第7話 懇親会・・・・

鶏豚けいとん


俺達は美味い食事を堪能しつつ、今後について話し合うことにした。


アボス「迷宮探索に行く前にお互いが持っている情報のすり合わせをしよう」


「「「はい」」」


アボス「まず迷宮についてだが、俺とジインはここの迷宮に入った事がないので、フロウとシャヤに話してもらおう」


フロウ「うむ、これを見てほしい、迷宮の大まかな感じだ」


    【迷宮入口→通路→扉⇔(魔物、罠、宝箱、資源)⇔扉→通路】


フロウ「では順を追って説明するが、私達も一階層の扉の短道の探索と・・・中道の途中しか出来ていなかったので断片的な情報だと思ってくれ」


シャヤ「・・・通路は魔物はいない、罠もない・・・その代わり宝箱や資源もない・・・ただの通路・・・」


フロウ「扉を開けて中に入ると一変する、何というか・・空気が重くなる感覚だな」


シャヤ「・・・徐々にスタミナが削られていく・・・」


ジイン「スタミナ・・・ですか」


アボス「全身持久力だな、心肺持久力とも呼ばれ、長い時間にわたって体を動かせる能力のことだ」


ジイン「つまり迷宮にあまり長い時間いると、スタミナがどんどん削られて疲弊していく・・・スタミナを回復する方法はあるんですか?」


フロウ「勿論ある、食事、睡眠だが、この2つは質が良くないとあまり回復しない、迷宮内での携帯食料や仮眠程度では少々厳しい・・・」


シャヤ「・・・教会から支給されるスタミナポーションが一番・・・」

フロウ「無料で支給されるが支給本数は一人一本で、飲み切って空き瓶を返さないと新しく支給されない、教会への貢献度、階級により支給本数は増えるようだが・・・」


アボス「・・・治癒薬だと怪我は治り、体力が戻ったように思うが失った血は戻っていない・・・そういうことか・・・よく考えられているな・・・」


ジイン「どうしたんですか?アボスさん」


アボス「フロウ、1つ聞きたいのだが、俺達が見つけた日に君達は治癒薬をどの位持って迷宮に入っていたんだ?」


フロウ「・・・あの時は・・・そうだな・・・低級4本、中級2本というところか・・・」


シャヤ「・・・魔力回復薬も2本持っていった・・・」


アボス「妥当だな、だがスタミナポーションは2本のみ、行きと帰りを考えると心もとないが支給本数は決まっている」


ジイン「!!!・・・先に進みたいからと無理をするとスタミナ切れを起こす・・・どんどん疲弊していくから治癒薬を飲んで体を動かす・・・更にスタミナが無くなるから治癒薬を飲む・・・恐ろしい・・・正に負のスパイラル・・・」


アボス「その通りだ・・・そして治癒薬が無くなった所に運悪く、魔物が・・・あとは言わずもがなだ・・・」


フロウ「・・・・・・・・・」


シャヤ「・・・・・・・・・」


ジイン「今日1日だけですが、御2人と話してみて、とてもそんな愚かな真似をするようには見えませんでしたが・・・他にも理由が・・・」


アボス「俺も同意見だな、教えてくれないか?」


・・・・・2人はポツリ、ポツリと話し始めた・・・・・


フロウ「・・・そう・・・あの日は・・・」


シャヤ「・・・中道の初探索だった・・・」


~~~回想~~~


「シャヤ、用意出来た?」


「・・・準備万端・・・」


今日、私達は迷宮の中道探索にいよいよ挑戦する、これまで短道に何度も入って力をつけた。2人の連携も確かめた、抜かりはない。


 ~迷宮の中道内~


「まさか・・・道半ばでポーションを使い切ってしまうとは・・・こんなはずでは・・・」


「・・・フロウ・・・戻ろう・・・」


「・・・やむを得ない・・・引き返そう・・・」


(これほど魔物が強くなるとは思わなかった・・・早く戻らないと)


「・・・!!シャヤ止まって!!・・・」


「!!・・え、探索者・・・そんなはずは・・・」


「シャヤ!!それはもう探索者じゃない!!迷宮に取り込まれている!!」


 「グオオオオオッッ!!!」


叫びながら長剣を振り回して襲い掛かかってくる!!!


「「は、速い!!!ぐっっっ!!!」


フロウは小盾で防ごうとしたが弾き飛ばされてしまった!!


「くっ!しまった・・・あ、足が・・・」


「フロウ!!・・・よくも・・・魔玉弾!!」


元探索者「ガアアアァァッ!!」


魔玉弾は命中した!!!・・・が


「よしっ!・・・・えっ・・・」


なんと、シャヤの脇腹にナイフが刺さっている!!!


「そ、そんな・・・どうして・・・」


ドサッ、シャヤは倒れた・・・


「シャヤーーー!!!こ、このぉぉぉぉぉ!!」


フロウは倒れている元探索者にトドメをさした!!!


「シャヤ!!しっかりして・・・お願い・・・」


「フ、フロウ・・・私を置いて1人で・・・逃げて・・・」


「!!何を言ってるの!!そんなこと出来るわけないでししょ!!2人で一緒に出るの!!」


