第174話 カレンVSナナ(2)

 

 ナナは、魔法の鞄になってるポケットから、もう一本、大森林の木で作った木刀を持ち、二刀流になる。


「ここからは、本気で行きます!」


 ナナは、カレンに宣言する。


「本気って、今迄も本気だったでしょ!」


「勿論、本気でしたが、もっと本気です!

 カレンさんは、木刀1本では倒せない強敵だったので!」


 そう、確かにナナは本気だった。

 だって、土木スキルを持ってるナナは、いつでも持ってる得物の性能を、最大級に引き出せてしまうから。


 そして、得物を替えれば、ナナの実力は、得物の性能に応じて、どれだけでもパワーアップできちゃうのである。


 しかも、土木スキルは、どんな武器でも装備可能。

 剣でも槍でも弓でもハサミでも、なんでも。


 そんなナナが、初めての二刀流。

 まあ、初めてであっても、ナナが木刀を持って二刀流をやろうと思えば、その時点で達人の域に達してしまうのである。


 ナナが負ける要素?

 そんなの微塵もない。

 だって、ナナが持ってる大森林の木で作った木刀は、カイ・ホークに貸して貰った、ヨナン作の木刀なのだから。


 そして、ヨナンが作った木刀を持ったナナが動く。


「えっ!?」


 何故か、スローモーション。

ナナは、相当、ビックリする。

 そんな事は、今迄、よくあったが、カレンとの戦いにおいては、そんな事、全く無かったのである。


 実を言うと、ナナは、カイ・ホークの木刀が、ヨナンが作った物と知らずに貸りたのだ。

 前回優勝者の剣鬼カレン・イーグルは、強敵。

 木刀1本だけでは勝てないかもと思い、保険として、カイ・ホークに木刀を貸りたのであった。


 なので、こんな風になるとは、全く思ってもみなかったのだ。

 強敵相手に、まさかのスローモーション。


 カレンは、ナナの剣撃を避けようと木刀を頭上に上げるが、ハッキリ言うと遅すぎる。


 ナナは、右手で持ってた木刀を止め、左手に持ってた、カイ・ホークに貸して貰った木刀で、ガラ空きであるカレンに腹に、胴打ちしようと思ったが、途中で思いとどまる。


 アッ……コレ、駄目な奴だと。

 本能で、察知したのだ。


 多分、ナナがそのままヨナンの木刀を使えば、カレンのお腹は爆発間違いなかったのである。


 ナナは、どうするか悩み、足払いで、カレンの足を払ってやる。

 カレンは、体勢を崩すが、物凄く遅い。


 仕方が無いので、カイ・ホークに貸りていた木刀をポッケの中に仕舞うと、


 グルン!グルン! グルン! グルン!


 カレンは、その場で4回転して、頭から地面に落ちて、パンツ丸出しで気絶してしまったのであった。


「ウソ……」


 これには、これをやった張本人であるナナ自身がビックリする。

 だって、軽く足を払っただけで、強敵カレン・イーグルを倒してしまったのだ。


 見てた観客に至っては、全く、何が起こったのか見えてないし。


 ただ、突然、カレンが回転して、パンツ丸出しになったとしか分からない。


『ご主人様……ナナさんが持ってた木刀、ご主人様がカイ・ホークにあげた木刀ですよね……』


 鑑定スキルが、事の顛末を見て、ヨナンに話し掛ける。


「だな……」


『ナナさん。ご主人様が作った道具を使っちゃうと、程々じゃなくなってますよ!

 土木スキルは程々が売りなのに、限界突破して、オリジナルの大工スキル並になっちゃってますよ!』


「うん。ヤバいな……」


 ヨナンは、ちょっと焦って唾を飲み込む。

 だって、あのカレンを、瞬殺。

 しかも、パンツ丸出しにしちゃったから、ナナもカレンに求婚されてしまうかもしれない。


『ご主人様……何アホな事考えてるんですか!』


「だって、あのカレンが4回転したんだぞ!

 そりゃあ、ビビるだろ!」


『ご主人様は、そんな事を、いつもやってますよ!

 大森林を焼け野原にして、レッドドラゴンさんのお腹に風穴あけたり、カララムダンジョンを風通しが良いオープンテラスにしたり!』


「ヤバいじゃん!」


『だから、ヤバいですって! ナナさんも、ご主人様が作った道具を持たせたら、程々じゃなくなっちゃうんですから!』


「勇者も真っ青?」


『この世界にも、一応、勇者は存在しますが、もう、ご主人様が存在してる時点で、存在意義ないですから!

 勇者は、魔王を倒せても、この惑星を消滅させれませんからね!

 因みに、ナナさんに、聖剣ムラサメを持たしたら、流石に、ご主人様のように銀河までは消滅させれませんが、この惑星ぐらいは消滅させちゃいますよ!』


 鑑定スキルが、得意の豆知識をひけらかす。


「という事は、ナナも勇者より上という事か?」


『ですね! ご主人様が作った大森林の木刀を持った時点で、勇者より完全に上です。

 因みに、この世界の勇者の強さは、カトリーヌさんぐらいの強さだったりします!』


「勇者、存在意義、本当に無いじゃん!」


 カトリーヌと同じ強さだという事は、カレンやアン姉ちゃんより、弱いという事だし、勿論、エドソンより弱い。

 下手するとコナンやシスより弱いのだ。


 まあ、イーグル辺境伯の血筋と、グラスホッパーの血筋がヤバ過ぎるだけなんだけど。


 なんかよくわかんないが、とても勇者が不憫に思えてしまう、ヨナンであった。

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