第146話 野営訓練前日談

 

『ご主人様! やりましたよ!ナナさんの班に、ご主人様の騎士であるアイ・ホークさんの弟のカイ・ホーク君を潜入させる事に成功しました!』


 鑑定スキルが、嬉しそうに話し掛けてくる。

 完全に、俺以上に、ナナを野営訓練で優勝させようと躍起になっているようだ。

 というか、アイ・ホークに弟いたんだ。


『全く、自分のとこの寄子の情報知らないんですね?』


 鑑定スキルが、俺の頭の中を読んで勝手に会話をしてくる。


「ホーク男爵家って、イーグル辺境伯の分家だろ? 寄子と言っても、イーグル辺境伯の方が関わり深いだろ?」


『そうですけど、ホーク男爵家も、スーザンさんの実家のスパイダー騎士爵家も、今はイーグル辺境伯の寄子から、グラスホッパー伯爵家の寄子に移籍してますから!』


 知識をひけらかしたくて、説明好きの鑑定スキルが、端折って説明してくれる。


「で、その寄子のホーク家の跡取り息子のアイ・ホークの弟が、ナナの班に潜入成功したと?」


『です!』


 何故か、鑑定スキルはドヤ顔。

 スキルなので、本当にドヤ顔してるか分かんないんだけど。


「で、そのカイ・ホークだっけ?ナナを守るだけの実力は兼ね揃えてるのか?」


『イーグル辺境伯の分家筋ですからね!身体強化Lv.2を、持ってますね!』


 名前: カイ・ホーク

 スキル: 鷹の目Lv.1、剣術Lv.1

 ユニークスキル: 身体強化Lv.2

 力: 180

 HP: 210

 MP: 150


 鑑定スキルが、カイ・ホーク君のステータスを見せる。


「射撃スキル持ってねーのかよ!」


 カイ・ホーク君が、姉であるアイ・ホークが持ってた射撃スキルを持ってなくて、ヨナンはガッカリする。


『その代わり、剣術スキルを持ってます!』


「剣術スキルじゃ、鷹の目を活かせねーじゃねーか!」


『そんな、都合良くスキルはゲットできませんよ!

 解ってるんですか?この世界の殆どの人達は、ショボイスキルしか持ってないんですから!

 たまたま、ご主人様の周りは、上級貴族が多いから、みんなレアスキルもってますけど、殆どの人は、食器洗いスキルとか、指をポキポキさせるだけのスキルとか、しょうもないスキルしか持ってないんですから!』


「だったな……だから、女神ナルナーは、この世界の主神なのに、軽く見られてたんだった……」


 因みに、ただ、指をポキポキ鳴らすだけのスキルを持ってる人は、グラスホッパー商会の、低価格帯の居酒屋の用心棒として雇ってる。指をポキポキ鳴らしは、威嚇するのにもってこいだし。


『ご主人様、取り敢えず、僕に任せといて下さい!既に、カイ・ホーク君に誘導させて、ご主人様の王都の御屋敷で、ナナさんの班のメンバーを特訓する段取りは出来てますから!』


「また、アレをやるのか?」


『当然です! ハッキリ言うと、今回は、ご主人様の時より戦力不足です!

 まず、あの時は、ご主人様がチームに居た時点で勝ちは決まってましたが、今回は、そういう訳にはいきませんので!』


「照れるな」


 鑑定スキルは、嘘が付けないので、俺の事をストーレートに褒めてくれる。

 まあ、そういう所が、鑑定スキルの好きな所なんだけど。

 だって、俺って、褒められると伸びるタイプだし。


『まあ、ご主人様の力なら当然なんですけど。でも、今回は、ご主人様も居ませんし、ぶっ壊れスキルのスーザンさんの索敵Lv.4が使えないんです!』


「確かに、スーザンの索敵Lv.4が使えないのは辛いな……」


 本当に、野営訓練では、スーザンの索敵Lv.4のお陰で助かった。

 だって、スーザン、野営訓練中一睡もしないで索敵してくれてたし。


『ですね。前回は、スーザンさんが居たから、あんなに余裕で勝てたんです。

 どこに敵が潜んでるか分からないとなると、相当、こちらも消耗しますからね!

 実際、前回、ご主人様の班以外の班は、メチャクチャ消耗してましたから。

 だって、どこから矢が飛んでくるのか分からなかったんですから!』


「だな。室内に居ても、矢が、建物を貫通して飛んで来るって、チート通り越してるもんな……」


『です! 前回の作戦は、足が速いマリンさんと、鷹の目と射撃スキルを持ってたアイさんと、索敵スキルを持ってたスーザンさんが居て、初めて出来る戦術でしたから!』


「よし! だったら、ナナの班の面談だな!

 俺が直々に、スキルを調査してやる!」


 元々、やる気だったが、鑑定スキルの話を聞いてたら、俺もやる気になって来た。

 そして、前回同様に、ナナの班員の隠れた才能を引き伸ばしてやるのだ。


『あの……もう、僕が、ナナさんの班のメンバーのスキルは、全部調べてるんですけど?』


 鑑定スキルが、元も子もない事を言ってくる。


「バカヤロー! これは、ナナに悪い虫が付かないように、ナナの班の男子生徒に牽制する意味合いもあるんだよ!」


 そう。本当の俺の狙いはコレ。ナナにたかるハイエナ男子にプレッシャーを掛ける為。

 俺の可愛い妹に手を出したら、どうなるか分かってるよな。と


『なるほど、そういう事ですね! それなら僕も同意見です! 早速、段取りを組んでおきましょう!』


 てな感じで、1年生Sクラス、ナナ班の個別面談が始まったのであった。

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