第117話 カララム王国学園剣術祭

 

 アレクサンダー生徒会長代理に、こき使われて、1ヶ月。季節は秋。


 そう! 食欲の秋じゃなくて、カララム王国学園剣術祭の秋がやって来たのだ!


 俺は、校舎の建て替えやら、学園の広大な庭園の管理やら、そして、剣術祭の準備やらでせわしなく動き回っていた。

 だって、カララム生徒会長代理、経費削減とか言って、俺に全てやらせるんだもん!

 本当に、殺す気かよ!


 これだから、独裁国家の王様という奴は、タチが悪いと言われるのだ。

 だって、法律無視で、打首とか出来ちゃうんだよ! そんなの、従うしかないじゃん!


 てな訳で、俺はちゃくちゃくと剣術祭の準備を、1人っきりで進めてた訳だけど、今年の剣術祭は、多分、全く盛り上がらない。


 だって、去年の優勝者の剣鬼カレン・イーグルは、カララムダンジョンに籠ってるので不参加。

 そして、去年はバイトが忙し過ぎて参加してなかったが、剣鬼カレン・イーグルと同等の実力があると言われている、剣姫アン・グラスホッパーも出場しないのである。


 まあ、カレンと、アン姉ちゃんが、一体、どちらが強いのかと、カレン達がカララムダンジョンに籠る前までは、相当、学園内で盛り上がっていたのだが、今は、その話題もなりを潜めてしまっている。


 でも、今回は、カララムダンジョン完全攻略を成し遂げた、アレクサンダー君が参加するからそれなりには盛り上がると思うが、やはり、カレンとアン姉ちゃんには、華が有るのだ。


 だって、2人とも美人だし、モデル体型。

 男子にも女子にも人気があるし、2人とも女の癖にサバサバしてて男らしいし、身分も全く気にしない。

 まあ、ただ、強い者が正義と思ってる脳筋なだけなのだけど。


 ん?カレンやアン姉ちゃんは、置いとて、俺は出場しないのかって?


 バッキャロー! 出場なんか出来る訳ないだろ!

 その辺に落ちてる小枝持って、出場しろと言うのかよ!

 アレクサンダー君に対して、小枝で戦ったら不敬罪で打首にされるわ!


 てな訳で、俺は、剣術祭の実行委員として、裏方で参加する事になっている。


 そして、今回の剣術祭は、いつもと違う趣きの盛大な感じにしろとか、アレクサンダー生徒会長代理は無理難題を言いやがるのだ。


 そんなの無理だろ! 目玉のカレンと、アン姉ちゃんが出場しないのに! しかも、出場したら絶対に面白い、魔法の杖で敵をタコ殴りにするカトリーヌまで居ないのだ。一体、どうしろって言うんだよ!


 でもって、俺は考えたのだ。

 いつもは、1対1の勝ち抜き戦なのだが、今回の予選は、全校生徒全員参加のバトルロイヤル!

 適当に4つのグループに分けて、バトルロイヤルで勝ち抜いた者4人が決勝に残る形式にしてやった。


 出たく無い者も、全員参加。これは生徒会長代理が、アレクサンダー君だから出来る力業。

 だって、アレクサンダー君の命令は絶対に逆らえないし、逆らったら打首だしね!


 まあ、実行委員が俺しか居ないので、1対1の予選の全ての審判なんか出来ないし。


 でもって、俺は、4つの巨大な会場を急遽作ってやった。

 床は、アマダンタイマイミスリル合金。

 観覧席も、サッカー場みたいにして戦いを見やすくしてやった。


 勿論、本当のサッカー場のように巨大ビジョンも付けて、リプレイや、注目選手のアップ画面とかも映しだす。

 本当に、アレクサンダー生徒会長代理が、腰を抜かすぐらい盛大に!


 俺が本気を出したら、トンデモ無くなる事を教えてやったのだ!


 でもって、カララム王国学園剣術祭当日。


 カララム王国学園は、一般人にも解放されて、大勢の人達で賑わう。

 勿論、実行委員の権力を使って、グラスホッパー商会の出店もたくさん出している。


 まあ、出店も勿論だが、各スタジアムに併設されてるお店も、全て、グラスホッパー商会傘下の店ばかり。これでもかと、実行委員の権力を使ってやったのだ。


「ウフフフフ。ヨナン君。大繁盛ね!」


 出店の視察に来たエリザベスは御満悦。どこまで商売人なのだろう。


 エドソンも、カララム王国学園剣術祭に合わせて、王都に来てる。

 アン姉ちゃんは、カララムダンジョン攻略中なので出場出来ないが、代わりに、トロワ兄と、ジミーが出場するから。


 それから、今回は、剣術祭という事で、コナンも王都に来てる。


「ヨナン兄ちゃんは、出場しないの?」


 コナンは、不思議そうに、俺に聞いてくる。


「俺が出場しちゃうと、必ず優勝しちゃうからな! 流石に、一振で全員、倒しちゃったら、観客がつまらないだろ」


「なるほど! そういう事か! 流石、ヨナン兄ちゃん!」


 いつもの事ながら、俺に対するコナンの尊敬の眼差しが眩し過ぎる。


 この顔を見ると、兄ちゃん、もっと頑張らなくちゃと思ってしまうのだ。

 可愛い弟に、いつまでも尊敬されてたいしね。


 てな感じで、カララム王国学園剣術祭が開始される。


 ルールは至って簡単。4会場で、それぞれ最後まで立ってた者が決勝トーナメントに進めるのだ。


 会場には、国中から回復魔法士が集まってるから、怪我をしても問題無い。腕の欠損ぐらいなら治してしまうだろう。


 俺も、一応、世界樹の葉をポーションにして持ってるし。これで誰かが死んでしまっても、振り掛ければ生き返らせれる。

 デススパイダーの時のように、世界樹の雫を使わなくて良いようにね!


 ーーー


「それでは、カララム王国学園剣術祭、試合開始!!」


 いつものように、Sクラス1年生の担任のグロリア先生の号令により試合が始まる。


 4つの会場の選手分けは、しっかり考えていて、実力者のアレクサンダー君や、恋愛イチャイチャキングダムの攻略対象の人達、そして、俺の9人の騎士と、ジミーとトロワ兄がバランスよく振り掛けられている。


 ん?ジミーが実力者だって?


 まあ、一応、ジミーも学園では実力者になる。

 だって、剣術スキルLv.2を持ってるし。

 多分、トロワ兄より弱いと思うけど。


 俺は、家族の為に、ジミーとトロワ兄の会場を、同じ会場にしてあげた。

 だって、2人を別の会場にしちゃうと、エドソンもエリザベスもコナンも、全員、トロワ兄の会場に見に行っちゃうと思うし。


 これは、俺なりの優しさなのだ。

 これ以上、ジミーがひがんで闇堕ちすると、エドソンやエリザベスが悲しむしね。


 俺、グッジョブ!

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