ひとりごと
「いらない、いらない、いらな……まー、使えるっちゃ使えるか」
家族のことはあまり好きではなかった。
「あー、めんどくさ」
何か問題があるわけではない。ただ、性格が合わなかっただけだ。
人類を恵まれている者と恵まれていない者の二つに分けてしまえば、私はきっと恵まれている方に入るのだろう。
家族が死んだと知った時、私は上手く泣けなかった。周りの人間は、まだ実感が湧かないのだろうと、勝手に納得していた。
ずっと嫌いだった、というわけではない。ただ、毎日を繰り返す中で嫌いな日の方が多かっただけ。好きだと思える日が、年々減っていただけ。それだけ。
父は自己肯定感が強くて、盲目。融通が利かなくて話も聞かない。自分を良い親だと思っていた。母は普段から嫌味のように小言をばら撒き、すぐにヒステリーを起こし物に当たりまくる、困った女だった。弟はワガママでナマイキで世の中舐めているようなクソガキだった。
私だって、人に嫌われる要素を持っているのだろう。もしかしたら、三人より、よっぽど酷い人間かもしれない。だって、家族が死んでも涙が一粒も零れないような人間だ。
「でもきっと、要らないもんじゃなかったはずなのになぁ」
今更何を思ったところで、何もかも遅いのだけど。
「冬の声聞きたいな……」
好きな声を探して、見つけた人。まさか、実際に出会ってしまうとは思わなかったけど。
「ユキさんに会いたいな」
さっさと片付けてあのバーへ行こう。あの人に会って、それから。
あの人は、私と距離を縮めるつもりなさそうだから、残念だけど、あの人の幸せを見守っていくしかないな。
幸せにしてくれる人を待つ彼を、見守ろう。
君の言葉は魔法だった 大甕 孝良 @omika
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