第54話 辺境伯と伯爵
一同と辺境伯を乗せた馬車は牛馬亭に着いた。
すぐにレイテは副支配人にカルツオーネ夫妻をお呼びするように伝えると、程なくして2人はやってきた。
ガルバン 「これはアイラード卿、今日はいったい
ミーシャ 「まぁアイラード様、これは御機嫌麗しゅうございます、それに姉様、皆さんも・・・私共に何か?」
アイラード「お二方、急を要する故、堅苦しい挨拶は抜きにしてよろしいかな?」
カルツオーネ夫妻はアイラード辺境伯の真剣な表情を汲み取ると、すぐに了承した。
レイテ 「それでは私の部屋までご案内致します」
~~牛馬亭支配人室~~
ロンドネ 「念のため、防音魔術を掛けておくよ」
アイラード「済まない、さてカルツオーネ卿、話というのは他でもないのだ」
アイラードはカルツオーネ卿に順を追って説明した・・・
ガルバン 「なんということだ・・・大司教が王家の秘宝である封魔の水晶を盗んで、キーレの町に逃げ込み、地下陵墓に立て籠っているとは・・・」
ミーシャ 「封魔の水晶・・・凄まじい魔力を秘めていて、もし悪用すれば国が崩壊する品と聞いています・・・何故に大司教様がそのような事を・・・」
アイラードは大きく息を「ふぅ~~」と吐いた。
アイラード「カルツオーネ卿・・・ここからは推測ですが、此度の件・・・大きな陰謀を感じております」
ガルバン 「な、なんですと!陰謀とな!?」
ミーシャ 「ア、アイラード様、一体どういう事でございましょうか?」
アイラード「まず、あなた方を拐ったならず者達、次に呪詛や毒を掛けた術師、更には呪詛媒体の入手経路、全てがある貴族に繋がっております・・・カルツオーネ卿、ルギル商会は御存知ですかな?」
ガルバン 「!!!・・・そ、その名は聞き覚えがある・・・最近、我が領地に参入を申し出てきた商会ですな」
ミーシャ 「確かクバス男爵からの紹介でしたわ」
ガルバン 「まさか、クバス男爵の陰謀と仰られるのか?」
しかしアイラードは頭を横に振り、こう言った。
アイラード「推測ですが、クバス男爵に指示をしている者がいますな、おそらくかなりの大物貴族かと・・・」
すると、ガルバンは鋭い目付きになり、辺りの一同を見渡し、「アイラード卿・・・ここにいる者達にこれ以上の話をしても構わないので?」
アイラード「どういう意味ですかな?」
ガルバン 「ここには、私共を救って下さった方達がいます・・・そんな恩人達を貴族同士の醜い争い事に巻き込んでしまってよいのか・・・」
するとギルドマスターのベリルが挙手をした。
ベリル 「ガルバン様・・・私共は自分の意思でここにいますので、どうかお気になさらずに」
ガルバン 「しかしベリル殿・・・そうは言っても・・・そなた達にこのような事を頼むのは厚かましいのでは・・・」
そのとき、右手をピン!と挙げて、声に出したのは四面八臂のメンバー達であった。
アボス 「カルツオーネ卿、それでは私共にお任せいただけませんでしょうか」
ジイン 「今度、キーレの町に行く予定だったんですよ」
フロウ 「そうそう、ギルドの依頼を受けたんです」
シャヤ 「・・・地下陵墓、楽しみ・・・」
ベリル 「おぉ!ならば調査員も同行せねばならぬな!
丁度、手が空いているので儂が行こう」
ロンドネ 「ミーシャ、あたしは甥のバルサに会いたくなったね、今はどこにいるんだい?」
ミーシャ 「バルサはキーレの町に領主代行で・・・」
ロンドネ 「偶然だねぇ、あたしも一緒に行かせてもらうよ、構わないね、ベリル?」
ベリル 「おぉ、勿論だとも、そう言えばレイテもキーレに用があると言っておったな」
レイテ 「ん?あぁ私もキーレの宿泊施設を見て参考にしたいからね、せっかくだから同行させてもらおうかな」
フィアー 「私はグレゴイシス大司教に伺いたい事があるので、当然キーレに行かせていただくよ」
アイラード「フッ、カルツオーネ卿、どうやら皆偶然キーレに行く事になったようだ、本当は私も行きたいのだが、そういうわけにもいかないので路銀を用意しよう」
ガルバン 「・・・あなた方は・・・なんという・・・ありがとう・・・本当にありがとう・・・」
ミーシャ 「姉さん・・・皆さん・・・どうかよろしくお願いいたします・・・」
こうして、8人はキーレに向けて出発した。
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