第2話

 頭がガクッとなったところで目が覚めた。いくら自分がメインではないとはいえ油断していた。どれくらい寝ていたのか気になって、慌てて愛に聞いた。


「ごめん寝てた。結構時間経っちゃってる?」

「大丈夫だって。10分ちょっとくらいだし」


 その言葉にホッと胸を撫で下ろした。見上げると空はまだ明るかった。愛の言うことは本当だろう。


「それにしても……」


 会長に視線を移すとまだ眠っているのが見えた。


「お楽しみの所悪いけど、新入生歓迎会だって事分かってる? 新入生に顔覚えて貰わなきゃ駄目でしょ」


 呆れた顔をしながら副会長が来た。今度こそ助け船だ。名残惜しいような気もしたけれど、今は恥ずかしさの方が勝ってこの状況から脱出したい気分だった。


「す、すみません!」


 なんだか自分が怒られているようで咄嗟に謝った。


「舞ちゃんは謝らなくていいんだよ。そこの夢心地の会長が悪いんだから」


 それはそうだ。人の気も知らないでよく寝ていられる。なんて本人には言えないのでそっと心の中にしまった。

 早く起こさないとと思い肩に触れようとした瞬間だった。


「……らん」


 “らん”と呼ばれたその名前に少し嫉妬した。きっと女の子の名前だ。幽霊部員も含め50人近くいるサークルだから、把握してないだけでいるのかもしれない。

 勝手に嫉妬して意地悪だと思いながらも、少し恨めしい気持ちを込めて頬を軽く抓ってみた。


「うっ……なんだ舞さんか、良かった良かった」


「よ、良くないですよ。あの、新入生と話して顔覚えて貰わないとって先輩が言ってましたよ」


「そうだよね。ごめんね、気使わせちゃって。また後でね」


 そそくさとその場を去るように早足で会長は去って行った。


「あっ……」

 

 聞きそびれてしまった。でもこれで連絡する口実ができた。そう考えれば大したことない気がした。

急足で新入生達がいるグループに向かう背中を、静かに見送った。

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