第17話 休日  ~ジイン~

迷宮探索を終えて2日間の休みとなった。


アボスさんは牛馬亭ぎゅうばていへ、フロウとシャヤは店を巡ると言っていた。そして僕は教会に新しい聖術を習うために来ている。

清拭クリーニング」・・・衣服や身体についた汚れを落としたり匂いを消す術で長期の探索では重宝する。

 「これで皆のストレスを少しでも軽減出来ればいいな、それと宝箱から手に入れたローブにもこの術を使ってみよう」

 僕は教会を後にして、次は市場に行くことにした。

市場には様々な物が売られている、掘り出し物が有るかもしれないな・・・そう思うと自然と足が速くなる、良い物に巡り合えますように・・・


~~市場~~

「おぉ・・・これこれ♪この雑然とした雰囲気がいいんだよ・・・」

街商広場と呼ばれる場所に構える店、店、店・・・飲食の屋台もあれば、地面に布を敷いて商品を並べただけの簡素な店もある、声を出して商品を説明しながら売っている人もいれば、対照的に全く喋らずにジッと座っている人・・・商売の在り方は多種多様だ、勿論、商品も・・・湯治客目当てなら装飾品や衣類、探索者目当てなら別の迷宮で採れた資源や道具類、携帯食料や水袋などの探索に必要な品々・・・中には何に使うかわからないガラクタやぼったくりの商品もあったりするが・・・


色々な店の商品を見て歩き、やがてあるお店に目が留まった。

なんの変哲もない帽子を売っているが、その中にある1つの帽子に釘付けになってしまった・・・(な、なんだ、この帽子だけ他のとはまるで違う・・・デザインは同じ、生地は布だが・・・まずは値段を訊いてみるか・・・)

 「すみません、ここにある帽子はいくらですか?」と店主に問いかけた。

店主はどれも一律500モル(銅貨1枚)だと答えた。

(・・・そんなバカな・・・この帽子以外なら妥当な値段だが、これはそんなモノじゃない・・・魔力を帯びた帽子なら3倍・・・いやそれ以上はするはずだ・・・)

壮年の男性店主はにこやかな顔でこちらを見ている・・・

 「では、この帽子も同じ値段ですか?」僕は魔力を帯びた帽子を店主の前に差し出して尋ねた。

 「・・・これだけは他の帽子とは違う気がするのですが・・・とても500モルで買える代物では・・・」

すると、にこやかな店主の顔付きが一変し、鋭い眼光で僕の方を見ると「・・・ほう・・・お若いの・・・お気づきなさったかね・・・」


 「やはりですか・・・これほど魔力を帯びていれば分かる人には分かりますよ」

「そうでもないんじゃよ・・・なかなか気づく者がおらんでのう・・・今日は結構なお客がきたがお主が初めてじゃな」

「恐れ入ります・・・この帽子は布が他と違うのですか?」

「うむ、それはな迷宮布製の帽子でな」

「!!・・・聞いた事があります・・・迷宮反物と呼ばれる迷宮産の布地ですね」

「そこまで知っておったか・・・その通りじゃ・・・して、その帽子は買ってくれるのかのう?」

 「勿論です、しかし・・・500モルで宜しいのですか?」

「一律その値段じゃから構わぬ、是非使ってくだされ」

「ではお言葉に甘えて、それとこちらの帽子も3つ買わせていただきます」

「おお、そうかいそうかい、ではしめて2000モルじゃ、はい毎度、また来ておくれ、次は別の物も用意しておくでの」

 

僕は店主に礼を言って立ち去り、そのまま帰路に就いた。


迷宮布の帽子 1つ

布の帽子   3つ



ジインの休日1日目終了


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