第173話 カレン・イーグルVSハツカ・ナナ・グラスホッパー

 

 今回のカララム王国剣術祭は、学園最強を決める大会から、カララム王国最強に決める大会に変わり、参加者が増えた為、2日間に渡って行われる。


 そして、明日の準決勝はクジ引きで、

 エドソン対アン姉ちゃん、カレン対ナナの対戦が決まった。


『ご主人様、そわそわしてますね!』


 鑑定スキルが、ナナの後を、隠れてつけてる俺に話し掛けてくる。


「そりゃあ、そうだろ! 相手は、あのカレンなんだぞ!そりゃあ、誰だって心配するだろ!」


 そう、カレンは、去年のカララム王国学園剣術祭の覇者。

 ハッキリ言って、無茶苦茶強いのだ。


『だからって、ナナさんをつけます?』


「そりゃあ、兄ちゃんとしては、物凄く心配するだろ?」


『あの、別に後をつけなくても、学園中に設置してある監視カメラと、僕って同期化してますから、ステータス画面みたいに、ナナさんの動向を、ご主人様の目の前に映し出す事できるんですけど?』


「そんな事、分かってるちゅーの!

 俺は、生ナナを見たいんだよ!」


『ご主人様、最近、勃起しなくなったからって、少し大胆になってません?』


「そんなの有るに決まってんだろ!俺は、ナナとお話ししたいんだよ!」


『だったら、話せばいいじゃないですか?

 きっと、ナナさん喜んでくれますよ!』


「分かってんよ! 分かってんだけど、俺には出来ねーんだよ!」


 俺は、鑑定スキルに思いの丈を伝える。


『どんだけ、ビビりなんですか』


「お前に、俺の気持ちが分かるかよ!」


 とか、話してる内に、ナナは女子寮に入って行ってしまった。


「オイ! 早く出せよ!」


『何をです?』


「だから、ナナの映像出せって言ってんだよ!」


『何なんですか! 結局、こうなる事わかってるんですから、最初から映像見とけば良かったんですよ!』


「うっせいやい! 俺は、ナナと同じ空気を吸いたいんだよ!兄妹水入らずの!」


『何ですかそれ?変態ですか?』


 鑑定スキルが、軽蔑した感じで言う。


「変態言うーな!」


『僕、鑑定スキルなんで、嘘言えないんです』


「だったら、口に出すな! 俺が傷付く!」


『まあ、今日は、明日の試合が控えてるんで、お風呂に入って、すぐに寝るみたいですよ。で、これから、ナナさんの入浴シーンも見ちゃうんですか?』


「いや見ない」


『見たい癖に』


「俺は、変態じゃないんだよ!」


 そんな感じで、次の日。


「準決勝第1試合、カレン・イーグルと、ナナ・グラスホッパーの試合を開始する!!」


 審判のグロリア先生の号令で、準決勝第1試合、カレンVSナナの試合が始まったのであった。


『ご主人様、始まりましたよ!』


 鑑定スキルが、話し掛けてくる。

 俺と鑑定スキルは、いつものように会場上空から観戦。


「ああ。お互い一歩も動かないな」


『お互いの力量を、測り合ってるんじゃないですか?』


「だな」


 カレンとナナは、お互い、木刀を持ち睨み合っている。


「アンタ、想像以上ね! 流石、ヨナンが養女にするだけの事は有るわ!」


 ナナが、俺の実の妹と知らないカレンが、ナナに話し掛ける。


 因みに、俺とナナが実の兄妹と知ってるのは、俺と、エリザベスと、ビクトリア婆ちゃんと、コナンと、シス、それからエリスぐらい。一応、リサリサやグリズリー公爵も知ってる筈だが、それだけ。


 口が軽そうな、カレンやイーグル辺境伯には教えてないのである。


「カレン先輩も強そうですけど、私は、お義父さんの為にも負ける訳にはいかないので!」


 どうやら、ナナは、カレンに更々負ける気がないようである。

 というか、俺の為?ちょっと嬉しい。

 多分、グラスホッパー伯爵家の名声を落とさない為に、頑張るという事だろう。


「ハッ? アンタ、私に勝つ気なの?

 悪いけど、私も、ヨナン以外の人間に負ける気ないんだけど!」


 カレンは、ナナの言葉にカチン!と来たようだ。


「私も、お義父さん以外に負ける気ないですから!」


 カレンのヤバ過ぎる殺気を、モロに受けているというのに、ナナも全く引かない。


『ご主人様! なんか、カレンさんと、ナナさんが、ご主人様を取り合ってますよ!』


 何故か知らないが、鑑定スキルが興奮してる。

 俺的には、どちらにも怪我して欲しくないんだけど……なんか、もう無理そう。

 カレンなんか、怒り過ぎて、体から炎が出ちゃってるし。


 そして、カレンは怒りに任せて、ナナに突撃する。


 しかし、ナナは、それを見極めて、ヒョイと、躱す。


『ご主人様、ナナさん速いですね!』


「ああ。何せ、大森林の木で作った木刀使ってるからな!

 俺が、その辺の小枝を持った時ほどのスピードは有るな!」


 俺は、冷静に分析する。


「チッ! まるでヨナンと対戦してるみたいね……動きが似すぎてる……」


「それほどでも」


 なんか、ナナが照れている。

 もしかしたら、俺に似てると言われて照れてるのかもしれない。


「だけれども、似てるだけで、ヨナン程じゃないわ!」


 カレンは、スピードを上げてラッシュをかける。

 伊達に、カレンは、素早さLv.1を持ってる訳ではないのだ。

 ハッキリ言うと、カレンはスピードスター。

 まあ、コナンや俺ほどじゃないのだけど。


 カキン! カキン! カキン!


 カレンのスピードが上がった為、ナナは躱しきれずに、木刀でカレンの剣撃を受け止めるしかない。


 しかし、身体強化Lv.3を持つ、カレンの剣撃は滅茶苦茶重いのだ。ナナが作った大森林の木刀でも持て余す程に。


「カレン先輩、想像以上です」


「アンタも、私の本気の攻撃を受け止めてるから、相当よ!」


 なんか知らんが、2人は認め合ってるみたいだ。


「だけれども、すいません。私、絶対に負ける訳にはいきませんので!」


 ナナは、空いてる左手を、魔法の鞄になってるポケットの中に入れる。


 そして、もう1本の大森林の木で作った、木刀を取り出したのだった。


 ナナの反撃始まる。

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