第7話 妹ベロニカ②

辺境伯領地にある、王都内別邸に馬車で帰ると、

母親がいる時間には珍しく妹のベロニカが待っていた。


「お姉様、私とアーサー様の仲を邪魔するような真似はやめてちょうだい」


ベロニカは私の顔を見るなり頭がキンキンするような声で怒鳴りつけてきた。


前回の流れと違うので全く身に覚えがない。

もうこの女への対応も改めようかとも思うが怪しまれる訳にも行かない。

まあ完全に証拠を握るまでは適当に相手をするか。


「ただいまベロニカ、あった早々挨拶もせずに。

取りあえず着替えたいの。

仕度が終わったら仕えを呼びに行かせるから自分の部屋で待ってて」


私がそう言うと渋々ながらもベロニカは引き下がった。

このままこんな玄関入って直ぐの場所で騒いでいたら、

間違いなくお母様が来ていつものお説教パターンになる事位は学んだのだろう。


私は自分の部屋に戻った後に、

着替えて少しゆっくりしてから使用人にベロニカを呼びに行かせた。


「遅いわよ!!」

「ベロニカ、いい加減にノック位は覚えて」


私の部屋に入るなりいきなり文句を言ってきたベロニカを注意した。


「ノックとかどうでも良いのよ、見すぼらしいお姉様と違って私はドレス選びとかで忙しいの!!」

「忙しいからと言ってノックをしなくて良い訳ではないのよ」


確かにベロニカはいつ見ても奇抜なドレスを着ている。

絶対に貴族街の商店では売っていないような派手で布地が少ないドレスばかり。

特殊な趣味の貴族専用の服を取り扱っている店でもあるのかしら。


「一々五月蝿いわね、そんな事よりアーサー様のことよ。

邪魔者しないでよ」

「私には全く覚えがないんだけど」

「トボケないでよ、何時もは夜遅くまでデートしてくれるのに、

今日はあって早々に帰ってしまったのよ。

しかももう二度とプライベートで誘って来ないでくれって言われたわ!!」


それなのよね、私もまさかあそこ迄アーサーが早く城に帰って来るとは思ってもいなかったのよ。


「何かアーサー様を怒らせるような事をしたんじゃないの?心当たりはない?」

「あるわけ無いでしょ、お姉様と違って私はアーサー様から愛されているの。

惚けてないでもう邪魔者しないでよね!!」


そう言ってベロニカは来たとき同様に唐突に私の部屋を出て行った。

だからドアを閉めていきなさいよ、猿なのかしら。


それにしてもベロニカは以前と同様に思えるのにアーサーだけが違う。

私だけが戻ったんじゃなくてアーサーも前回の記憶があるのかしら。

でもそれなら尚更前回と同様な行動を取ってくるはず、理解できない。


本当はベロニカが学園に入学して来る前に決めたかったが仕方ない。

私の学年の卒業パーティまで我慢して証拠を集めるしかないわね。

正直ベロニカと一緒の学園生活は二度とゴメンなんだけどね。

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