第20話

「おーきんのう。」


『これくらい構わないですよ。ほら歩いてください』


「のう、凛。あの月うつくさいのう。」


『それってどういう意味ですか?』


「月が綺麗ってことや」


『なるほどー…って///』


「なんや?」


『(この人天然なのか…!?)』


『な、なんでもありません!』


「そか、それにしても今日は凄かったのう。こんなおもいでやったのひさしのうて。」


『葵さんって酔うと可愛いですね。』


仕返しにシラフの時に言ったら怒られそうなことを言ってみる。


「…それは(ボソッ」


『え、今何か言いました?』


「いんや、なんもない。またライブしよっせ。」


『もちろんです!』


何かを言った気がしたけど、


夜の街の賑やかな音にかき消されてしまい上手く聞き取ることは出来なかった。


『(なんでもないって言ってたし、大したことはないよね)葵さーん、そろそろ着きますよー。』


「は~い」


『(酔ってる葵さん素直で可愛い・・・!)』


「ありがとの」


『隣人のよしみです、これくらいはなんてことないですよ!』


あっという間にマンションに着き、隣の部屋の葵さんの部屋の前へ


『葵さーん、鍵はどこですかー?』


「…上着の内ポケ…。」


『上着の内ポケットですね、ちょっと失礼します。』


その時私の部屋の方面から音が聞こえた。


「おや、お隣の…東雲さん?でしたよね、こんばんは。」


『速水さん!?こ、こんばんは!!』


「お隣なのにあまり顔合わすタイミングなかったですね、今お帰りですか?


そちらは彼氏さんかな?


初めまして、東雲さんの隣に住んでいます、


速水傑と申します。」


『全然!あの、彼氏とかじゃないんで!


大学の先輩で、えと、サークルの打ち上げの帰りでして、ほんとそういう関係じゃないんです!


ねぇ!葵さん!?』


「ん~?なんや凛、大きな声出しようて。俺と離れるのが寂しいんか~?(笑)」


(ダメだ…完全に酔ってる…)


『あの、先輩すごく酔ってるみたいなので、


早めにベッドに寝かせてきますね!


速水さんもお出かけする予定だったみたいですし!』


「ああ。コンビニに編集作業中のお供を、と思ってコーヒー買うだけなんですけどね(笑)


そういう事なら僕もこれで。」


『なるほど!お仕事頑張ってくださいね!応援してます!』


「はい、ありがとうございます。では。」


速水さんは軽く会釈をして去っていった。


『ビックリした…まさか速水さんに会うとは…』


(それにしても)


『彼氏か…。』


(恭平は今どこにいるのだろうか。


誰と過ごしているのか。)


『会いたいな…(ボソッ』


「…。」


『そだ!鍵!内ポケット!葵さん失礼します!』


無事に鍵を入手し部屋の中へ。


靴を脱がしベッドへ葵を運ぶ。


ドサッ


『ふ~!流石に酔ってる人支えるって大変だな。』


ベッドに葵を寝かして部屋を去ろうとした時


グイッ


「…いくな。」


『え!あ、ちょ!!』


突然腕を引かれ葵のベッドに引き込まれる。


『葵さん!寝ぼけてないで、離してくださいいいー!』


「なんで、あんなに否定するんよ…寂しいやろ…。俺は…。」


『え…葵…さん…?』


「スゥ…スゥ…。」


『え!?続きは!?てか離してくださいいい!!』


その言葉の続きが気になり大人しくなった凛は恐る恐る上を向くと…


そこには、寝息を立てて眠る葵の顔があったのだった。


(…てか、顔近!整いすぎ!心臓がもたんー!!)

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