第72話 封魔の水晶

 一行は赤い扉の部屋を出て青い扉の部屋に向かう前に休息を取ることにした。

   

シャヤ 「ルーラーちゃん、封魔の水晶とは、そもそもどういう品なの?」

ルーラー『魔力を伝達する効率の高い水晶を魔水晶と呼び、更に秀でているものを極魔水晶きょくますいしょう、お父様が邪神を封印したのは極魔水晶きょくますいしょうを使いました、皆さんが封魔の水晶と呼ばれているのは極魔水晶きょくますいしょうの事で邪神を封じ込めたので名称が変わっただけです』

アボス 「・・・極魔水晶きょくますいしょう・・・確か聞いた事がある・・・魔力伝達効率が99%以上の超高純度で幻の水晶だと・・・」

フロウ 「・・・低純度の魔水晶でも採掘し発見するのは困難を極めるというのに超高純度とは・・・さすが王家の秘宝とされる事はあるな・・・」

ジイン 「邪教の神か・・・グレゴイシス大司教は一体、何の目的で封魔の水晶を・・・まさか、異教の神を復活させようとしているのか?・・・ならば何故、逃げ場のない地下陵墓を選んだ?・・・この場所に何か秘密があると・・・」

 ジインが思考の渦に入りかけたその時であった、突然ルーラーが浮き上がると淡く光り輝きだした。

シャヤ 「きゃっ!な、なに・・・」

フロウ 「ル、ルーラー・・・」

ジイン 「い、いったい何が・・・」

アボス 「むっ、見ろ、ルーラーの後ろに・・・」

ルーラー(憑)『・・・人の子よ・・・この地はかつて、邪神が崇められていた場所・・・悪しき信仰の力により仮初かりそめの肉体を得た邪神はこの地で猛威を振るった・・・しかし人の子がこの邪神を倒し、星幽体アストラルボディを水晶に封じ込めた・・だがその水晶をこの地に入れてしまえば再び邪神が甦り、混沌の世となろう・・・其処なる人の子達・・・そうなる前に止めるのだ・・・』

 そう告げ終わった瞬間、フッとルーラーから光が消え、浮力を失ったルーラーが落ちてきた。

ジイン 「あ、危ない!」

 ガシッ!とジインはルーラーを受け止めた。

 そして、すぐにアボスは収納ストレージから車輪付き担架ストレッチャーを取り出した。

アボス 「ジイン、さぁルーラーをこれに!」

 ジインはルーラーを担架に優しく乗せた。

シャヤ 「ルーラーちゃん・・・」

フロウ 「どうやら、気を失っているみたい・・・」

ジイン 「それにしても・・・さっきのは一体・・・」 

 すると、ハクブが口を開いた。

ハクブ 『あれは神の憑依・・・まさか、この眼で見ることが出来るとは・・・』

ジイン 「ハクブ・・・詳しく教えてくれないかい?」

ハクブ 『うむ、神の憑依とは神のみが使える至高の憑依術だ、憑依者に精神の支障を来す事なく安全に行えるが、一時的に意識は遮断されてしまう』

ジイン 「安全?・・・他の憑依術は危険だと?」

ハクブ 『一番危険なのは悪霊の憑依であろう・・・精神はおろか身体も蝕まれる・・・正に死へのいざないだ』

 それから暫くするとルーラーが目を覚ました。

シャヤ 「ルーラーちゃん!」

フロウ 「大丈夫?ルーラー、念のために鑑定をして確かめるわね、鑑定・・・健康状態は問題なしと・・・え?ナニコレ?」

  

 フロウは驚愕の表情・・・一体何が・・・ 

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