第145話 野営訓練再び
ヨナンは、現在、実の妹ナナ宛の手紙を書いている。
自分の代わりに、九尾神宮を建ててくれた感謝の気持ちや、今は、事情があってナナに会えない事などをしたためて。
勿論、ナナと会うと勃起する事などは隠してるけど。
兎に角、やんごとなき理由があって、会えない事を書き綴ったのだ。
ナナに会ってしまうと、俺の命が関わるとか嘘まで書いて。
まあ、ナナに勃起した所を見られてしまったら、自殺するかもしれないので、本当に嘘だとは言えないのだけど。
取り敢えず、書いた手紙は、俺の騎士であるマリン・チーターに渡して、ナナに届けてくれるように頼んだ。
マリン・チーターは、瞬足Lv.3を持ってるので、一瞬にして届けてくれるだろう。
それだけ早く、ナナに手紙を渡したかったのだ。
だって、俺が、わざと避けてると思われるのが嫌だし。
ん?わざと避けてただろって?
うん。避けてた。
兎に角、全く悪気など無かったと伝えたかったのだ。そして、九尾神宮を建ててくれた事に対して、直接、お礼を言えない事を謝罪したかったのだ。
『その理由が、勃起なんですけどね!』
言わなくていいのに、わざわざ鑑定スキルが、俺の心を読んで突っ込んでくる。
鑑定スキルのお陰で、嘘が言えないイコール突っ込みだと言うことを、学んだ今日この頃。
「どうとでも、言いやがれ! 俺は、尊敬される、格好良いお兄ちゃんになりたいんだよ!」
そう。俺は、ナナにもコナンにもシスに対しても、尊敬される格好良いお兄ちゃんでありたいのだ。
『確かに、今、ナナさんのご主人様に対する尊敬の気持ちは、天にも届く勢いですけど、その尊敬する人が勃起して現れたら、尊敬の気持ちも、地の底のマントルまで届いてしまいますもんね!』
「くそー!」
俺は、鑑定スキルに、ディスられて悔しくて、悔しくて、悔しすぎて、思わず、勝手に手が動きだし、ササッとマントを製作してしまった。その時間、およそ20秒。
「よし!これでもしもの事があっても、マントで勃起を隠せるぞ!」
『流石、ご主人様! このマントさえあれば、もしもの時、ナナさんと会っても、勃起隠せちゃいますね!』
なんか、褒められてる気がしないが、これで、もしもの時も、何とかできる保険が出来た。
そう。俺は、どんなシュチュエーションに遭遇しても良いように、しっかりと下準備する男なのである。
そんな感じで時が流れ、新入生の1年生は、野営訓練の時期になる。
勿論、ヨナンは、ナナの実の兄として気が気じゃない。
だって、ナナは、本当はカララム王国出身だが、アンガス神聖国からの留学生として、カララム王国学園に入学したのだ。
それなのに、グラスホッパー伯爵家の養子とか、訳の分からない設定になってるのである。
しかし、ナナは、ヨナンの心配を余所に、上手くクラスに溶け込めていた。
まあ、俺が、ナナが自分の教室に居ない時を見計らって、ナナの同級生に菓子折りを渡したのが良かったのかもしれない。
しかも、温泉スパの1日券を10枚ほど付けて。
グラスホッパー商会の王都の温泉スパは、学生にとても人気があるのだ。
王都の温泉スパは、殆ど、学生の遊び場。
カラオケ、ボウリング、温泉プール、ビリヤード、卓球などが楽しめる施設になっている。
本格的な温泉を楽しみたいなら、王都から30分の距離にあるグリズリー公爵領の温泉スパに行けばいい。あっちの方は、完全に温泉パラダイス。同じ温泉スパでも、王都とグリズリー領ではコンセプトが違うのである。
そんな俺の努力もあって、ナナはクラスの人気者。完全に、グラスホッパー伯爵家の子供として扱われてるし。まあ、俺が持ってる大工スキルの劣化版の、土木スキルを持ってる事もあるのだけれど。
ハッキリ言うと、ナナは優秀なのだ。
多分、剣術の腕は、学年一。
だって、俺と同様に、剣を持てば、程々の力を発揮できちゃうのだ。
程々と言っても、俺の大工スキルに対しての程々なので、物凄い剣術の腕になってたりする。
俺の場合、木刀を持てば、物凄~く手加減しなければ、簡単に人を殺しちゃうレベルになっちゃうが、ナナの場合は、手加減して、人に大怪我させるレベル。
歯ブラシを持てば、俺の場合超音波歯ブラシになるが、ナナの場合は、普通の電動歯ブラシになる感じと説明すれば分かって貰えるかもしれない。
兎に角、ナナも、俺同様に、何か道具を持てば、メチャクチャ凄くなってしまうのである。
『ご主人様、スーザンさんが職員室を盗聴して得た情報なんですが、どうやら、1年生の野営訓練の舞台は、カララム王国最南端のビートル男爵領で行われるらしいですよ!』
「今回も遠いんだな」
『既に、マリンさんに視察に行かせてます!』
「仕事早いな」
『騎士の皆さんも、グラスホッパー伯爵家の皆さんも、グラスホッパー商会も、ご主人様の時同様に、絶対にナナさんを優勝させると張り切ってますから!』
「そうなの?」
『当たり前じゃないですか! ナナさんは、グラスホッパー伯爵家の大切なお姫様なんですから!それに、ご主人様の実の妹が、負けるなんて事、許されないんですから!』
「それ、誰の意見?」
『勿論、僕の意見ですよ!』
「ていうか、お前が、一番張り切ってんじゃねーかよ!」
『てへ、バレました?』
どうやら、鑑定スキルは、俺だけじゃなく、俺の実の妹ナナの事も、大好きであったようだ。
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