


「だって 部長 もう ポテトの開発を

止めようと してるでしょ」


ズバリ 核心を つく

リーリーナ


「・・・そんなことは」


つい 声が ふるえる

オオワクダニヤマ


「ウソ

わたくしは ダマされないわ」


もう キスしそうなほど近い


「あたくしが わざわざ 金の卵を

捨てるとでも??」


苦笑いする オオワクダニヤマ


「あなたは 思っている」


まっすぐ 見つめる

リーリーナ


「いいや 思ってない」


ガタガタふるえる

オオワクダニヤマ


「いや 確実に 思っている」


全然 目線を そらさない

リーリーナ


「思っていたとしても 社員証を

没収されているから 無理なの」


たまらず リーリーナの 肩を 押す

オオワクダニヤマ


「・・・フフッ

ハハ」


クチを 押さえ 大口で 笑う

リーリーナ


「ボルチモアさん??」


あまりの 豹変ぶりに

ショックを うける

オオワクダニヤマ


「ハハハハハハハッ」


「なにが おかしいの」


狂ったように 笑うので

止めようとする

オオワクダニヤマ


「わたくしは クリフォードが

好きだった」


いきなり おかしなことを言いだす

リーリーナ


「えっ」


ビックリする オオワクダニヤマ


「だけどねぇ

クリフォードは 妹のジョジョリーナ

が好きだって」


急に かなしげな トーンに なる

リーリーナ


「ええ」


なにか 少し 同情する

オオワクダニヤマ


「あらゆる権力を使い クリフォードは

ジョジョリーナと 結婚した」


声に 怒りが 少し まじる


「そうなの??」


少し ウワサで 聞いた程度だった

オオワクダニヤマ


「わたくしは 社内で 新作のポテトを

真っ先に ジョジョリーナに

食べさせた」


リーリーナの 両手が なにかを

つかむように ゆがむ


「それは まだ未完成だった時の

ことじゃない!?」


ドキッと する オオワクダニヤマ

最初に 出来たポテトの 試作品は

とても 人間が 食べれる物では

なかった


「そうよ

動物実験でも 問題が あるとされた時期

・・・プロトタイプのポテトをね」


ニタァと 笑う リーリーナ


「なんてことを!!」


つい大声に なる

オオワクダニヤマ


「フフフ

食べた直後 見事に 発狂してたわ」


肩を ガクガクさせ 笑う

リーリーナ


「ぅグ」


はき気が する

オオワクダニヤマ


「それから 毎日 食べさせた」


遠い目を する

リーリーナ


「ついに クリフォードが

ジョジョリーナの 異変に

気が付いたが もう」


肩を すくめる リーリーナ


「それで ジョジョリーナは

行方不明に なったのね

なんて ひどいことを・・・」


苦しそうな

オオワクダニヤマ


「それでも クリフォードは

ふり向いて くれなかった

だから 全体を 囲って

出られないように してあげたの」


半笑いの リーリーナ

目の 焦点が 定まっていない


「・・・えっ」


目が 点に なる

オオワクダニヤマ


「せいぜい わたくしの作った

箱庭で もがき苦しんで くださいね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る