第156話 野営訓練2日目

 

 野営訓練2日目。


 ついに、ナナ班が動き出す。

 狙うは、ナナの拠点の城から一番近くにあるBクラスの班。


 因みに、このBクラスの班は、昨日の夜中に、ナナ班の拠点に夜襲を仕掛けて来たのだが、難なくナナが作ったトラップに引っかかって、勝手に4人再起不能になってたりしている。


 でもって、攻撃を仕掛けるのは、ナナとカイ・ホークのみ、ハッキリ言うと、Bクラス程度は、この2人だけで過剰戦力だったりする。


 既に、上空からサクラによって、敵全員の居場所は把握されており、後は、ナナとカイ・ホークが突入して斬り裂くだけ。


 因みに、ナナの得物は、普通の木刀。


「大丈夫か?」


 俺は、ナナが戦闘をするというので、気が気でない。


『余裕でしょ!』


 鑑定スキルは、全く心配してない。


 とか、話してるうちに、


 スパン!スパン! スパン! スパン!


 ナナは、涼しいか顔で、Bクラスの班の生徒を斬り裂いてしまっていた。


「なんか、ナナ、ものすげーぜ!」


 俺は、ナナの鮮やかな太刀捌きに、見惚れる。というか、物凄く格好良い。

 まさに、達人。


『当然ですよ! ナナさんも、土木スキル持ってるんですから!

 ご主人様の大工スキルと比べちゃうと、相当落ちますが、、土木スキルも、ドワーフ族憧れのスキルと言われてるんです!

 大工スキルが、この世界に発現したのは、ご主人様で2度目。

 そして、ナナさんの土木スキルだって、500年に1人出るかどうかの貴重な激レアスキルと言われてるんですから!』


「俺の妹は、物凄いんだな」


『そりゃあそうですよ!土木スキルって、メチャクチャ扱いにくい大工スキルのアップデート版ですから!

 使い勝手は、大工スキル以上です!』


 なんか、鑑定スキルが、鼻高々に知識をひけらかす。というか、アップデート版?


「何、それ? 初耳なんだけど……」


『ハイ。言ってませんでしたから。大工スキルって、あまりにトンデモないスキルなんで、女神ナルナー様が、新たに大工スキルの性能を落として、使い勝手の良い土木スキルを産みだしたんですよ!

 なので、ずっと大工スキルって、女神ナルナー様は、誰にも与えてなかったんです!

 それなのに、ご主人様が、創造系の一番凄いスキルを寄越しやがれと、女神ナルナー様を脅して、封印されてた、大工スキルを強奪しちゃったんです!』


 なんか、また、初耳。


「え? 俺、そんな事してないけど……」


 俺は、女神ナルナーを脅した記憶など、全くないし。


『本来、異世界転生者は、女神ナルナー様から渡されたスキル本に載ってる、スキルの中から、貰うスキルを選んでるんです!

 だけれど、ご主人様って、いきなり、女神ナルナー様に、【リターン0】の死に戻りスキルを寄越しやがれ!って、駄々を捏ねたじゃないですか!』


「うん。した」


 そう、俺はもし、トラックに引かれて異世界転生する事となったら、絶対に【リターン0】の、何度も死に戻り出来るスキルを、ゲットしようと心に決めていたのだ。


『そして、そんなスキルがそもそも存在しなかったので、新たに、ナルナー様が、異世界転生特典である、記憶を持ったまま異世界に転生できる特典を改造して、新たに、1回こっきり、この世界で死に戻りした時、地球の記憶を思い出すスキルを作って、ご主人様に授けたんです!』


「確かに、俺は、女神ナルナーに頼んで、新たなスキルを作らせたけど、それの何が問題なんだ?」


 ヨナンは、首を捻る。

 だって、今の話に、大工スキルの話など、これっぽっちも出て来ないし。


『そして、次に、ご主人様が、女神ナルナー様に頼んだのは、これまた、ご主人様が大好きだった【スラスラ転生】に出てくる喋る鑑定スキルが欲しいと言って、鑑定スキルと念話スキルを合体させた、新たな鑑定スキル。そう、この僕を、女神ナルナー様に作らせたんですよ!』


「お前って、女神ナルナーが、新たに作りだしたスキルだったのかよ?!」


『だから、何度も、鑑定Lv.2に至った人間は、誰も居ないて言ってますよね!

 そもそも、鑑定Lv.2って、存在しないスキルだったんですから!

 なので、普通の人は、鑑定+3とかの表記なんですよ!』


「で、大工スキルは、何で貰えたんだ?女神ナルナーは、そもそも封印してたんだろ?」


 中々、大工スキルの話が出てこないので、俺は痺れを切らし、鑑定スキルに質問する。


『ご主人様、本当に、覚えてないんですか?

