第55話 遺跡の町 キーレ

 一同は用意を整え、馬車2台をチャーターして、遺跡の町キーレに向けて旅立った。

ジイン 「いや~御者の練習をしていて良かった~」

 今、2台の馬車を運転しているのはジインとレイテである、キーレの町までは5日間の道程だ。

アボス 「ジイン、疲れたら、いつでも言ってくれ」

ジイン 「は~い、その時はお願いしますね~」

フロウ 「まさか、ジインが御者を出来るとは思わなかったな」

シャヤ 「・・・随分と手馴れている・・・」


アボス 「ジインはギルド依頼で御者の仕事は積極的に受けていたからな、教会でもよく馬の世話を焼いていたようだ」

フロウ 「なるほど・・・アボスもそうなのか?」

アボス 「まぁ、そうだな、ジインと一緒に依頼を受けていたし、以前に隊商キャラバンで御者は経験済みだ」

シャヤ 「・・・ギルドマスターも?・・・」

アボス 「あぁ、勿論リーダーもだ、隊商キャラバンでは必須項目の1つだからな」


 ~~馬車内~~年長組~~

フィアー「レイテ殿が御者も出来るとは・・・」

ロンドネ「そうだねぇ・・・ベリル、あんたならわかるよ、隊商キャラバンを率いていたからね、でもレイテは意外さね、知っていたのかい?」

ベリル 「いや・・・儂も驚いておる・・・熟練者のように非常に手馴れている」(儂より上手かも知れん・・・)

レイテ 「♪~~久しぶりの御者だが、体が覚えているものだな~~うん、快調、快調~~」


 ~~一同を乗せた2台の馬車は街道をひた走る~~

3日後、予定通りに最寄りの町へ着くと補給と休憩をして、再び馬車は走り出した。 ここでレイテからベリルに、ジインからアボスに御者がチェンジした。

それから2日後、一同はキーレに辿り着いた。


 ~~遺跡の町 キーレ~~

 アルマ王国の王族が眠る地下陵墓がある、カルツオーネ伯爵領の町で、かつては観光地として名を馳せたが、50年前に突如、地下陵墓が迷宮化し、魔物が蔓延はびこるようになった為、現在は町の守備隊が管理をしている。

 馬車を厩舎に預け、一同は二手に分かれた。

ロンドネ女史、フィアー司祭、レイテ支配人は領主代行であり町長のバルサ(カルツオーネ夫妻の息子でロンドネの甥)を訪問と教会に、一方ベリルギルド長、アボス、ジイン、フロウ、シャヤは冒険者ギルドへ向かった。


 ~~町長邸内~~

 

バルサ 「これはロンドネ伯母さん、久しぶりですね、どうしてキーレに?」

 ロンドネはセグトーチの町で起こった事件を話した・・・

バルサ 「・・・父さんと母さんがそんな事に巻き込まれていたなんて・・・」

ロンドネ「私達は、あんたの両親を酷い目に遭わせた連中を懲らしめに来たのさ・・・その為にあんたから色々と聞きたい事があるんだ」


バルサ 「僕でわかる事なら何でも答えますよ」

ロンドネ「よしよし、まずルギル商会について教えとくれ」

バルサ 「ルギル商会といえばクバス男爵から参入を打診されたことがありましたね、尤も懇意にしている商会がいるから断りましたが・・・」

ロンドネ「そのクバス男爵と会った時に術師の格好をした奴はいなかったかい?」

バルサ 「術師の格好?・・・いや、執事と兵士だったね」

ロンドネ「・・・そうかい・・・」

フィアー「失礼、バルサ殿にお聞きしますが、その時に地下陵墓に関しての話題が上がりませんでしたかな?」

 バルサは腕を組み、暫し考え込むと、ハッと顔を上げた。

バルサ 「そういえば、地下陵墓の前線基地について色々と聞かれました・・・」

フィアー「それはいつ頃のお話しですか?」

バルサ 「今から1ヶ月程前の事です」

 

 すると、今まで黙っていたレイテが口を開いた。

レイテ 「バルサ様、前線基地に入るのは現在も暗証番号が必要ですか?」

バルサ 「え?、そうですが・・・なぜそれを?・・・」

レイテ 「昔に冒険者をしていて、その時に地下陵墓を探索したことがありましたので」

バルサ 「そうだったんですか、現在は守備隊が管理をしていますので、冒険者は殆ど地下陵墓には入らないですね」

フィアー「大司教が立て籠っているからですか?」

バルサ 「いえ・・・私が町長になった時にはもう・・・」

ロンドネ「ではなくということかい?」

バルサ 「このキーレから少し行った所に豊潤のアバンダントフォレストがあるので、そこが冒険者の狩場になっています」

レイテ 「豊潤のアバンダントフォレスト・・・資源や素材が潤沢に獲れ、魔物も多種多様で肉、牙、皮、爪、魔核などが比較的手に入りやすい・・・地下陵墓より、遥かに稼げますな・・・」

バルサ 「ええ・・・余程の物好きでないかぎり地下陵墓に入る冒険者はいませんね・・・」

フィアー「では今は大司教の件は?」

バルサ 「守備隊で捜索をしておりますが・・・正直、芳しくありませんね・・・」

 事情を聞くと、どうやらグレゴイシス大司教は信徒と護衛を伴って地下陵墓に入ったらしい、前線基地も数日前に出て下へ向かったとの事だった。

バルサ 「地下3階以降は守備隊でもかなりの危険があるので難航していて・・・」

レイテ 「それではバルサ様、1組の探索者パーティーに捜索の許可をいただきたいのですが」

バルサ 「許可をですか?」

ロンドネ「その中には、私達の弟子やあんたの両親の命を救った者もいるさね」

フィアー「彼等の実力は申し分無いです、保証致します」

バルサ 「こちらとしても、有難い事です、守備隊だけではどうしても人手不足だったので・・・」

 こうして、無事に町長の許可を得た。

一方、冒険者ギルドに向かった、ベリルとアボス達は実にアッサリとギルドから言質を取ることが出来た。

ベリル 「よし、冒険者ギルドにもう用はない、宿に戻るとするか」

ジイン 「しかし冒険者ギルドでは、とりつくしまもありませんでしたね・・・」 

フロウ 「仕方あるまい・・・今の地下陵墓は面倒事がかさなっているからな」

シャヤ 「・・・関わるのを嫌がっていた・・・」

アボス 「地下陵墓より、稼げる場所があるとはいえ、ここまで避けるとは・・・」

ベリル 「豊潤のアバンダントフォレストがあるからな・・・守備隊が管理している地下陵墓に入るメリットがないのだろう、こちらとしては都合が良いがな」

 

 その後は宿で一同は情報交換をして、翌日に備えた。

明日からは地下陵墓で大司教の捜索だ。


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