第21話

「こっちよ 早く来て」


スーパー ピッコーの 裏口から

一旦 外に出て ファストファッションの

店舗の 裏口へと 入る頃には

太陽が 西に 傾いている


「今 電気を つけるから」


店内に 明かりを つける

アステーレ


「よかった ちゃんと メンズも あった」


ホッと 胸を なで下ろす ニック

ファッション専門店と 聞いて

イヤな予感が したのだが 杞憂だった

ようだ


「値段見ずに 好きなの持って行って

大盤振る舞いよ」


ずいぶん 太っ腹な ことを言う

アステーレ


「でも それじゃあ 悪いから

一応 試着しましょ」


気を使う ネイス


「それで 気に入ったのだけ

持って行きましょ」


好意に 素直に あまえる ネイス


「ありがとう でも ホント 型落ち品だから

どんどん試着して 持って行ってね」


こんな状況だと お客さんは来ない

ファッションに 気が 回らないのだ


「ああ そうさせて もらうぞ」


ニコッと する ニック

せめて 笑顔だけは 見せたい


「ねえ あたしは??」


あまえた声を 出す

アーリントン


「小さいサイズも あっちの角に

あるから 持って来て試着してね」


お姉さん 口調に なる

アステーレ


「うん!!」


満面の笑みを 見せ 走って行く

アーリントン


「大人びては いるけど

やっぱり子供だな」


腕組みして アーリントンを 見る

ニック


「そうよね

ニックさんは どんな服を

お探しですか??」


ニックの 肩や 腕を さわる

アステーレ


「とりあえず 目立ちにくい服装が

イイな

今のは ちょっと 狙われやすい」


さすがに 戦場で 白Tシャツは

目立ちすぎる


「それなら これなんか どうです??」


黒Tシャツの 前に なにかの

キャラクターが でっかく プリント

してあるのを すすめる アステーレ

しかも でっかい胸を おしつけて

くる


「うーん もっと シンプルなのが

イイかも」


やはり プリント部分が 白くて

目立ってしまう


「そうですか??

これなら デートでも 着れると

思ったんですが」


ニックの おなかを さわる

アステーレ


「いや 彼女も いないのに なぁ」


頭を 掻く ニック


「えっ そうなんですね~」


ニックの おしりを さわる

アステーレ


「ハハハ・・・」


ネイスが 誤解して また 機嫌が

悪くならないか ひやひやする

ニック


「ニック こっち来てよ

こんなの どうかな??」


遠くから ネイスの 明るい声が

響く


「ああ イイんじゃないかな」


あわてて アステーレを

持っている 服で 隠すニック

察して しゃがみこむ

アステーレ


「もう ちゃんと見てよ」


両手に 持った服を 高く 掲げ

ジャンプする ネイス


「オレの 選んだら すぐ行くよ」


ちょっと 動けない ニック


「それじゃあ 10着くらいに

しぼるわね」


すごく 楽しそうな ネイス


「じゅ 10着も 試着するの??」


ビクッと なる ニック


「少ないかな??」


ニヤニヤが 止まらない

ネイス


「いやっっ 多いよ」


上機嫌な ネイスに ホッとする

ニック


「わたし わからないの

親が 人前で ヒザを さらしては

ダメって・・・

あの バカが バカが クソが」


突然 親への 不満を 言い出す

ネイス


「変な 親を 持つと 大変みたいだね」


同情する ニック


「そうなの・・・

半年前に ようやく それに気付いたの

バカな 親に さんざん振り回されて

いたんだって ことに」


吐き捨てるように 言う

ネイス


「呪縛みたいなモノに 縛られていたのが

解き放たれたみたいな感じなのかな??」


気持ちを 代弁する

ニック


「うん そう

まさに そういう感じに」


ニックに 指を差す

ネイス


「がんじがらめに されていた わたしの

人生に 一筋の ひかりが さしたような」


ウットリな 表情の

ネイス


「そう 閉塞感が あったことすら意識の

範疇に なかったのに それに気付く

ことが 出来たのよ」


少し 声を 荒らげる

ネイス


「そうなんだね

よし オレは 試着するの決めたぞ」


ニックが そう言うと 激しく動いていた

アステーレの 頭が 止まる


「えーっ もう少し待って

ヒザ上の ミニスカートを

かたっぱしから 試して みたいの」


両手に かかえきれないほどの

服を 持った ネイス

ここだけ見たら 完全に 強奪だ


「ああ 全部 試してみれば??」


ほほえむ ニック


「うん」


笑顔が 輝く ネイス


「そう言えば こんなこと あったわ」


ネイスは 何かを 思い出す


数年前


「ふぅーー

あれっ」


男が トイレの 個室で 見た 携帯電話番号に

好奇心から 電話を かける


ヴィーヴィー


「誰だろ この番号・・・」


ネイスは 知らない番号だと

思いつつ 電話に 出る


「あーもしもし 俺

電話番号 変わったから 誰か わかるかな??」


知り合いっぽく しゃべる 男


「もしかして ターク君??」


家の ことも あり あまり番号を

教えてないネイス


「そう よくわかったね

近いうち 会おうよ」


調子を 合わせる 男


「ウチは 厳しいからムリだって

前から 言ってるじゃない」


静かに 語る ネイス


「そこを なんとか」


ねばる 男


「うーん 今度の 土曜日の 昼間なら

ちょっと あいてるよ」


なんとか 時間を つくる ネイス


「それなら その時に 会おう」


「うん」


そして その予定日


「ごめん 遅くなって」


手を ふり 駆け寄る 男


「あれ ターク君は??」


知り合いの 顔が 見えないので

若干 不安に なる ネイス


「それがさ 急に 都合が 悪くなって

俺に 代わりに 行ってくれって

頼まれてさ」


事情を 説明する風の男


「そうなんだ」


納得する ネイス


「それじゃあ 行こうか」


「うん」


人通りの 多い通りを 歩きだす


「とりあえず 服装を 変えよう

せっかくの デートだし

俺好みの服を 買ってあげるよ」


ブティックに 向かう 二人


「それで そのあと どうなったの??」


ニックが ネイスの話を

ぶった切る


「買ってもらった服を 着て

レストランに 行って 食事が

終わった頃に 親が 怒鳴り込んで

来て」


うつむきながら 答える

ネイス


「えっ なんで 居場所が わかった

んだろ」


不思議に 思う ニック


「わたしの親 スマホに 勝手に GPSアプリを

インストールしてたみたい

今 思えば すごく 気持ち悪いんだけど」

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