第3話 すれ違う瞳
ビーナスは金星を意味している。
美しく儚い存在である、という認識のもと付けられたと母親の親に聞いたそうだ。
俺はその言葉を聞きながら宇宙服などを見て回る。
それから博物館の中を見て回っていた。
「.....所で君は幼馴染さん達からこんな事をされて復讐しようとは思わないのかい」
「そうだな。でも全て俺が悪いからな。やられたのは腹立たしいけど.....原点に帰すとな」
「私もそれは思うが.....」
「そんなつもりは無いんだ。イジメから救えなかったのは.....事実だからな」
壮絶なイジメ、か。
と言いながら顎に手を添える蘭子。
俺はその姿に、ああ、と答えながらティラノサウルスの複製を見る。
すると蘭子がポツリと何かを呟いた。
赤くなりながら、だ。
「私だったら許せんが」
そう聞こえた気がしたが。
蘭子に向くと蘭子は直ぐに目を逸らして他の所に行ってしまった。
俺は、?、と思いながら蘭子を見る。
そのまま奥の方に消えてしまった。
「.....今日は何かおかしいなアイツ」
そんな事を呟きながら俺は蘭子を追う様にしてから奥の方に向かう。
それからアンモナイトとか見て回った。
模型だが.....迫力がある。
やっぱり色々と違う部分がある。
☆
時間が遅くなるので蘭子と一緒にそのまま博物館を出た。
それから薄暗い道を帰宅する。
そうしていると足を蘭子は止めた。
そして俺を見てくる。
「私の我儘に付き合ってくれて有難うな。今日は」
「.....我儘か?お前が一緒に俺と過ごしたかったんだろ。そしてお前が俺を慰めてくれたんだろ?だったらこれが我儘とは言えない」
「君は相変わらずだね。そういう所は格好良いと思うね」
「.....格好良い.....か。そんなんじゃないさ。でも有難うな」
すると何を思ったか蘭子が近付いて来た。
それから俺を見上げてくる。
俺は目をパチクリしながらその姿を赤くなって見る。
な、何だ、と思いながら。
そして蘭子は笑みを柔和に浮かべた。
「.....正。君は本当に良い子だ」
「お前は何様か。全く」
「私は私なりの精一杯の事を言っている。君は.....」
そこまで言ってから蘭子は、す、すまない、と言って、じゃあこっちだからな、と分かれ道で去って行った。
俺は、???、を浮かべながらそのまま見送ってから。
そのまま帰宅していると。
隣の家。
つまり近所の家に梅が帰宅している所だった。
俺は眉を顰めながら梅を見る。
すると梅は俺に気付いた様に顔を上げた。
「.....正.....」
「何だ」
「.....」
目線をずらしながら。
俺を見るのを止める梅。
それからそのまま家の鍵を開けて入って行った。
今日も両親は遅い様だな。
そんな事を考えながら俺は横の自宅に入った。
☆
「うわーん.....」
「姉ちゃん.....酒臭い」
「今日も良い男が引っ掛からなかったよぉ.....」
「それはヨシヨシだな」
須藤萌子(すどうもえこ)、25歳。
帰宅するとその人物が真っ赤な顔で酒臭く居た。
俺の姉である。
歳が離れているが最高の姉であり最低の姉であるが。
物凄いバストヒップとか凄い。
そして顔立ちも若干童顔ながら美女に近い。
俺とは違って.....。
神様なんで俺はイケメンじゃないのだ。
「ただぃじぃ」
「.....言葉にならない声だな」
「何であのクソどもは私に向いてくれないのぉ」
「それはまあ知らないが.....。水飲むか?」
「持って来てぇ」
リビングに姉ちゃんを連れて行く。
そして海外に赴任している両親の写真を見る。
俺と姉ちゃんは2人暮らしだ。
この一軒家に、である。
姉ちゃんが大人であるので。
両親は冒険家だ。
今はペルーに居るらしいが.....詳しい事は知らん。
でもまあ楽しくやっているならそれでも良いじゃ無いかって思う。
「クヤジィ」
「どうどう。まあ飲み会でまた誘われなかったって事だな?」
「あの男ども私の飲みっぷりに恐れをなして帰って行った」
「.....それは姉ちゃん.....アンタが悪いな」
「正までそんな事をぉ」
だってお酒美味しいんだもん、とメソメソしながら姉ちゃんは下着姿になる。
そしてズボンを履いた。
姉弟ではもうこんなのは日常茶飯事だ。
だから全く問題は無いが。
良い加減に生活を正さないとそれこそ男が寄らない。
「正。お酒のせいにするのは間違っている」
「.....何をいきなり」
「何処ぞの研究者が言っている。お酒は影響が無いってぇ」
「.....何処の科学者だよ」
うわーん!!!!!、と絶叫して泣く姉ちゃん。
煩いし酒臭い。
どうしたものか、と思っていると。
姉ちゃんが、何か正、今日はシンミリしているよねぇと言ってくる。
「.....そんなシンミリしているかな」
「しているよぉ。だってそんな真剣な顔しているのはシンミリしている証だよーん。弟の事は何でも見破れるよーん。エロ本もぉー」
「エロ本は余計だ。.....でも何も隠せないな。姉ちゃんには」
「うふふう。でしょう?悩みは私に話してごらんなさいぃ社会福祉士の私にぃ」
「.....」
社会福祉士いう職業をご存知だろうか。
姉ちゃんはその社会福祉士の資格を持っている。
こう見えても凄い人に近いのだ。
だから見抜いたんだな。
俺は考えながら俯く。
「.....姉ちゃん」
泣き上戸に話しても仕方が無いかも知れないが。
水を飲みまくる姉ちゃんに、である。
でも今話しておくべきだろう。
思いながら俺は真っ直ぐに目線を置く。
それから話し始めた。
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