第140話 ヨナン、尊厳を守る為に、箝口令をひく
シスも連れて、グラスホッパー男爵領に里帰りすると、相も変わらず、エドソンとコナンが、剣の修行をしていた。
「うりゃあああーーー!」
カキン! カキン! カキン! カキン!
「打ち込みが、甘いぞ!」
『あの……コナン君も、エドソンさんも、空中に飛んでますね……』
鑑定スキルが、ポカンと、口を開けて見てた俺に話し掛けてくる。
「だな……多分、カララム王国剣術祭で、俺やアン姉ちゃん達が飛んでるの見て、やってみたくなっちゃったんだな。
まあ、あの時点で、既にコナンは、空中浮遊会得してたし……」
『やっぱり、エドソンさんも、とんでもない戦闘センス持ってたんですね……』
「だな。大戦の英雄という肩書きは、伊達ではないという事だな……」
とか、話してると、
「おっ! ヨナン! 帰って来たか! シスも一緒かよ!」
エドソンが、俺達を発見すると、嬉しそうに空から降りて来た。
「ああ! ただいま」
「ヨナン兄ちゃん! 久しぶり!」
コナンも、空から降りてくる。
「おお! 久しぶりだな!」
俺は、コナンの頭をワシワシと撫でてやる。
「私も、なでなでして!」
何故か、シスも便乗しようとする。
まあ、2人ともお子様なので、撫でてやるんだけど。
「飯食ってくよな! と言っても、グラスホッパー商会の温泉スパでだけどな!」
多分、エドソンは、毎日、温泉スパに入り浸ってるのだろう。アソコには居酒屋も温泉もカラオケまであって、基本タダだし。
「ああ! じゃあ、先に行っとく!」
エドソンとコナンは、稽古で汗ベトベトなので着替えてから合流する事となった。
でもって、温泉スパの居酒屋に行くと、既に、元『熊の鉄槌』のゴンザレスとリサリサが出来上がっていた。というか、この2人は、何時から飲んでたんだろう。
「アッ! ヨナン!久しぶり! アンタ、もっと信者増やしなさいって! ナルナー様が言ってたわよ!」
リサリサが、会うと早々に、女神ナルナーの神託(小言)を言ってくる。
「女神ナルナー神宮も建てて、グラスホッパー商会の全支部に神棚まで作ったから十分だろ?」
「十分じゃないわよ! 一応、毎日、ナルナー神宮に何万人も祈りに訪れるようになったから、1日、1分間だけこの世界に具現化できるようになったんだけど、1分だけじゃ、この世界の美味しいもの、ちょっとしか食べれないとか言って、駄々こねてるのよ!」
「1分で十分だろ? 俺にこれ以上、何させろって言ってんだよ?」
「全国に、女神ナルナー神社を作れとか言ってるわね……」
「全国って、俺が建てに行かなきゃならんのだろ?そんなの学生の俺には、無理に決まってんだろ?」
「兎に角、明日、大森林のナルナー神殿に行くわよ! アンタが来たら連れて来てって、キツく言われてるから!」
「物凄く行きたくないんだけど……」
ヨナンは、二の足を踏む。どうせ言われること分かってるので、物凄く行きたくない。
「アンタね。女神ナルナー様は、残念な人だけど、一応、この世界の主神なのよ!少しぐらい敬いなさいな!」
リサリサも、やっぱり、女神ナルナーの事を残念女神と思ってるようだ。
まあ、あんだけ食い意地の張った所を見せられれば、誰でも残念な人?神?だと思うだろう。
黙ってれば、超絶美人なのだが、喋るとボロが出る。
まだ、エリスの方が無口だから、女神ぽいと言えば、女神ぽい。
同じ顔してるんだから、エリスと入れ替わればいいんじゃないかと、本気で思うくらいである。
「というか、今回は、エリスは来なかったの?」
リサリサが、今更ながら、エリスが居ないことに気付いたようだ。
「ああ。妹のナナの警護を任せてる」
「ナナって、噂のアンタの実の妹だっけ?」
ほんの少しだけ、ナナの事情を知ってるリサリサが聞いてくる。
「まあな。だけど、エドソンにはナナの事、絶対に内緒だからな?」
俺は、ロリババアで、お喋りのリサリサに念を押しておく。
「あら?どうして?エドソンも、ナナちゃんの事、探してるんじゃなかったっけ?」
「ナナは、記憶を無くしてるんだよ。でもって、俺の事も、実の兄と知らないの。今、真実話しちゃうと、ナナが混乱してしまうかもしれんだろ?」
俺は、嘘を付く。だって、ナナと会うと勃起してしまうとか、絶対に言えないし。
「ふ~ん。そういう事なら、エドソンには言わないでおいてあげるわ!
