第144話 九尾神宮
寮に帰って、ナナへの手紙を書こうとしてたら、鑑定スキル経由で、エリザベスからすぐに、グラスホッパー商会グリズリー支店に来るようにと連絡を受けた。
「どうせ、稲荷神社建てろとか言うんだろ?本当に、エリザベスは人使い荒いよな!」
とか、ブツブツ言いながらも、ヨナンは空中を走り、僅か5分でグリズリー公爵領の上空に、到着する。
「えっ?!何で、稲荷神社がもう建ってやがんだ! 春休み前は、建ってなかっただろ!」
ヨナンは、ビックリしつつも、多分、エリザベスが居ると思われるビクトリア婆ちゃんの執務室に向かう。
そして、
「おい! どうなってんだよ!稲荷神社、もう出来てるじゃねーかよ!」
ヨナンは、自分が稲荷神社を建てさせられると思ってたので、エリザベスに尋ねる。
「フフフフフ。凄いの建ってるでしょ!」
エリザベスとビクトリア婆ちゃんは、ニヤニヤしてる。
「まあ、凄いと言ったら、凄いよな。どんだけ凄腕のドワーフ職人に頼んだんだ?
それも、こんだけの建物を短時間で建てた訳だから、相当数の職人も雇ったんだろ?
ケチで有名な、エリザベスと、ビクトリア婆ちゃんが、そんな金を掛けるなんて想像もつかないんだけど?だって、俺を使えば、タダで建てれる訳だし」
「あのね! ヨナン君!私とお母さんは、ケチじゃなくて、節約してるの! そこんとこ、言葉を間違えないでくれるかな!」
ケチと言われて、珍しく、エリザベスとビクトリア婆ちゃんがプンプンである。
見た目が同じ年齢にしか見えないから、仲良し姉妹にしか見えない。
「で? あの稲荷神社は、どう考えても、節約して建てたように見えないんだけど?
俺が建てたほどじゃなくても、あの建物は相当凄くて豪華だから、相当な金が掛かってるだろ?」
「と、思うでしょ!」
エリザベスとビクトリア婆ちゃんは、ニヤニヤしてる。これは、完全に何かを企んでる顔である。
「だから、この建物を、どうやって建てたかって聞いてるんだよ! どうせ、最近、儲かってるから、俺の負担を減らす為に、大盤振る舞いしたとか言うんだろ!
俺、貧乏性だから、そんな事じゃ、決して喜ばないんだからな!金が掛かるくらいなら、俺がタダで建てた方がいいんだよ!」
『結局、エリザベスさんやビクトリアさんと同じように、ご主人様もドケチなんですね!』
鑑定スキルが、ここぞとばかりに、ツッコんでくる。
「お前、言い方! ケチじゃなくて、節約と言え!
で、結局、どうやって建てたんだよ!」
「フフフフフ。ヨナン君、泣かないでよ」
エリザベスは、勿体付けで話してくる。
ていうか、俺が泣くの前提かよ。
俺は、人の良いエドソンと違って、泣き虫じゃないっての。
「誰が泣くかよ! どうせ、俺の負担を減らす為に、ドワーフに外注出しただけなんだろ!
確かに、それは嬉しいが、だけど、無駄金を使う方が俺は嬉しくないんだよ!
俺が建てればタダなんだし!商会の出費は、俺の出費みたいなもんだし!」
そう。だって、俺が頑張れば、全てタダなのだ。結局、グラスホッパー商会は、俺の商会なんだから、グラスホッパー商会の出費は、俺の出費とイコールなのである。
「フフフフフ。グラスホッパー商会の出費は、なんと0よ!」
エリザベスが、何故か勝ち誇った顔をして、たわわな胸を、プルン!とさせる。
「そんな事、ある訳ないだろうが!というか、そんな事出来るの、俺しか居ないだろうがよ!」
「それが、実は1人だけ居るのよね!」
エリザベスが、勿体ぶる。
「そんなスキル持ってる奴、うちの商会に1人も居ねーだろ?
