第141話 残念女神様
次の日、リサリサに叩き起されて、世界樹のハイエルフの里にある女神ナルナー神殿に連れてこられた。
昨日、夕食を一緒に食べたメンバー達は、一応、世界樹と女神ナルナーの事を知ってるのだが、直接、女神ナルナーに会えるのは、俺とリサリサだけらしい。
まあ、これは、世界樹と女神ナルナーの事を外部に漏らさない為の措置で、唯一、世界樹の里に行った事がある、俺とリサリサだけしか、世界樹のハイエルフの里に来てはならないと、女神ナルナーとレッドドラゴンが相談して決めた事なのだ。
本来は、俺しか金輪際、誰も世界樹に近づいてはならないという話だったのだが、残念女神が、この世界の美味しい物をたくさん食べたいと駄々を捏ねて、リサリサが、美味しい物を運んでくるお供え係として選ばれたとか。
本当に、聞けば聞くほど、女神ナルナーは残念過ぎる。
女神ナルナーの神殿に到着すると、リサリサが供物をお供えする祭壇?もはや、普通のテーブルに、お供え物の甘味を山ほど乗せる。
そして、手を合わせて、
「女神ナルナー様、今日のお供え物を持って参りました!」
と、女神ナルナーに祈りを捧げると、
「フム。リクエストどうりの物を持ってきてくれてるようね!」
と、女神ナルナーは、この世に具現化されて、そして、脇目もふらず、全速力でリサリサがお供えした甘味を食べ始めた。
というか、俺の存在、完全にスルーされてるし……
まあ、1分間しか、この世界に具現化出来ないので、女神ナルナーも必死なのかもしれない。
しかしながら、たった1分間でリサリサが持ってきた全てのお供え物を食べれる筈はない。徐々に、女神ナルナーが薄くなってきて、そのままお供え物を食べきれずに消えてしまった。
女神が、甘味を食べながら消えるって、本当に威厳もクソもあったもんじゃない。
「悔しいー! またも、全部、食べきれなかった!」
なんか、神託として、女神ナルナーの声が天から聞こえてくる。
何処までも残念女神。
「リサリサ! 次は、シュークリームと、グラスホッパー商会の季節の限定スゥィーツは、絶対に用意しといてよね!」
女神ナルナーは、必死に次のお供え物をリクエストする。
やっぱり、俺、完全に忘れされている。
というか、甘味に夢中過ぎて、俺の存在、目に入ってなかったし。
という事で、俺は呼ばれて、ちゃんと来たので帰ってもいいよね。
だって、目の前に居たんだし、気付かなかったナルナーが悪いんだし。
「そういえば、ナルナー様。私、ちゃんとヨナンを連れて来ましたから!
ご褒美に、前に言ってた、甘くて美味しいフルーツが、早く育つスキルを下さいませ!」
このロリババア、裏切りやがって、というか、女神ナルナーにスキルをねだるなんて、どんな罰当たりな奴なのだ?
「本当だ!ヨナン来てくれたんだ!じゃあ、約束通り、リサリサに、甘くて美味しいフルーツが早く育つスキルを上げちゃいましょう!」
「ははー。有り難き幸せ!」
俺は、一体、何を見せられてるのだろう。
スキルって、そんなにホイホイ上げていいものなのか?
俺が、異世界転生して貰ったレアスキルって一体、なんなんだったの?
結構、勿体ぶって、転生特典だとか言って、女神ナルナーはくれたよな。
異世界転生特典のレアスキルは、そうそう普通の人には上げれないスキルだって。
「オイ!糞女神! そんなにホイホイスキルやっちゃあ、駄目なんじゃねーのか!」
俺は、少し注意してやる。例え、この世界の創造神であっても、駄目なものは駄目なのだ。
「何言ってるの!私だって、そんなにホイホイスキルなんて上げないわよ!
だけれども、リサリサは特別なの!
だって、毎日、私にお供え物持ってきてくれるんだから!」
「お前、そんな理由かよ! そしたら、世界を滅ぼす魔王が、お前に甘味をお供えしたら、お前は、ホイホイスキルやるのかよ!」
「私だって、ちゃんと人を見るわよ!」
「人を見るって、こいつ、ただの強欲ロリババアだぞ!」
「強欲ロリババアでも、私にとっては、美味しい甘味を持って来てくれる天使なの!」
何を置いても、食欲が勝ってしまう残念女神には、何を言っても無駄なようだ。
「俺、もう帰るから!」
「あっ! ちょっと、待ちなさいよ!世界中に、女神ナルナー教の神社を建てるのよ!」
何か言ってるが、無視無視。
俺は、とっとと帰る事にした。
だって、女神ナルナーとは建設的な話が出来ないし。こんな残念な女神に縛られてる、レッドドラゴンとハイエルフが可哀想になってきた。それと、スパイダーデスも……
俺が、偶発的に女神の使徒にしてしまった、スパイダーデスだけには、帰りに、贖罪の気持ちを込めて、美味しいものを、たらふくプレゼントしてやった。
だって、地球の母親も、朝蜘蛛は神の使いだから殺しちゃ駄目と言ってたし。
益虫なので、世界樹に近づいてきた悪い虫を食べてくれると思うし。
何か、スパイダーデスが、やたらと可愛く思えるのは何でだろう。もしかしたら、前世で関係があったかも?
まあ、そんな事を思いながら、世界樹を後にした。
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