第5話 シャボン玉の魔法
「魔女って、あの魔女?」
「他にどんな魔女がいるのよ」
「とんがり帽子をかぶってて、」
「まあ持ってはいるけど……」
「ほうきで空を飛べて、」
「うっ……ちょうど練習中で」
それからなんていったって、
「魔法が使える、あの魔女?!」
「……っ! そうよ、見せてあげる」
イオはふっふーん、と何かを引き抜いた。
白っぽくて、細長くて。あっ!
杖だ!
「よーく見ててね」
言われなくても、目が離せないよ。
まっすぐ杖を上に向け、目を閉じて、イオはふう、と息を吐く。
それからすーっと息を吸って。
「ワキワキ・モコモコ!」
——かわいい呪文を唱えた。
すると。
杖の先っぽから、透明なあわがぷくーっとふくらんで。
……ぱん! と弾けた。
と思ったら……。
——部屋の中が、キラキラなシャボン玉でいっぱいになっていた!
「わ、わっ! すごい、これイオがやったの?」
「そうよ、ほら。まだ出るわよ」
そういうとイオは杖を私に向けて——ぱんっ!
「ひゃあ!」
目の前がシャボン玉だらけ。
「ちょっと、イオ!」
「うふふ、ごめんなさいっ!」
けらけら、私たちは笑った。
ひさしぶりに、ほんとに笑った。
魔法って、ほんとにあるんだ!
それから、魔女についていろいろ話した。
そのかわり、イオは私のことをいっぱい聞いてきた。
なんというか、私みたいな普通の子の生活について、イオはほとんど知らなくて。
テレビも知らなかったのはびっくりした。
でも、テレビを見ないひとも多いって聞くし。
イオのお家は普通のお家じゃないから、そういうものなんだろう、って納得しちゃった。
私がちょうど、ゲーム機のことを話そうとしたとき。
ぼおん、と時計が鳴った。
窓の外は……いけない、もう真っ暗だ!
「ごめんイオ、私もう帰らなきゃ」
「そうね、話しすぎちゃったわ。ネネ! サキをお家まで送ってあげて」
しかたないなあ、とばかりに歩いてくるネネ。なんというか、ごめんね?
「紅茶、とってもおいしかった!ありがとう」
「それはよかったわ。今度はお菓子も用意しておくね」
「ほんと? また来てもいいの?」
「もちろんよ。もうお友達だもの!」
お友達。えへへ。
ドアを開けたら、森はもう真っ暗だった。
でも、ネネがいてくれるから大丈夫。
「絶対また来るね、イオ!」
「ええ。待ってるわ、サキ!」
なあお、とネネが一声鳴いて、私は後を追いかけた。
なお、帰りが遅くなって、お母さんにたくさん怒られたのはまあ、しかたがない。
本当のこといっても、信じてもらえなかったけど。まあ信じられないよね……。
ともかく、こうして私は、魔女見習いの友達ができたのだった。
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