ルール説明
指定の時間、指定の場所に着いた。
今は午後九時、あのワーキングスペースの前にいる。
ドアにぶら下げられた「MIDNIGHT」の看板は相変わらずそこにあって、黒に紫と云うなんとも独特な色使いのままであった。
ひんやりとする鉄のドアノブを握り、開ける。見た目の割に、カチャッと軽い音がして扉が開いた。
「あ……」と、誰かが発した声が、部屋に響いた。
部屋の中にいたのはメンバー全員ではなく、メンバーの中のわずか十二人だった。
真ん中に丸いテーブルが置かれ、それを囲むように椅子が九つ並べられていた。すでに俺以外――八人は椅子に座っていた。あまりの椅子に腰掛ける。
誰も何も云わず、黙っていた。うつむいているものもいれば、隣をチラチラと見ているものもいた。
このままじゃ何も進まない――。
とにかく、沈黙を破った。
「皆、メールを見てきたんだよね?」全員がうなずいた。
「知らないとは思うけど、誰があのメールを送ったかは分かる?」全員が首を横に振った。
「じゃあ、メールを信じるとして、これは人狼ゲームなのかな?」皆がわからない、と首を捻った。
「人狼ゲームなら、役職があると思うんだ。細かいものは放って置いていいとして、ゲームマスターがいないと、ゲームが始まらないんだけど、誰かメールでゲームマスターに任命された人はいる?」全員が首を振った。
では、全てを自分たちで決めてやれというのだろうか。しかし、人狼ゲームは役職があり、それを駆使して人狼を見つけるゲームなわけであるから、人狼――つまり兄を殺した犯人を知っている人間がいなければ、このゲームは成り立たないわけである。
その時、全員のスマートフォンが一斉になった。皆一斉にポケットに手を突っ込み、スマートフォンを取り出した。俺も取り出す。
思った通り、アドレスはあのアドレスだった。
『時間になった。
さて、ルール説明をしよう。これは人狼げぇむだ。人狼ゲームではない。どういうことかと云うと、人狼ゲームの役職などは存在しない。占い師などは、誰もいない。唯一人狼ゲームと同じところは、話し合いをすること。そして、疑わしいものを追放すること。そして、この人狼げぇむの中での追放は死亡を意味する。
あと、今から二四時間以内に犯人を見つけ出せなかった場合、全員死亡となる。
追記、ゲームマスターは俺だ。俺は犯人を知っている。話し合いにより、犯人が殺された瞬間、このゲームは終了となる』
つまり、デスゲームと云うことか。
そう思ったとき、一人が叫んだ。「巫山戯てやがる! こんなの巫山戯てやがる! 帰るわ」
そう云って扉に手をかけた。しかし、扉が開くことはなかった。
「ガチャッ、ガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッ!」
鍵がぶつかる音が聞こえてきた。誰かが外から鍵をかけたのだろう。
「おい! 外に誰かいるのか? 開けろよ! おい!」
外からの反応はない。
「くそっ!」椅子に戻ってきた。
それと同時に切り出した。「どうする? 話し合い、する?」
誰も何も云わない。
「じゃあ、とりあえず自己紹介をしようか」
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