建築系のスキル持ってる奴でも、流石に、春休み中の2週間やそこらで、あの稲荷神社は建てれないだろ?」
「そうね。今迄は居なかったわよね。だけど、つい最近現れたのよ。ヨナン君と似たスキルを持つ人物が、そして、その人物が、ヨナン君の役に立ちたいと、自ら立候補して、この九尾神宮を建てくれたのよ!
それも、僅か1週間で!」
エリザベスが、想像を越える事を言ってきた。
「嘘だろ? これだけの建物を、たった1週間で? 俺でも、まる1日は掛かるだろ……」
『ご主人様、その言い方だと、この九尾神宮を建てた人が、しょぼく感じますからね。
普通、これだけの大きく立派な建物建てるのに、最低でも、3年は掛かると思います!』
鑑定スキルが、すかさず、得意の知識をひけらかす。
「だから、そんな奴、今迄居なかっただろ!そんな奴が居たら、俺、もっと楽できた筈だし!」
「そう。今迄居なかった人よ。そして、ヨナン君や、エドソンや、私や、グラスホッパー商会の全ての力を使って、全力で探してた人が、ヨナン君の役に立ちたい一心で、この凄い九尾神宮を、1人で建てちゃったのよ!」
「えっ……まさか……」
ヨナンは、あまりに驚き過ぎて言葉がでない。
だって、その人物とは、ヨナンが知る限り1人しか居ないから。
「そのまさかよ! ヨナン君の、実の妹であるナナちゃんが、貴方への恩に報いようと、一生懸命、この九尾神宮を、1人で建てちゃったのよ!」
「ナナが、俺の為に……」
もう、ここまで来ると、ヨナンは涙が止まらなくなってしまってる。
「そうよ! ナナちゃんは、ヨナン君の為に、この立派な九尾神宮を建てちゃったのよ!
本来なら、殺されてもおかしくなかったココノエさんを許し、しかも保護までしたヨナン君の恩に報いる為にね!」
何故か、エリザベスとビクトリア婆ちゃんも泣いている。自分達が、サプライズ演出してた癖に。一体、何なんだろう。
『それから、ご主人様が、ナナさんを養子にして、チヤホヤしてる恩も有ると思います!
ナナさんは、ご主人様が、自分の本当のお兄ちゃんである事を知らないから、とても、困惑してしまってるんですよ!
なので、それに報いるには、相当なことを何かしなくちゃならないと物凄く考えて、九尾神宮を、ご主人様の為に、ご主人様の負担を少しでも減らす為に、建てたんだと思います!』
鑑定スキルが、ここぞとばかりに被せてくる。
「グスッ……俺って、もしかして……ナナにストレス感じさせてたのか……」
『そうですよ! ナナさんは、どうやら、ご主人様に大恩を受けたと勘違いしてます。ご主人様は、ただ自分がやりたい事やってるだけなんですけど。
そして、ナナさんは、どうにかしてご主人様に、お礼をしたいんですよ。
ナナさんは、ご主人様に返しきれない程の恩を受けてしまってると、勘違いしてる訳ですから!』
「俺は、どうすればいいんだよ!」
『だから、ナナちゃんに直接会って、向き合えばいいだけですって!』
「そんなの無理に決まってるだろ! ナナを目の前にしちゃうと、ナナが、トップバリュー男爵に犯〇れる場面が頭にチラついて、思わず勃起しちゃうんだから!」
俺は、思わず、エリザベスにも内緒にしてた事実を、感情が昂り過ぎて、思わずポロリと、口から吐き出してしまう。
「「プッ!」」
「あの……ヨナン君……まさか、頑なにナナちゃんに、自分が実の兄だと告白しないで、逃げ続けたのって、そんなしょうもない理由だったの?」
エリザベスとビクトリア婆ちゃんが、泣き笑いしながら、お腹を抱えてる。
「俺にとっては、とても重要な事なんだよ!
だって、考えてもみろよ!
いきなり、実の兄貴だと知らされて、その兄が、自分を見て勃起してたら!
俺だったら、幻滅するね!」
「確かに、幻滅するわね。笑っちゃ悪いとは思うけど、やっぱり、プッ!」
どうやら、エリザベスとビクトリア婆ちゃんによる、ヨナンを泣かせてやろう計画は、ヨナンのおバカ過ぎる告白によって、笑いで掻き消されてしまったのであった。
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