 ご主人様は、これだけ我儘を言った後、街作りとか憧れるから、一番凄い創造系のスキルを渡しやがれ!て、女神ナルナー様に言ったじゃないですか!』


「うん。言った」


『だけれどもそれまでに、ご主人様が、女神ナルナー様を酷使して、新たなスキルを2つも作らしていたんです!

 その時点で、女神ナルナー様は、とても疲れてクタクタだったんですよ!

 基本、あの人、ぐーたらですから!

 そして、もう、面倒臭くなって、封印してあった大工スキルを、どうにでもなれと、ご主人様に渡しちゃったんですよ!

 間違いなく、大工スキルは、創造系で一番トンデモないスキルですからね!』


 どうやら、女神ナルナーは、俺の相手が面倒臭くなって、封印してた大工スキルを俺に、やっつけで渡してしまってたようだ。


「そんなの、ただの女神ナルナーの怠慢だろ?

 面倒臭くなったとか、俺の知ったこっちゃないんだけど?」


『あの、分かってます。女神ナルナー様に命令して、新たなスキルを作らせたのって、今迄の歴史上、ご主人様、ただ一人だけなんですから!

 普通、女神ナルナー様に命令する人なんかいないから、初めての経験で、よく分からなくなった女神ナルナー様は、思わず、ご主人様の言いなりになってしまったんですよ!

 普通、誰もが、渡されたスキル本を見て、スキルを選んでるんですから!』


「そんなの、あんなに分厚い本の中から、お目当てのスキル探すなんて不可能だろうがよ!

 俺は、欲しいスキルが明確に決まってたから、直ぐに、女神ナルナーに質問しただけで、他意は無かったんだけど」


 俺は、必死に言い訳する。

 だって、普通、欲しいスキルあったら、聞くだろ?まあ、無かったから、少し、駄々は捏ねたけど。


『他の異世界転生者の人達は、自分が貰ったポイントと睨めっこして、必死に、どのスキルをゲットすると、一番得か考えてるんです!』


「ん?スキルゲットするのに、ポイントなんか必要だったのかよ?」


 俺は、全くポイントの事など、女神ナルナーに聞いてない。

 というか、女神と遭遇した時点で、質問攻めしてた気が……異世界特典のレアスキル貰えるのか?とか、死に戻りスキルあるのか?とか。


 良く考えたら、俺は女神ナルナーに、殆ど喋らせてなかった……


『必要に決まってるでしょ! それが、ルールなんですから!』


「そうだとしたら、俺って、どう考えてもポイント越えてんじゃねーのか?

 元々存在してない、死に戻りスキルと、喋る鑑定スキルを作ってもらって、尚且つ、伝説のスキルの大工スキル貰った訳だから?」


 なんか、今更ながら心配になってくる。


『それが驚く事に、ご主人様って、殆ど、ポイント使ってないんですよね。

 そもそも、死に戻りスキルって、異世界転生者誰もが貰える、記憶を持ったまま異世界転生できる特典だから、ポイント0。

 でもって、喋る鑑定スキルも、鑑定スキル自体も、これまた異世界転生者特典で、異世界転生者なら誰もが貰えるスキルだからポイント0。そして、合体させた念話スキルは、それ程レアなスキルじゃないから、30ポイントでゲット出来ちゃいます!

 そして、大工スキルなんですが、これって本来、誰にも与えちゃいけない非売品のスキルだったので、そもそもポイント付いてないんです!

 なので、ご主人様って、異世界転生特典で、スキルポイント300ポイント貰ってるんですけど、念話スキルの30ポイントしか使ってないから、270ポイントも、実を言うとポイントが残ってたりします!』


 鑑定スキルから、まさかの事実を告げられる。


「えっ? もしかして、その使ってないポイントって、今でも使えちゃうって事か?」


『普通の人は使えませんね。そもそも、普通の人って、この世界に転生しちゃったら、女神ナルナー様に、もう会う機会無いですから!』


「俺、普通に会えるけど?」


 そう。俺は、普通に、女神ナルナーと会えちゃうのだ。一生懸命、女神ナルナー神社を全国に建ててるし。


『なので、ご主人様の場合は、普通にスキルポイント使えちゃいますよ!少し、美味しい物お供えして、頼めば、使ってないスキルポイント使わせて貰えると思います!』


 まあ、女神ナルナーなら、簡単にスキルをくれるだろう。リサリサに、毎日、お供え物を持って来てくれるからと、レアスキル上げちゃうくらいだし。


 なんか、鑑定スキルとのお喋りで、また、新たなスキルをゲットできると分かり、どうしても、ヨナンの顔はニヤけてしまうのであった。

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