第3話 森のお家

 土がむき出しになっていて、草が生えてないから見分けがつく、そんな道を進む。

 真っ黒なねこは意外と目立つから、置いていかれることはなさそう。

 それにしても、羽って。

 もしかして、空を飛べるのかな?

 テレビで見た突然変異とつぜんへんいってやつ? もしそうなら、大発見かもしれない。

 でもまずは、ちゃんと観察しなきゃ。

 がさがさ、顔の前に来る草をかき分けながら、先に進んでいく。

 空気が少しひんやりしてきたと思ったら、突然、木と木のすきまから明かりが見えた。

 窓みたいだ。

 こんな森の中にお家があるなんて!

 すこしびっくりする。ちょっぴりわくわく。

 大きな木の幹をよけたら、前がぱっと開けた。

 レンガの道が続いている。

 白い木の壁、赤い屋根のお家へと。

 絵本で見たような、外国のお家だ。

 ねこはてとてと、進んでいって、窓からひょいっと中に入った。

 このお家で飼われているのかな?

 外国の人が住んでいるのかな。私、英語苦手なんだよな……。

 でもせっかく来たんだし。

 おそるおそる、行ってみる。

 さすがに窓から入るのはダメだから、ドアを叩いた。かわいい木のドアだ。


「こんにちわー……」


「──はーい」


 英語じゃなかった!ちょっとほっとする。

 ばたばたと音がして、ドアノブがくるりと回った。

 ひょこっと顔を出したのは。


「どちらさま?」


 なんと、同い年くらいの女の子だった。

 栗色でくるくるの髪、真っ青な目。

 アメリカとかの生まれなのかな。なんだか、モデルさんみたいだ。

 ちょっとおどおどしながら、私は言った。


「あの、ねこを追いかけてきたんですけど、羽が生えたくろねこって……」


「ああ、ネネのこと? うん、いるよ。いま帰ってきたところだけど……ネネーっ、こっちきて!」


 奥でなおん、と聞こえた。


「ごめんね、ちょっとシャイな子なの。それで、ネネがどうかしたの?」


「いや、その……ついてきてって言われてるような気がして。あ、あと羽が生えた猫って見たことなくて!」


「そうなんだ。あなた、ネネに気に入られたのかもね」


 女の子はそう言いながら、ドアをぐいっと開けた。


「どうぞ、入って? 紅茶でも飲んでいってよ」


「えっいや、そこまでお邪魔するつもりは」


「ううん、ぜんぜん邪魔じゃないわ。最近やっとうまく淹れられるようになってきたの。お話しましょ?」


 にこっと笑う。無邪気むじゃきな笑顔がまぶしい。


「……じゃあ、ちょっとだけ。お邪魔します……」


 あれ。

 玄関に段差がない。どこまで靴で入っていいんだろ。

 どこで脱げばいいですか、って聞いたら、そのまま入って、って教えてくれた。

 そっか、外国は靴を脱がないんだっけ?

 私はそのまま、女の子に続いて部屋へ入った。

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