第五話 ハイスペック双子
――八神君とそんな出来事があって。
理事長室に戻る頃には、八神君の「根回し」で私は普通登校をする事になっていた。
否定しようにも、理事長先生もママも大喜びだし、マカロンもすっかり私に懐いてずっと足元で寝そべっていた。
そのせいで、嫌だという機会をすっかり逃してしまった。
うう、自分の嫌と言えない性格を呪いたい……!
そして。
お話は四つ葉学園へ登校初日に戻る。
面談の日と違って、四つ葉学園へ向かう通学路は同じ白い制服を着た生徒が溢れている。
他の生徒は転校生の私よりも、一か月半も先に入学している。
すでに友達が出来て、グループにもなっていて。
楽しそうに歩く同級生を見るだけで、胸の辺りにモヤモヤとした焦りを感じた。
……うう。
行きたくない。
再び、電柱にもたれて足が止まってしまう。
「……そこの」
「……」
「そこの、電柱と抱き合っている人」
「……」
「そこの三つ編みおさげの子!」
……あれ?
もしかして、私、呼ばれている??
振り向けば、二人の生徒が立っていた。
男の子の方はきちっと髪の毛を整え、眼鏡を掛けた真面目系男子。
女の子の方はまっすぐ黒髪ストレートで目がぱっちり。とっても美人な子。
二人の共通点といえば、顔の造りが同じで。
つまり、双子だ!!
すぐさま女の子の方が私に駆け寄り「大丈夫? 体調悪いの?」と、体を支えてくれた。
男の子の方は私の前にスッとしゃがみ込み「すぐ先にベンチがあります。嫌でなければ乗ってください!」と、おんぶする様に促す。
その、躊躇う様子もない行動に私の方がびっくり仰天。
「だ、だだだだだぁ、大丈夫れす!! とっても元気でふ!!」
と、むりやり元気な素振りを見せた。
「そう? でも、顔色は悪いわ」
「そうです! 遠慮しなくて良いですよ!」
とは言われても。
遠慮するに決まっているじゃない!!
戸惑う私に、女の子の方が「じゃあ」と私の手をきゅっと繋ぎ、
「一緒に学校へ行きましょうね。何組?」
と尋ねてきた。
私は絞り出す様に「で、D組……」と答えると「わあ!」と女の子はお花が咲いた様な笑顔を見せた。
「……もしかして! 今日から転入する野乃原さん?!」
「そ、そう……です」
「おんなじD組! 私、
美人な二ノ宮さんが、私の手をブンブンと振った。
「僕は
眼鏡のフレームを掴みながら、真面目そうな二ノ宮君はぺこりとお辞儀をしてくれた。
「へぇー! 聞いていた通り、可愛い!」
と言って含み笑いをする二ノ宮さん。
……ん?
聞いていた通り??
「理亜、ご本人を目の前にして、失礼ですよ……!」
気が付けば。
私は背の高い美形双子に左右を挟まれて歩いている。
視線を周りから感じて見渡せば、美形双子は周囲の生徒たちから羨望の眼差しを受けている。
確かに存在するだけで輝いている迫力満点な二人。
痛いくらいの視線を物怖じせず、堂々と歩く姿には威厳を感じた。
ハイスペック双子に連れられて。
四つ葉学園へ入り、あれよあれよと辿り着いた先は、1年D組の教室の前。
ちなみに二ノ宮君はA組の前で別れた。
「さ、入りましょ」と二ノ宮さんが私の手を軽く引っ張る。
でも、私は動けなかった。
……やっぱり、怖い。
教室は怖い。注目を浴びて喋るのが、怖い……。
震えて足が竦んでいると、背後から知っている声が響いた。
「――ん、ちゃんと学校へ来れたようだな」
そこには腕を組み、立ち尽くす八神君が居た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。