第157話 ナナ班優勝

 

 ナナ班の快進撃は凄まじく、あれよあれよのうちに、全て生徒を倒し、2日目にして、完全優勝を成し遂げてしまった。


「俺の妹、メッチャ凄い!」


 俺は、感動のあまり、涙が止まらない。

 鼻水垂らしながら、テンション上がり過ぎて、空中浮遊する為に、手に持ってた聖剣ムラサメを、危うく手から落とししまいそうになる始末。


 もう、その時は、鑑定スキルが慌て過ぎて、『世界が終わっちゃうー!!』と、大絶叫してたし。


 その後、聖剣ムラサメを、上空40メートルの高さから落としようものなら、この惑星は、爆発して木っ端微塵になり、下手すると、俺達が住んでる惑星がある銀河まで消滅していたかもしれないと聞かされ、オシッコチビりそうになりながら、1時間程、鑑定スキルに、キツく説教されてしまった。


 兎に角、何が言いたいかというと、俺の妹は、カララム王国学園、野営訓練始まって以来、たった2日間で、全ての生徒を倒して、完全制覇の優勝を成し遂る偉業を達成したのであった。


「本当に凄い。伝説の勇者みたいに、たくさんの人達に称えられてるし。 俺は、ナナの兄ちゃんとして、とても誇りに思う!」


 俺は、鑑定スキルに怒られた後も、感動が止まらない。

 ビートル城塞都市での表彰式に出席するナナを見て、もう、感無量。


「ナナの晴れ姿を見れる時が来るなんて……死に戻り前、アスカに奴隷にされて、足の指を舐めさせられてる時なんかには、絶対に想像さえできなかったから、グス……」


『そりゃあ、たった2日間で、野営訓練を終わらせちゃったんですよ!

 誰が見ても、物凄かったし!

 ご主人様の大工スキルみたいに、凄すぎるせいで、誰にも見えなかったとかいうオチも有りませんし!』


 そう。確かに、ナナの戦いは、普通の人にもなんとか見えるレベルだったのだ。

 多分、これが大工スキルのアップデート版、土木スキルの性能なのだ。

 大工スキルのように、物凄過ぎて、誰も気付けないとかいう事がない。


『土木スキルは、全てが程々なんです。敢えて、人々が凄いと認識できるぐらいに、能力を落としてるんです!』


「俺も程々が良かった。そしたら、鼻糞ほじりながら、スネ毛で物を作らなくてもよくなるし」


『それは、ご主人様の自業自得です。女神ナルナー様に、一番凄い創造系のスキル寄越せと、駄々を捏ねたんですから!』


「だけれども、限度があるだろうがよ!

 こんなスキル、誰にも使いこなせねーよ!」


『いやいやいや。ご主人様は使いこなせてますよ!

 大工スキルって、そもそも、そういうスキルですから!

 何を持っても、極限にまで能力を引き出してしまうんですから!』


「だとしても、極限にも限度があるだろ!」


『だから、それが大工スキルなんですって!

 物凄いんですけど、余りに使い勝手が悪過ぎて、封印されてたスキルなんですから!』


「じゃあ、一生封印しとけよ!」


 てな、話をしながらも、粛々と表彰式は、進んでいく。


「カッカッカッカッカッカッ!ハツカ・グラスホッパーよ!

 此度は、並々ならぬ偉業の達成、大変素晴らしく思う!

 流石は、我が友、ヨナン・グラスホッパーの養女だわい!

 彼奴も、常軌を逸した強さだが、そなたもヨナン・グラスホッパーに引けを取らぬ強さであった!

 そなたの偉業を称え、準男爵の爵位をやろう!

 今後も、カララム王国の臣下として、精進するように!」


 アレキサンダー君は、ご満悦。使えるコマがまた1人、増えたとでも思ってるのだろう。

 早速、取り込む為に、爵位まで与えちゃってるし。

 というか、ハツカは、俺の養女であるのだけど、一応、ココノエの護衛で、アンガス神聖国の人間という事になってるので、爵位で、カララム王国に縛る作戦なのだろう。


「有り難き幸せ。しかしながら、私は養父ヨナン・グラスホッパーの養女。

 勝手に、カララム王国の爵位など貰う訳にはいきません!」


 どうやら、根が真面目なナナは、準男爵の爵位を貰うにしても、俺の了解を取ってからと、アレキサンダー君に伝える。


「カッカッカッカッカッカッ! 養父、ヨナン・グラスホッパーしかり、養女までも、儂に平気で口答えするか!

 今迄に、儂に面と向かって口答えしたのは、ヨナン・グラスホッパーと、ハツカ・グラスホッパー。お前達2人だけじゃ!

 まあ、貴様は、我が友、ヨナン・グラスホッパーの養女だから、今回は不問にするが、これからは口にする言葉には気を付ける方が良かろう。誰しも、儂のように話が分かる人間ばかりでは、無いからのう!」


 アレキサンダー君は、ハツカをギロリと睨み付ける。


『ご主人様! 堪えて下さい! 何、アレキサンダー君に向かって、聖剣ムラサメを振りかぶってるんですか!』


 アレキサンダー君に、ナナを虐められた事により、我を失ってしまった俺を、鑑定スキルが必死に止める。


「例え、この国の王であろうと、俺のナナを虐める奴は、叩き斬ってやる!」


『ご主人様が、聖剣ムラサメで、本気で斬っちゃったら、世界が消滅しちゃうので、絶対に止めて下さい!

 せめて、折れた爪楊枝か、なんかで、アレキサンダー君を斬って下さい!』


「斬っていいのかよ?」


『僕も、アレキサンダー君より、ナナさんの味方ですから、アレキサンダー君を斬っても問題無いです!』


 鑑定スキルは、どこまでも俺ファースト。

 イザという時は、絶対にを俺の味方になってくれるのだ。

 普段は、俺の事を思って小言も多いが、本当に、イザという時だけ。


『あの……ご主人様の心の声、いつも言ってるように、ダダ漏れなんですけど……

 僕は、いつでもご主人様ファーストですから!

 今回も、別にアレキサンダー君ぐらい殺しちゃってもいいと言ってるだけで、そもそも、ご主人様にとっては、世界征服も簡単だと言ってるだけですから!』


「確かに、聖剣ムラサメ一振で、この惑星を破裂させる力を持ってる時点で、俺は、この惑星最強だもんな……もう、神越えてるじゃん」


『今更ですよ! 実際には、この惑星がある銀河ごと破壊出来る実力がありますから、この惑星が、所属する銀河の神と言っても差し支え有りません!

 だって、この銀河の生存与奪権を、ご主人様が全て握ってる訳ですから!』


「俺って、そんなに凄い存在だったのか?」


『今更、気付いたんですか?』


 鑑定スキルが、呆れながら質問する。


「うん。今、知った!」


『まあ、ご主人様にとっては、今回、アレキサンダー君に罰を与えるついでに、この惑星自体を破壊する事も、些細な事かもしれませんが、そんな些細な事で、毎回、惑星を破壊してたら、そのうち人が住める惑星が、いくら有っても足りなくなる事は、理解しといて下さいね!』


 なんか、鑑定スキルの話を聞いてたら、些細な事で、キレる癖を治さなければと思うヨナンであった。


 だって、人が住める惑星を探すのって、大変そうだしね。


ーーー


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