エドソン、きっとナナちゃんが見つかったと知ったら、会いに行っちゃうと思うし。
そして、涙脆いから号泣して喜ぶ姿が目に浮かぶし」
「多分、喜ぶというか、号泣してナナに謝るんじゃないのか?自分がナナを迎えに行くのが遅かったばっかりに、奴隷商に売られてしまって申し訳なかったって!」
そう、エドソンは、そういう男なのだ。
自分のせいじゃないのに、結構、気にするタイプなのである。俺に、必要以上に優しくするのも、ナナを助けれなかった贖罪の気持ちもあるかもしれない。
「なら、やっぱり、早くエドソンに教えて、安心させてあげた方がいいんじゃない?」
リサリサが、とんでもなくアホな事を言ってくる。
「いやいやいやいや! 本当に駄目だから!
ナナは、元敵国の女王の片腕だったんだぞ!
もし、俺が駆け付けるのが遅かったら、イグノーブル城塞都市は、陥落してたかもしれないし、しかも、イーグル辺境伯領は、俺の許嫁のカレンの実家で、カレンの爺ちゃんのイーグル辺境伯まで殺してたかもしれなかったんだ!
そんな、悲惨な未来になってたかもしれないのに、ナナが、俺の実の妹だったと知ってしまったら、きっとナナは、癪罪に気持ちに押し潰されると思うんだよ!
きっと、そう。俺だったら自殺しちゃうね!」
俺は、必死に、リサリサがエドソンに話すのを思いとどまるように誘導する。
俺が、ナナに変態兄貴だと思われることは、絶対に避けなければならないのだ。
勃起兄貴だと知られたら、俺、本当に自殺しちゃうかもしれないし。既に一度してるから、やり方知ってるし。
「それなら、やっぱり、エドソンには言わない方がいいわね」
どうやら、リサリサは諦めてくれたようだ。
それにしても、本当に危ない所だった……。
エドソンに、ナナの事など伝えたら、俺が実の兄貴だと、秒でバラされてしまう。
基本、エドソンは良い人過ぎて、嘘が言えない性格なのだ。
絶対に、俺の事を、実の兄だと言わないでと口止めしても、秒でバラしてしまうと断言できてしまうのだ。
エドソンには、腹芸は無理。
今でも、腹芸が必要な貴族との交渉ごとは、全てエリザベスやセント兄に任せてるぐらいだし。
とか、冷や汗を垂らしながら、リサリサと話してると、
「よお! 待たせたな! て、ゴンザレスもリサリサも、出来上がってるじゃねーかよ!」
エドソンと、コナンが着替えてやってきた。
「アンタ、遅いのよ!てか、アンタ達、超汗臭いわよ!」
リサリサが、鼻をつまむ。
「えっ? 一応、着替えてきたんだぞ?」
「アンタ、自分がワキガだって気付いてないの?」
「嘘だろ! 俺は無臭だって!」
エドソンは、慌てて自分の脇をクンクンする。
「兎に角、とっとと温泉で、汗を流してきなさいって!」
まあ、そんな感じで、温泉まであるグラスホッパー商会の慰安施設で、ヨナン達は、温泉入って、食って、飲んで、ボウリングして、大満足に楽しんでから、寝たのであった。
温泉スパ、本当に最高! 飲んで、遊んで、泊まれるって、本当に便利な施設だよね!
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