第131話 イーグル辺境伯領VSアンガス神聖国

 

 アンガス女王ココノエは、最初に、アンガス王都にある城の補修を、ハツカに命令した。

 まあ、孤児院の教会を建て直したのを見れば、無難な命令であろう。


 アンガス城は、結構古く補修も必要だったので、軽い気持ちで頼んだのだが、なんと、ハツカは、たった1週間で、補修ではなく、城自体を建て替えてしまったのだ。

 しかも、最初の城より程々に豪華な城を。


 これを見て、アンガス女王ココノエは、黒目黒髪の可憐な少女ハツカの能力を改めたのだ。想像以上に凄すぎると。

 もしかしたら、1年以上も頓挫してた、アンガス神聖国と、カララム王国を結ぶトンネルを、ハツカなら、開通させてしまうかもしれないと。


 そして、失敗したら失敗したで仕方が無いと、軽い気持ちで、トンネル工事をハツカに頼んでみると、なんと、たった1ヶ月で、アンガス神聖国とカララム王国を結ぶトンネルを開通させてしまったのだった。


 ここからは、元々あった計画が加速度的に進む。


 そう、邪教徒が支配する、野蛮な奴隷制度があるカララム王国を滅ぼして、アンガス教を広め、差別のない、平和な国にという計画を。


 そして、それを成し遂げる為には、強力な武器や防具や攻城兵器が必要となる。


 その強力な武器や防具や攻城兵器の製作を、ハツカに依頼し、全ての兵士に行き渡させるのに、僅か2週間。


 もう、ここまで来ると、カララム王国に負ける気がしなくなってきてしまう。


 なにせ、ハツカの作った剣は、鋼の剣を軽く叩き折り、下手するとミスリルまで、真っ二つに斬り裂いてしまうほどの強度。


 鎧は、中級魔法ぐらいまでなら弾いてしまうし、ミスリルの剣で斬られたとしても、傷1つも付かないほどの頑丈な鎧。


 そして、攻城兵器である破城槌は、鋼鉄の城門を一発でぶち壊す威力を持ってるし、投石機は、飛距離と威力が、今迄の投石機の2倍の性能を誇っているのだ。



 そう。これほどの兵器を用意し、万全な計画でカララム王国に攻め込んだのだ。それなのに……


「なんでじゃ……なんでなのじゃ……あの城門は、鋼鉄の門を容易く破壊する破城槌をもってしても、ビクともせんし、今迄の2倍の性能を誇る投石機の攻撃も、跳ね返す。

 しかも、渾身の妾の魔法さえ跳ね返すじゃと……こんなの、おかし過ぎるじゃろ!

 3年前の戦争の時は、妾の巨大魔法で、城門を吹っ飛ばす事に、成功しておったのに……」


 そう、3年前の戦争では、奇襲に成功し、イグノーブル城塞都市の鋼鉄の城門を、ココノエの巨大魔法で破壊する事に成功していたのだ。


 まあ、しかしながら、そこで魔力切れを起こしてしまい、逆に、精強なイーグル辺境伯領の兵士にコテンパンにやられ、敗走したのだけど。


 そして、今回は、満を持して10万の兵士を連れてリベンジに来てたのである。


 それなのに、ココノエが城門に放った魔法がそのまま跳ね返り、既に、兵士数千人が負傷を負ってたりする。


 しかも、相手は全くの無傷。兵士1人も傷付いていないのである。


 イーグル辺境伯は、アンガス神聖国が10万の兵で攻めてくるのを確認すると、スグに籠城戦をすると決断したのだ。


 でもって、ココノエが巨大魔法を城門に放って、そのまま自ら率いる軍に跳ね返る様子を、城壁の上から望遠鏡で観察していたイーグル辺境伯は、ご満悦。


「カッハッハッハッハッ! 流石、婿殿が作ったアダマンタイトミスリル合金30センチの城門じゃわい!

 あの狐女の巨大魔法でも、ビクともせんし、逆に跳ね返して、敵にダメージを与えるとは、愉快愉快!」


 イーグル辺境伯に言わせたら、ヨナンに作ってもらった、およそ、10兆円の価値があると言われてるアダマンタイトミスリル合金の城門の性能を確認して貰えて、嬉しいぐらい。


 しかも、ついでにお願いして、イグノーブル城塞都市を囲う城壁に、アダマンタイトミスリルコーティングまで施して貰ってるので、城門ほどではないが、ある程度の物理攻撃や魔法攻撃など、簡単に弾き返してしまえるのだ。


 ハッキリ言うと、戦上手のイーグル辺境伯に言わせれば、戦う前から、既に、勝ち戦決定だったりする。


 確かに、現在、サラス帝国と緊張状態である為、カララム王国の主力戦力の殆どを、サラス帝国との国境付近に集結させてるので、増援は全く望めない。


 しかし、カララム王国には、現在、伝説の神獣レッドドラゴンを単騎で倒してしまえる実力を持つヨナン・グラスホッパーを、手中に収める事に成功しているのだ。


 しかも、そのヨナン・グラスホッパーは、イーグル辺境伯の可愛い孫娘の婚約者。

 黙っていても、助けに来てくれるに決まってるのである。


 もっと言うと、カララム王国は、まだ、大戦英雄エドソン・グラスホッパーまで温存してたりする。

 これには、実は理由があって、エドソン・グラスホッパーをも越える逸材になるかもしれない、幼いコナン・グラスホッパーを鍛える為だったりする。


 そう。既に、カララム王国は、イーグル辺境伯の報告を受け、コナン・グラスホッパーが、剣術スキルLv.2と、格闘Lv.2と、みじん切りスキルLv.3を持つ事を把握してるのだ。


 そんな理由で、大戦の英雄エドソンを、戦役に徴収するより、コナン・グラスホッパーの英才教育に使った方が良いと考え、現在に至ってたりする。


 まあそもそも、イーグル辺境伯が、カナワン伯爵を使って、グラスホッパー家に近づいてきたのも、グラスホッパー家の戦力を取り込む為だったし。

 あの時点でも、イーグル辺境伯は、カララム王国学園に入学してた、セントや、ジミーや、トロワや、アンの実力を把握してたし。


 それが、たまたまエリザベスという身内が居たからスムーズに行っただけなのだ。


 まあ、その事を、エドソンとコナンが、全く知らないのはお約束。

 難しい話は、エドソンにしてもしょうがないし、その辺の話は、全てエリザベスに通してあるので、エリザベスが上手いようにやってるのである。


 戦上手のイーグル辺境伯に言わせれば、ヨナンとエドソンさえ居れば、サラス帝国より戦力が劣るアンガス神聖国など、取るに足りない相手という事である。


 そんな事情もあり、イーグル辺境伯は、とっとと籠城を決め込み、高みの見物と洒落こんでいるのだ。


 優雅に、自らが経営するシャトーで生産した、シャトー・ロードイーグル1965を飲みながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る