第6話 2+1=恋心

放課後になった。

俺と蘭子は約束のファミレスに向かう。

それから店員に挨拶してから中に入ると。

そこに梅と美津が約束通り居た。

俺はその姿を見ながら溜息を吐く。


「すまない。待たせたか」


「待ってないですよ。私達も今さっき来たばっかりです」


「そうか」


俺達は椅子に腰掛ける。

対面に美津と梅。

そしてその目の前に俺達。

そんな感じの座り方になった。

俺は2人の姿を見ながら、ふむ、と思う。


「何か飲むか。蘭子」


「いや。私はドリンクはいい。無料の水で十分だ。付いて来ただけだから」


「じゃあ俺がドリンクバーを利用するから何か飲んでくれないか」


「.....ずるいな。君の言い方は。変わらず」


「これが俺流なもんでね」


それから俺はやって来た店員さんにドリンクバーを2つ注文してから。

そのまま梅と美津を見る。

梅も美津も俺を見たままだった。

複雑な顔をしている。

俺はその姿に、美津。梅。どういう話がしたい、と切り出す。


「.....私達は貴方との縁を切る必要は無いと思いました。ですがお互いに傷付き過ぎた。これでは不可能に近いだろうとは思います。仲の形成には、です」


「そうだな.....」


「.....そこで提案を考えたの。お互いの仲をまた取り戻す為に」


「.....何だ」


「貴方もきっと私達に歩み寄りを恐らく考えているだろうけど私達も同じ。馬鹿な真似をしたって思うから私は反省して前を向きたい。.....貴方がやった事も私達がやった事も同じで全て変わらないと思うから」


「.....?」


俺達は、?、を浮かべて2人を見る。

すると2人は互いに見合ってから、私も梅先輩も昔から貴方が好きだったんです、と言ってくる。

ブハッと飲んでいた水を噴き出した。

何.....。


「それはどういう!?」


「言葉通りの意味です。私は貴方が好きでした」


「私も好きだったんだ」


「.....そうか」


「でも事件をきっかけに冷え込んだ。.....あの場に私達2人が居たのはそういう意味がある」


「.....それで提案とはどうしたら良いんだ」


「冷え込んだ私達の心の仲を構築してもう一度最初から惚れさせてみませんか、というご提案です」


これには価値があると思う、と梅は切り出す。

私達を惚れさせるとは?どういう事だ。

思いながら俺は2人を見る。

2人は、1からの全ての関係性を構築する意味でもこの、惚れさせる、という意味はデカいと思います、と切り出す。

そしてメリットは、貴方も私が好きだった、という点、と切り出す梅。


「.....こうしてメチャクチャになっても何かがきっと残っているって思ったから」


「.....カケラになってしまった仲の希望に賭けた訳だな?」


「そういう事。私達の関係はこのままズタズタじゃダメだと思うから」


「それは確かにそうだが」


俺は顎に手を添えながら蘭子を見る。

すると蘭子は立ち上がってから、すまない。今からトイレに行って来る、と言う。え?、と思いながらそのまま行ってしまう蘭子を見る。

俺は目をパチクリしながらその姿を見送る。


「な、何だ?」


「.....あ」


「そっか.....」


へ?、と思いながら納得する2人を見る。

何が、そっか、ですか?

ちょっと意味が分からない、と思いながら2人を見る。

すると梅が蘭子の去った方角に指差した。


「.....私達はどうでも良いから追い掛けて。今直ぐに」


「え?しかし.....」


「このファミレスのトイレはあっちの方角じゃない」


「.....え?」


俺は、!、と思いながらそのまま真剣な顔の2人を見てから。

そのまま、分かった、と返事をする。

それから駆け出して行った。

そして外に出てしまう俺。

そうしてから駆け出して行くと.....公園に行き着いた。


「.....蘭子?」


「.....!.....な、何だい。何でこの場所が」


「偶然だな。完全な」


「.....そうか.....」


ブランコに座っている蘭子。

俺はその姿を見ながら横のブランコに腰掛ける。

それから空を見上げる。

やれやれな厚い雲の空だな。

もう梅雨も明けるというのに雨でも降りそうだ。


「.....テスト勉強は出来ているか。蘭子」


「.....そうだね。うちの学校は6月に小テストがあるからね」


「そうだな」


「.....」


「.....」


何だこの会話の続かなさは?

俺は、???、を浮かべて蘭子を見る。

蘭子はブランコを動かし始める。

そして蘭子は、私だけのモノかと思っていた、と切り出す。

何が?


「.....ちょっとビックリで飛び出してしまったが。もう大丈夫だ。戻ろうか」


そしてそのまま早足で去ろうとする蘭子。

俺はその姿に、蘭子、と手を握る。

すると蘭子は、泣いている.....、のに気が付いた。

え?、と思いながら蘭子を見る。


「.....すまない。すま.....ない。涙が止まらないんだ」


「.....あ.....」


「.....?」


「.....」


流石の俺もそこまでアホでは無い。

これで良い加減に気が付いた。

俺は小雨の降る中だが蘭子に聞く。

蘭子。お前は俺が好きなのか、と、であるが。

すると蘭子はビクッと肩を振るわせた。


「.....そ、そんな訳あるかい?このわt.....」


「隠さなくて良い。......そういう事なんだな」


「.....」


それで何か、良かった、とかいう感じだったんだな。

俺が梅に振られた事に、であるが。

蘭子は黒縁の掛けている眼鏡を外した。

それから前髪の髪の毛を解く。


「.....君の好みになろうと思って.....頑張ったんだ」


「.....梅みたいな大人しい子が好きだもんな。俺」


「そ、それでおさげ髪になった。幼馴染のポジションに勝ちたかった」


「.....」


「.....それで伊達眼鏡も掛けた」


「.....」


「こんな元の不良の様な姿はあまりしたく無いんだがな」


俺は眉を顰めて複雑な顔をする。

それから蘭子を見る。

すると蘭子は、すまないな。イケナイ女だ、と言ってから雨に濡れる眼鏡を見る。

俺はその蘭子を抱き締めた。


「.....すまない。俺が鈍感で。中学時代からお前の全ての性格とか勤勉さが変わったのはそれが理由だったんだな」


「.....私が鈍感なだけさ。気にする事はない」


目の前の美少女は涙か水滴か分からない顔でそう言う。

俺はその言葉に、気にするよ、と切り出した。

それから、蘭子。今は答えが出せない。だけどいつか必ずお前にお前に答えるから。それまで待っていてくれるか、と切り出す。


「.....待っている。.....強欲な私はいつまでも。というか私が勝つ」


「.....そうか」


蘭子を見ながら俺は濡れてしまったが手を差し出す。

それから蘭子の手を握った。

そして、風邪引いてしまう。戻るか、と笑みを浮かべる。


蘭子はその様子に、ああ、と微笑んだ。

衝撃な事ばっかりだが。

こういうのもたまには良いか、と思ってしまった。

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(超・改訂版)好きな幼馴染と仲の良い後輩が共同で俺に嘘コクをした。もう恋は出来ないだろう。何?今更恋って遅過ぎるんだが アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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