~~~回想終了~~~


フロウ「そして私はシャヤを担いで、命からがら迷宮の入口まで辿り着いた・・・でもそこで力を使い果たしてしまったんだ・・・」


シャヤ「・・・そこを2人に助けて貰った・・・」


アボス「・・・それで2人ともあんな酷い怪我をしていたのか・・・」


ジイン「・・・万全の態勢で臨んで、そんなことになるなんて、短道と中道でそんなに魔物の強さが違ったということですか・・・」


フロウ「そういうことだ・・・まずは短道の魔物について話そう・・・」


迷宮ラット・・・・鼠と言ってもかなり大きく小型の犬くらい、大きくなった分、素早さは落ちている。

  1階層では一番の雑魚だが油断は禁物。


迷宮クロウ・・・・迷宮に居着いてしまった大型の鴉でやはり素早さは落ちている。ただ上空からの攻撃は脅威であり、人体の急所を狙ってくる(主に顔面)、注意しないと大怪我をする。


ゴブリン(緑)・・・・緑色の肌の小鬼、5~6歳児くらいの身長、知能を持つ。腰蓑に棒切れの粗末な格好だが、盾や短剣、革鎧を装備している個体もいる、集団行動、性格は狡猾


フロウ「この3種だな、単独では見かけず、2体以上の混成だった」


シャヤ「・・・ゴブリンの盾持ち・・・注意・・・攻撃を弾く・・・」


アボス「成程・・・だが短道は問題ない、中道の攻略が肝になるのだ・・・」

ジイン「ん?確かシャヤさんは毒を受けていたはず・・・」


シャヤ「・・・中道の魔物に傷を負わされた・・・迷宮毒蜘蛛が複数出てきた・・・」

フロウ「中道の魔物はこの3種に加えて迷宮毒蜘蛛、さらに、赤肌のゴブリンも手強いと聞く・・・」


迷宮毒蜘蛛・・・大型の蜘蛛、単体自体は脅威ではないが、毒には注意、集団でくると非常に厄介で苦戦する。


ゴブリン(赤)・・・赤い肌の小鬼、緑より高い知能と身長で腕力に優れている。装備は手斧に革鎧、小盾、これらは探索者から奪い取り、独自の技術でカスタマイズしている。


元探索者(仮)・・・迷宮に取り込まれた探索者、ゾンビや生けるリビングデッドの様に腐敗はしていない。迷宮により操られていると考えられている。魔物であろうが探索者であろうが関係なく襲い掛かる習性で、ある意味では中立である。単独行動。


フロウ「以上が私達が中道で戦った魔物だが・・・最後に戦ったのは魔物なのか・・・人間なのか・・・」


シャヤ「・・・・・・・・・」


アボス「魔物だよ、ただ人間の姿形をしていただけで間違いなく魔物だ」


「「・・・・・え?・・・・・」」


ジイン「そうですね、人が人たらしめるのは《知性》です、《知性》とは物事を知り、考え、判断する能力です。迷宮に取り込まれ、操られている時点でもう人ではなく魔物だと、僕もそう思います」


アボス「とは言え・・・辛いことを話させてしまったな・・・2人とも済まない」


ジイン「僕も同罪です・・・申し訳ありませんでした」 


俺とジインは席を立って2人に深く頭を下げた、いくら情報を知るためとはいえ、ズカズカと踏み込むべきではなかったな・・・後で2人で反省会だ・・・


シャヤ「・・・2人とも頭を上げて・・・」


フロウ「そうだ、私達はあなた方に命を救われたのだ、その時の話をする位は何のことは無い、むしろこれで役に立ったかどうかは・・・・・」


アボス「勿論だ、迷宮探索において事前情報は重要だ、強い武器や防具は金を出せば買えるが情報は金ではなかなか買えない、貴重なんだ」


ジイン「そうですね、金で買える情報はガセが多いんです」


フロウ「そういってもらえれば幸いだ」


シャヤ「・・・まだ料理食べたい・・・」


アボス「そうだな、ギルドマスターが奢ってくれるんだ、しっかり頂こうか」


「「「賛成!!!」」」


しばらく、美味しい料理に舌鼓を打ち、話に花が咲いた。


ジイン「さて、宴もたけなわですが」


「「「???エンモタケナワ???」」」


ジイン「あれ、僕が居た国では酒宴の締め言葉としてあるんですがご存知ないですか?」


アボス「そうなのか、初耳だな」


フロウ「私も聞いたことがない」


シャヤ「・・・何かの呪文?・・・」


アボス「面白い、続けてくれないか」


ジイン「はい、さて宴もたけなわではございますが、時間の都合上この辺でお開きにしたいと思います。最後にアボスさん一言、お願いします」


アボス「え、あぁ・・・今日は大変、有意義な時間でした、これから4人で迷宮探索をするわけですが、「いのちだいじに」を行動指針にしていきたいのでよろしくお願いします、明日は各自準備に費やしてください、明後日から迷宮探索を始めますのでよろしく 以上」


パチパチパチパチ


ジイン「それでは、今日はこれで解散します、お疲れさまでした」


「「「オツカレサマデシタ」」」

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