弟としての責任

 俺が最初に自己紹介をすると、自然と時計回りに自己紹介がされていった。MIDNIGHTの中で存在感がある人間ばかりかと思っていたが、殆ど見たことがない、名前すら聞いたことがないような奴もいた。どういった理由でこのメンバーが呼び出されているのか。全く予想がつかない。

 だが、ゲームマスターの兄――実際は誰かわからない――がどこにいるかは誰も知らなかった。

 だが、あの事件をこの目で見た自分としては、兄が生きているとは到底考えられない。つまり、メールの文面を見て思った通り〝誰かが兄の名を借りて暴れている〟としか考えられない。

 しかし、そう考えると一つ疑問が出てくる。

 誰が? 何のために?

 仮に誰かが兄を殺した犯人を知っていたとして、なぜ今なのだろうか。知っていたならば、すぐに兄を仇をとることは出来た筈だ。それに、何か理由があって今になったとして、なぜその一人を呼び出して仇を取らず、を集めてこのような集会のようなことをやらせているのだろうか。

 まあ、そのような小さなことは置いておいて、一番問題となるのは〝追放〟

の意味だ。

 〝追放〟の意味が〝死亡〟を意味すると云うことは、俺らがと云うことだ。そして、誰も〝追放〟せずに終わると、〝全員死亡〟となるわけだ。

 もちろんそれが事実であると信じている訳では無いが、人を集めて監禁することまでやっていることを考えると、死亡までは行かないとしても何らかのが起こりそうだ、とは思う。

 「あの……」と、誰かが声を発した。顔をあげると、俺を時計の六時に置いたとしたら、二時の場所にいる美鈴葵みすずあおいが手を上げていた。

「これからどうするんですか?」

 俺を含め十一人の視線が集まり、葵は「すいません……」と声を震わせた。

 すると、九時の場所にいる楪椿ゆずりはつばきも声を上げた。

「本当に、どうするんですか?」

 続いて一二時の場所にいる稲垣泰生いながきたいせい

「じゃあ、こういうのはどうでしょう」そう云って泰生は俺を指さした。「桑原優さん、あなた、亮様の弟さんですよね」

 急に話の矛先が俺に向けられて驚いたが、頷いた。

「では、この中で一番ゲームマスターに適切なのはあなたじゃないですか?」

「何が言いたいんです?」

「誰も何も云わないのは、誰かが代表して話を進めないからです。亮様は、役職はないと云っていましたが、役職ではなくとも代表者がひとりいなければ話し合いが全く進まないわけです。

 ですが、ただただやりたい人を募っても誰も手を挙げないだろうし、いたとしてもその人が適切に話を進められるかはわからない。それなら、弟であるあなたが話を進めるのが一番適切なのではないですか?」

 つまり、この集まりで起こると云うことか。随分と責任逃れなやつだ。

「つまり、ここで起こるの責任を負え、と云うことですね?」

「いえ、そう云うことではありません。責任は全員にあります。ここで起こる全てのことは――外から誰かが入ってくることはないのですから――せいで起こることなのですから」

「では、なにかが起こっても俺のせいにはならない、そう云うことでいいですね?」

 泰生は首を縦に振った。「ええ、僕はそう思いますけど。皆さんはどうですか?

 優さんに話の進行を任せるが、ここで起こったことの責任は全員にある。どうでしょう?」

 全員を見回すと、皆首を捻るような、縦に振るような仕草をしていて、首を横に振る者はいなかった。この時点で、俺がこのゲームのゲームマスターを務めることが決まってしまった。

「じゃあ、話し合いを始めようか」

 全員がしっかりと分かるように頷いた。

「では、俺を六時と置いて、一二時の君から行動を話してもらおうか」

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