第3話 交ざり始めた道
学園に通い始めてから半年が経とうとしている中、校内は学年末にある『王立シャントゥール魔法学園魔法戦闘大会』の話題で賑わってきた。
『王立シャントゥール魔法学園魔法戦闘大会』では毎年、2年生と3年生を対象に同じ学年同士で3人以上のチームを組み、魔法の腕前を競う。そして結果は卒業後の進路にも大きく関わる為、生徒達は本気で挑んでくる。
また既に本番に向けたチーム結成も進んでいるのだが、それには1つ理由がある。1年生の内にチーム結成申請書を提出すれば、2年次には同じクラスで授業を受けられるように配慮されるからだ。
大会への参加は任意。果たしてどうするべきか、と考えつつ教室で次の授業の準備をしていると見知らぬ2人組が、こそこそ近寄ってきた。
「急にごめん。今、いいかな」
「…は、はい」
「ありがとうー。実は大会用のチームメンバーが1人足りてなくて。ワタシは防御系で、こっちが回復系だから攻撃系がいなくて困ってるんだよ。だからソラさんが来てくれたら有り難いな、って2人で話してたんだけど…もうチーム結成してる?」
先日の実技訓練以降、私の存在と魔法はあっという間に広がった。原因は明確で、突如現れた大型魔獣を世にも珍しい光&闇が混ざった誰も見たことが無い魔法で消し去ってしまったからだ。また、噂として誇張されていったのもある。ブラックホールのように全てが吸い込まれていった、魔法で記憶が改ざんされた、悪魔のような化け物が魔獣を喰い荒らしていったなど…。こうして少なくとも1年生の間では有名になってしまったのだ。
「大会用チームなら、まだ組んでないけど」
「おぉ。それなら一緒に組んでくれるってことでいいよね」
断る隙間も与えず、決定事項のように話を進めてくることに戸惑いながらも「えっと…」と言葉を濁らせる。
「それじゃ紙に記入をお願い…」
「──ごめんね〜。ソラは私達と一緒に組むから」
突然の声に既視感を覚えたが、そのまま聴き覚えのある声の方に振り返る。するとそこには、見慣れたブロンドヘアの女の子がソラの右腕を掴んだ。
* * * * *
突然現れたアネットは、そのままぐいぐいと腕を引っ張って廊下に出ると安心したように息を吐く。
「よ〜し、捕まえた。勝手にチーム組まれるかと思ってヒヤヒヤしちゃったよ」
「認めたくないけど…君の意見に同意する。僕の居ない所で勝手に事を進めるな。何よりソラの実力はチームメイトである僕達が1番理解しているのに」
最初からこうなることを予測していたのか、廊下の壁に背を預けるように立っていたレオンはさらに言葉を続ける。
「──僕達にはソラが必要だ。この3人がチームを組めば1年生からの大会参加も優勝も不可能じゃない。大丈夫。個人の成績も上々だし、教師からの推薦もきっと貰えるはず」
「お願いソラ。改めて、一緒にチーム組んで下さい!」
『王立シャントゥール魔法学園魔法戦闘大会』に1年生から参加出来たら、その上で優勝も成し遂げることが出来たら。まさしく名実共に優秀な魔法使いに近づけるだろう。
さらに、学園から卒業して未だに分からない元の世界へ帰る方法も見つけ出すことが出来るかもしれない。だとしたら、今。レオンが言う「この3人なら優勝も不可能じゃない」という言葉を信じる時だ。
いつか、学園長とべザルの話も似たような話をしていた。こんな機会は滅多にない。いや…2度と無いだろう。
私はレオン、アネットを順に見つめ、真っ直ぐに前を見据えながら口を開いた。
「──チーム、結成しよう」
「ほんとか」「やった〜!」
2人の嬉しそうな顔を見て、私は心の中で誓ったことを続けて言葉にする。
「だけど、1つだけ伝えたいことがある。…大会、優勝しよう。絶対に」
どんな魔法を使ってでも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます