たゆたうブランコ 【第一回カクヨム短歌・俳句コンテスト用】

玄納守

たゆたうブランコ

陽に灼けた 見向きもされぬ ブランコよ


身重妻 画数かぞえる 団扇風うちわかぜ


無用だと烙印押される解雇の日


人混みぞ恋したたずむ駅の裏 


許されぬ 道なき道の 闇バイト


『一度だけ』 震える指の 川渡り


なつかしき そのしわがれた 偽母ははの声


君の顔 消し払い その金を取る 


「え、すいか?」 いぶかしながらも笑う君


このために つまのためにと 啼く蝉よ 


『遅くなる』 見上げる窓に 君の影


振り向けば 戻らぬ電車 戻れぬ世界


見ず知らず 集めて押し入る 屋敷かな


待ち伏せの 銃口火を吹く 夏の夜


肩撃たれもがき這いずる死出の蝉うあああああああああああぁぁぁぁぁ


110 震える指の 命乞い


遠のきて──────まだ見ぬ吾子の名を思う


目が覚めて 点滴が命を ぽたり……ぽたり……


ふれられぬ 妻の手をアクリル越しに


秋もはや ひとりで揺れる ブランコよ

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