第2話 吸収
適正魔力の欄が何も書いていなかったのだ。俺は再び受付へと向かう。
「キャロルさん、ちょっと冒険者カードがおかしいのだが……」
はて?と顔をしたキャロルに俺は冒険者カードを見せる。
「え?適正魔力が空欄なんて。でも、水晶玉もしっかり反応しましたし、こんな事は前例なく私達も分からないです。」
「なるほど。分かった。ありがとう」
「お力になれずすみません。」
「いや、いいんだ。自分で調べてみるよ。」と言って俺は冒険者ギルドを後にした。
これはあくまで俺の予想だが、ステータスに魔力値がしっかり記載されているという事は、魔力我無い訳では無いと思う。
「まぁこればかりはやってみないと分からないか」
俺はとりあえずレベルを上げるため、ビギナーでも倒せるモンスターしか出ないリセルカ草原へと向かった。
ここでは主にスライムやミニゴブリンが生息している。
「まずはスライムだ。」
幸いワークスキルに頼れないと分かっていたため、幼少期から剣術は学んでいたのだ。
「魔力が無くたってそこそこの所までは行けるだろう。」
順調に倒して行く中であることに気づく。
「スライムでこんなに経験値貰えたか?」
そう、まだ数体しか倒してないのに関わらず俺のレベルがもう5まで上がっていたのだ。
「確か勇者にはウィンドウが開けるとか言ってたな。開けば今何が起こったのか分かるかもしれない。」
俺はウィンドウを開いて探る
「あった。これか……はぁ!?」
そこには【吸収により、経験値を通常の2倍得す】と書かれていた。
「使い道のないスキルだと思ってたのにまさかこんな効果があるとはな。まぁ戦闘向きではないがまだマシか。」
使い道がないと思ってたワークスキルが役に立ったから少し得な気分でいると近くで大きな音がした。
音の方向へ振り返り、急いで駆けつける。そこには驚くべき光景が広がっていた。
「何でこいつが……こんな所に!?」
目の前にはナイトオーガがいたのだ。ナイトオーガは基本ダンジョンの中階層に生息しているモンスターで、レベルで言う25以上の冒険者でないと倒せないくらいの強敵だ。絶対にこんな所に居てはならない。
「まずい、こっちに来る!とりあえず逃げるか。」
俺は必死に草原の出口へと走る。しかし、出口目前で全身が酷い重さに襲われた。立ってるのがやっとの状態でとても歩く事が出来ない。
「ちくしょう!こいつスキルをもってやがる。今日冒険者になったばかりでもう死ぬのか……クソッ」
絶望に明け暮れてると
「大丈夫かい?キミ!」と声がした。
その瞬間目の前に居たはずのナイトオーガが崩れ落ちる。
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