二人夢の中

花守架音

第1話

「これから花見兼新入生歓迎会を開催します!」


 桜木会長の勢いの良い一言で、私が入部している創作サークルの花見兼新入生歓迎会が始まった。

 桜が咲き誇って柔らかい日差しの中、絶好の景色の中……とはいかず、気づけば5月になり桜も見頃を過ぎて散り始めている頃だった。


「桜散りかけてるし全然花見じゃないじゃん」


 一緒にサークルに入った愛が小声で呟いた。


「し、仕方ないよ。新学期は忙しいし」


「まあ、このゆるさが良いんだけどね。そういえば舞は会長と同じ授業取った?」


 愛が楽しそうな笑みを浮かべながら私に聞いてきた。


「い、一応ね……」


「ふーん、お二人さん熱々でよろしいですなあ」


 まるで私を茶化すようにやにやと笑いながら言った。


「付き合ってないから!」


 もう付き合ってる前提でからかわれて思わず赤面してしまった。


「本当〜? 会長の連絡先知ってるのに?」


「それはそうなんだけど……」


 サークル内の連絡先とは別に個人的な会長の連絡先も知っている。せっかく勇気出して聞いたのに、次の一歩が踏み出せない自分に対して情け無く思えた。


「少しだけいい?」


 声が聞こえると同時に私の背中に何かが乗ったような感覚があった。振り向いて確認はできないけれど、声の主からして会長のような気がした。


「やっぱり舞ちゃんのところに行ったわ」


「まさかとは思ったけど……」


「あっ、楓先輩とみのり先輩!」


 愛の反応で先輩達が来たことに気が付いた。もしかしたらこの状況から助けくれるかもしれない。


「そんなじゃ舞ちゃん潰れちゃうでしょ! 寝るならこっち! みのるん手伝って!」


「はいはーい」


 私の淡い期待を裏切るように、会長の体は私の太ももの上へと移動され、俗に言う膝枕の状態になってしまった。


「それじゃお楽しみに〜」


 私が助けを求める間もなく、先輩達は去って行ってしまった。


「本当に付き合えたらいいのに……」


 起こさないように小さな声で呟きながら、そっと髪に触れてみた。


「ん……」


 今ので起こしてしまっただろうか。まさかそんなはずは……。心拍が飛び跳ねる勢いで上がっていくのが分かるくらいドキドキしている。そんな焦る自分をよそに相変わらず、すやすやと寝息を立て寝ている。


「良かった……」


 こんなに顔を見つめることは初めてかもしれない。性格というよりも、少し日本人離れした顔立ちの良さに一目惚れした。性格より顔で選ぶなんて……。我ながら単純すぎると思う。それでも惹かれてしまったのだから仕方ないと言い訳をしてみる。

 こんな時間がずっと続けば良いのに。柄にもなくロマンチックなことを考えてしまう。

 陽だまりの暖かさが相まって誘われるように睡魔に襲われ、いつの間にか自分も眠りについてしまった。

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