第4話 取り消せない過去

姉ちゃんに相談した後だが俺は2階に上がっていた。

そして考えてみる。

姉ちゃんはこうアドバイスしてくれた。


2人にどうしてそんな事をしたのか、と先ずは2人の話を聞いて此方が歩み寄ってみる、という事を、であるが。

これは姉ちゃん流、である。


「歩み寄る、か」


考えながら俺は窓から外を見る。

そして好きなラノベに手を伸ばしてみる。

だが読む気にはならなかった。

そんな事をしている場合では無い、と身体が思ったから、である。

困ったもんだな。


「.....」


横の窓から外を見てみる。

そこでは明かりが灯っていた。

つまり梅もそこに居る、という事だろう。

俺はその光景を見てから前を見た。

そして考えてみる。


「.....梅に後輩に.....」


そんな事を呟きながら俺は息を吐いた。

それから次の日を迎える為に今日は早めに寝る事にする。

一階を見てから寝るか。

そう思いながら降りて行く。



次の日になった。

俺は起き上がってからそのまま家事をしてから教科書を準備する。

それから俺は早めに行ってしまった姉の服を畳んでから。

そのまま玄関から表に出る。

すると.....外壁にもたれかかる様に梅が立っていた。


「何だお前.....?」


「.....謝るつもりは無い。だけど昨日はそれでもやり過ぎたかなって思う。だから一応反省しておくつもり」


「.....」


「.....私はどうしても貴方の顔が見れない」


「そうか。俺もそうだな。お前の顔は見れない」


すると、そう、と複雑な顔をした梅。

それから立ち去ろうとする。

俺はその後ろ姿に、梅。俺がお前にした事は取り消せない。.....お前の気持ちは重々分かる。また仲良くなれる日は来ないとは思う。だけどいつか分かり合える様に努力はする、と答えた。


そうすると足を止めてからグスッと鼻を鳴らしてから。

そのまま梅はまた足を動かして去って行った。

俺はその様子を見ながら空を見上げる。

うざったい程に快晴だった。


「.....気持ちとは裏腹にひっでぇもんだな」


そんな事を呟きながら俺は歩き出す。

それから通学路の交差点に向かう。

すると分かれ道に今度は美津が立っていた。

俺を見ながら眉を顰める。


「.....」


「先輩。.....やり過ぎたって思います。今回は。謝ります」


「.....」


「ですが私はこの大枠の事は撤回しようとは思いません」


「.....ああ」


美津を見ながら俺は頷く。

そんな美津は俺を見ながら、私はこの感情がまだ消えませんから、と言い残してそのまま俺をジッと見る。

助けれる状況だったのに助けなかった俺が悪いしな。

あの時は勇気を持って一歩を踏み出せば良かった。


「.....美津。妹さんは.....今はどうなんだ」


「元気ではあります。仮にも」


「.....そうか」


「ですがやはり心の傷は癒えない様ですけどね。全面的に先輩を責める訳じゃ無いですが.....どうしてですか」


「.....」


なぜこんなにも歪まないといけないんですか、と聞いてくる。

裸にさせられて水をぶっ掛けられていたの思い出す。

俺も妹さんも気付いたんだが。

何も出来なかった。


警察にでも通報すれば良かったんだが。

それもしなかった。


いや。


出来なかった、と言える。

確かにそれは俺が悪いとは言える。

あの時の感情は、恐怖、で逃げていただけだった。

選択肢を間違えたんだと思う。


「言い訳をするつもりはないが。.....俺はあの時。梅の問題も抱えていた。それから人数が多かったのもある。恐怖だったのもある。現実から逃げていたんだろう。自分から逃げていたんだ完全に。だから俺に非は有りまくりだとは思う。もし何なら殴っても良い。何と言っても過去には戻れないから」


「.....殴りません。.....それは同じですから。アイツらと」


「そうか」


「はい。でも知っておいて下さい。そんな事になっていたって」


そして美津は、では、と言いながら去って行く。

俺はその姿を見送ってから。

歩き出そうとした。

すると背後から、やあ、と声が。

俺は背後を見る。


「蘭子?」


「ゴメン。偶然見掛けたからね」


「聞いたのか。俺達の会話」


「途中から聞いたけど.....」


「そうか」


俺は蘭子を見る。

すると蘭子は真剣な顔で見てきた。

それから悲しげな顔をする。

君は精一杯やっている。反省している、と答えた。


「.....私はそう思う」


「お前って相変わらず優しいよな。何もかもが」


「これは優しいんじゃないとは思うけど。.....でも何か特別な感情があるんだろうね。君に対してね」


「.....特別な感情?」


「.....君には色々と助けられているからね」


「特に大きな事は何もして無いじゃないか。.....大袈裟だ」


大袈裟じゃないさ。

そう言いながら俺を見つめてくる蘭子。

見つめられると何か誤解を生むからな、と俺は告げる。

ハッとして、そ、そうだな、と赤くなってそのまま慌てる蘭子。

何でこんなに恥じらうのか分からないが.....まあ妥当な反応だろう。


「君はヒーローだ。私にとってはね」


「そう言ってくれるのはお前だけだよ」


「.....君の抱えているその気持ちはいつか解決するさ。悩む必要は無い」


「.....」


そうだな。

いつかそんな日が来れば良いけど。

思いながら俺は蘭子を見る。

すると蘭子は、じゃあ行こうか。学校に。同志よ、と笑みを浮かべる。

それから手を差し出してくる。


「ああ。じゃあ行こうか」


そして差し出された手を握る俺。

それから蘭子と一緒に学校に登校した。

そしてクラスに向かう。


するとそんなクラスは話題でもちきりだった。

何がと言えば。

俺と蘭子のデート疑惑。

何で.....?

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