第10話 迷宮の悪意

遂に俺とジインは迷宮に足を踏み入れた。


フロウ「どうした、2人とも?まだ通路だぞ?」

アボス「ここに来て2年・・・やっとスタートラインに立つことが出来た・・・1人で過ごした1年・・・ジインと会ってさらに1年・・・」

ジイン「アボスさん、だけですよ・・・これからこの4人で探索していくんですから」

アボス「あぁ、そうだな・・・感慨深いな・・・」

シャヤ「・・・迷宮が初めて?・・・」

アボス「いや、そうではないが・・・これまでも迷宮化した廃鉱道や地下陵墓は探索経験があるが・・・ここはまた一入ひとしお違うというか・・・いや、すまん、無駄話が過ぎたな、先に進もう」

フロウ「そうでもない・・・帰ったらその話はゆっくり聞かせてくれ」

シャヤ「・・・地下陵墓・・・興味深い・・・」


ジイン「あっ扉が見えてきましたよ」

アボス「これが迷宮の扉・・・」

ジイン「確かに「4」と刻んでありますね」


フロウ「ここから先は罠もあるし、魔物も出てくるが、みんな準備は良いか?」

シャヤ「・・・この前の様にはいかない・・・」

ジイン「殿しんがりは僕が務めます、行きましょう」

アボス「では扉を開けるぞ」


 ギィィィ・・・重厚な扉を開けて俺達は中に入った。


~短道内~

アボス「むぅ・・・先程とは空気が一変したな・・・」

ジイン「これが迷宮・・・??今、入ってきた扉が消えた・・・??」


フロウ「!!な、なんだと、そんなバカな・・・いきなりだと・・・」

シャヤ「・・・何か変・・・前と違う・・・これは迷宮の悪意・・・」


「「迷宮の悪意?」」


フロウ「先に進むしかない・・・後退や逃亡を迷宮が許さない・・・」

シャヤ「・・・前進あるのみ・・・これが長道でなると恐ろしい・・・」


ジイン「なるほど・・・これは僕達の士気に関わりますね・・・」

アボス「そうだな・・・あるとないでは大きく違ってくる・・・常に戦ってばかりでは疲弊する、戦略的撤退にげみちを見据えての戦闘だからな・・・」

フロウ「それは私達も重々承知している・・・何せ、死にかけたからな・・・」

シャヤ「・・・戦闘を避けても前進のみ・・・後退がないのは辛い・・・」


ジイン「救いは短道だった事か・・・不幸中の幸いだ・・・」

アボス「作戦変更だ!、フロウはスタミナ温存、短道とはいえ入ったばかりだ・・・罠看破にはこれを使う、収納ストレージ


フロウ「アボス、それは一体なんだ?」

シャヤ「・・・四角い箱の灯り・・・」


アボス「これは看破かんぱのランタンといってな、火をつけると・・・」

ランタンに火がともると、道や壁の一部が光り出した。


ジイン「これは・・・罠が光っている・・・魔道具ですね」

フロウ「これは便利だな・・・」

シャヤ「・・・アボス・・・後で良く見せて・・・」

ジイン「僕の国では角灯かくとう提灯ちょうちんと呼ばれている道具ですね、確か燃料は魔核マジックコアだったはず・・・」


アボス「あぁ、これは経済的でな、極小魔核1個で十分長持ちする道具なんだ、これで罠は大丈夫だ、先に進もう」


フロウ「む・・・魔物・・・20M程先か、戦闘準備を!」

「「「了解!」」」


フロウ「ラット1!ゴブリン1!ラットを攻撃する!」

ドシュッ! 矢はラットに命中した、やはりフロウと弓の相性は良く、すぐ次の矢を番う準備をしている手際もさすがだ、本当に初めてか?


アボス「よし!ジインいくぞ!」

ジイン「はい!」

シャヤ「・・・魔玉弾・・・」

ギィィィィ!!

よし・・・戦闘終了・・・


フロウ「こんなにあっさりと終わるとは・・・」

シャヤ「・・・2人の時とはまるで違う・・・」

アボス「そりゃ4人だからな戦い方も変わるし、以前は魔術と短剣だろ」

ジイン「そうですよね、フロウの弓とシャヤの魔術の後、僕とアボスさんでタコ殴りですから」

アボス「まぁ、最初はガチガチのオーソドックスなスタイルで挑もうと決めてたからな、敵も2体だけだったし、クロウがいたなら少し変わっていたがな」


その後の戦闘も問題なく進み・・・

アボス「おっ、宝箱があるぞ」

ジイン「やった、初宝箱だ~」

フロウ「よし、ここは私の出番だな、確認しよう・・・どれどれ・・・

罠を解除して・・・鍵は・・・開いたぞ」

アボス「さすがだな、早いし手際が良い」

ジイン「餅は餅屋ですね」

シャヤ「?モチワモチヤ?・・・それも国言葉なの?・・・」

ジイン「そう、物事は専門家に任せるのが良いという意味」

アボス「成程・・・俺達でも出来なくはないが失敗する確率が高い・・・罠が発動すれば危険だし、中の物が破損するからな」

フロウ「面白いな、ジインの国の言葉は・・・では開けるぞ・・・」


宝箱を開けると中には錆びた短剣や大小の石、薄汚れた袋が入っていた。


フロウ「まぁ・・・短道の宝箱はこんなものだ・・・袋の中は・・・お金だ・・・」

シャヤ「・・・探索者が落とした物・・・おそらく命も・・・」

ジイン「・・・全部ありがたく、使わせて頂きましょう・・・」

アボス「うむ、この錆びた短剣も研げば使える、石は投擲武器にもなる・・・あとは目ぼしい物はないな・・・さぁ先へ行こう」


4人が進んでいくと扉が見えてきた

ジイン「あれが出口の扉ですかね」

フロウ「あぁ、開ければ通路に戻れるはずだ」

シャヤ「・・・あまり疲れていない・・・」

ジイン「さぁ、出よう」


ガチャッ・・・扉を開けた・・・

シャヤ「・・・疲れが少ない?・・・」

フロウ「・・・そういえばそうだな・・・」

アボス「どうする?余裕があるならまだ行くか?」

ジイン「短道扉は他にも?」

フロウ「ああ、この先の分かれ道を左だ、ちなみに右は中道扉だ」

シャヤ「・・・短道扉に行く・・・」

アボス「よし、その前にあそこの岩陰で食事にしよう」

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