第3話 100円ショップでお買い物
僕は母さんに頼まれた買い物に行くことにした。
別に魔人国を見捨てるわけじゃないんだ。
魔王城にいても、逆転の発想が出ればいいんだけどさ。
そんなアイデアは思いつきそうもないからね。
「うわぁい! お兄ちゃんと買い物だぁ」
と、はしゃいでいるのは妹の
11歳の小学5年生だ。
犬のように人懐っこくて明るい性格。
兄の口からいうのもなんだけど、中々に可愛い見た目をしている。
周囲からはモテモテ。異性問わず、誰からも好かれている。僕とは大違いだよ。
そんな妹なのに、なぜか僕に拘りが強い。
今だって、僕の腕を抱きしめて離そうとしないんだ。
嫌ではないが、もう少し兄離れして欲しいとは思っている。
「ウッフフフ。デート、デート」
「いや、デートじゃないから」
「んもう。お兄ちゃん、まさか恥ずかしいんじゃない?」
そりゃ、妹と腕組んでたら恥ずかしいよね。
「見せつけてやらないと。優衣たちの兄妹愛を!」
誰に見せつけるんだ?
「それ意味あるのか?」
「んもう、お兄ちゃんたら! ツンデレなんだからぁ」
いや、デレてないが……。
とにかく買い物を済ましてしまおうか。
僕たちはスーパーへ行って母さんに頼まれた野菜と調味料を買った。
ああ、なんだかいつもの日常だな。
このまま、魔人国に帰らなくてもいいのかもな。
「あは。見て見て。あのカレー屋さん、インド人もビックリって書いてあるよ! 本当に驚くのかなぁ?」
優衣は知らないんだ。
僕の魂が魔王だってことを。
でも、このまま魔人国に戻らなかったら、僕は伊草
こっちに戻ってくる時。
ミラーンの顔は本当に優しそうだったな。
「お母様に会いに戻られるのですね」
「うん」
「では、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「……ねぇ、ちょっと気になったんだけどさ。こっちとあっちの時間軸ってどうなってるの? 時間差ってあるのかな?」
「同じ時間が流れていると思います。ですから、向こうで100年が経てば、こちらでも100年が経ちます」
「そう……」
「この次にカテル様にお会いできるのが何年後になるのかわかりませんが、私たちは100年でも1000年でもお待ちしております」
そんなことを言っていたっけ。
本当に僕のことを気遣って見送ってくれたよな。
魔人たちの優しい眼差しが頭から離れない。
「魔王様。お気をつけて」
「魔王様。お元気で」
「魔王様に会えて幸せでした」
「魔王様、お達者で」
今生の別れみたいな言葉だった。
僕がこのまま帰らなくても恨みもしないのだろう。
それでも、見過ごすなんてできないよな。
魔人たちがどんな存在なのかはまだよくわからないけどさ。
僕のことをあんなに慕ってくれているのに、無視するなんてできないよ。
今の現状は、砂人族のサンドマンに攻撃を仕掛けられていて魔人国は劣勢なんだ。
サンドマンには水攻撃が効くけど、水魔法は砂人国のスナ王女に封印されて使えないんだ。
水魔法を使わずに何かピンチを救う方法があればいいけど……。
僕ができることといえば現代の知識を使うことくらいか。
「あ、100円ショップ。あそこってなんでも100円で安いよねぇ」
ふむ。
何かヒントがあるかもしれないな。行ってみよう。
「あ、ほらほらお兄ちゃん見て見て。コスメが100円だよ」
正確には消費税が付くから110円なんだけどな。
「この髪留め可愛い♡」
やれやれ。
「しょうがないな。1個だけだぞ」
「え!? 買ってくれるの?」
「欲しいんだろ? それ似合ってるし」
「うわぁあ! お兄ちゃん好き好きーー!」
なんだかんだで甘やかしちゃうのは僕の悪い癖だよな。
さて、水魔法の代替えになる物を探そう。
やっぱりバケツで水を汲んでとかになるのかな?
でも、相当な量の水を運ばないといけないし。水場から戦地まで遠ければ難しくなる。
それにバケツの水を掛けるのってどうなんだろう? 簡単に避けられる気がするな。
持ち運びが便利で避けられにくい水攻撃ができるアイテム……。
「あ……これだ」
「ほぇ? そんなのお母さんから頼まれてないよ?」
「ふふふ。ちょっとね」
僕はそれと髪留めを買った。
しめて220円。
これを見せてみんなに相談してみよう。
「はい。んじゃ、髪留めはお前にプレゼントな」
「あは! お兄ちゃんありがとう♡」
僕の腕を抱きしめる力がより一層強くなる。
よぉし、んじゃ早速部屋に帰って魔人国に行こう。
「え? お兄ちゃん勉強?」
「う、うん。ちょっとね」
「じゃあ、
「ちょ、ちょっと1人でやりたいんだ。悪いけど、教えるのはまた今度な」
「えええ? なんでーー?」
「しゅ、集中したい時もあるだろ?」
「そんなのおかしいよ。
「今日は特別だ。難しい問題だからね」
「ああ! わかった!! エチイ動画を観るんでしょ!!」
「なんでだよ! そんなもん観るか!」
「お兄ちゃんも中学生だもんね」
「いや、観ないって」
「いいよ隠さなくても。あ、そだ。
「だからなんでそうなるんだ! とにかく難しい問題だから、1人にさせてくれ!」
「ぶぅ〜〜。髪留めに免じて許してあげますぅ」
やれやれ。部屋に鍵がついてて良かったよ。
僕が魔法陣の中に入ったら面食らうだろうからね。
家族にはこんなこと秘密だよな。
学習ノートを開くと、僕は魔法陣の中に吸い込まれた。
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