第105話 アレクサンダー君の我儘無双

 

 アレクサンダー君が、カララム王国学園に編入してきてからというもの、俺は、アレクサンダー君に学園内を連れ回されている。


 なんか、友達だから、一緒に行動するのは当然じゃろ?とか言って。

 俺は、いつ、アレクサンダー君と友達になったんだ?

 俺は、気を使うのは嫌いなんだよ!


『まあまあ、アレクサンダー君も、学生になりたてで同学年に友達一人も居ないボッチですから、少しでも接点があったご主人様とは、喋り易いんじゃないですか?

 というか、あのチートステータスのアレクサンダー君と、対等に渡り合えるのって、男子じゃご主人様ぐらいだし、アレクサンダー君的には、話が合うのって、ご主人様ぐらいしか居ないんですよ!』


 鑑定スキルが、俺を宥めてくる。


「ウチのクラスには、恋愛イチャイチャキングダムの攻略対象の2人組が居るじゃねーか!」


『なんか居ましたね。そんなの。ご主人様と比べたら、僕的にその他大勢のモブに格下げしてました!』


「お前、2人組に失礼じゃねーか!」


『ご主人様だって、名前も覚えてないでしょ!

 それに、僕は鑑定スキルなんで、嘘は言えないんです!

 あの2人組は、今じゃどう考えてもモブと、僕のデーターベースに載ってますから!』


 鑑定スキルは、相変わらず毒舌である。

 俺は、嘘が言えないイコール毒舌だという事を、鑑定スキルを見て学んだのであった。


 そして、アレクサンダー君もクラスに馴染んで来たある日。


「ヨナンよ! カララムダンジョンに攻略に行ってみないか!」


 突然、アレクサンダー君が無茶ぶりしてきた。


「陛下と一緒に、カララムダンジョンなんか行ける訳ないでしょ!

 陛下に何かあったら、俺は、どうやって責任取ればいいんですか!」


「大丈夫! ワシ、結構強いから」


「強いのは知ってますけど、そもそも陛下って、カララムダンジョンに入った事あるんですか?」


「何度かあるぞ! じゃが、その時はお付の者が大勢着いてきて、魔物を倒すのも、半死になった魔物を一突きして殺すだけで、全く楽しくなかったのじゃ!

 なので、ワシは、血肉が踊る大冒険がしたかったのじゃ!」


 どうやら、アレクサンダー君は、カララムダンジョンで姫プレイしかした事なかったようである。


 だったら、余計に、カララムダンジョンなんかに連れていけない。

 というか、何時になったら、アレクサンダー君のお付の者が編入生して来るんだよ!


『あの……ご主人様。多分、アレクサンダー君のお付きの者って、ご主人様の事ですよ。

 エリザベスさんからも、学園内でのアレクサンダー君の事を、くれぐれも頼むって念話で連絡きてましたから』


「嘘だろ!」


 俺は、アレクサンダー君が居るのに、思わず声を出してしまう。


「ヨナンよ。グリズリー公爵に聞いておるぞ。お主がもってる鑑定スキルLv.3は、念話で会話ができるようじゃな」


 どうやら、アレクサンダー君には、鑑定スキルLv.3が喋る事をバレてたようである。


「おい! 鑑定スキル!」


 今まで黙ってた事で、不敬罪にされると嫌だから、急いで鑑定スキルに自己紹介するように指示を出す。


『分かってますって、アレクサンダー君に自己紹介すればいいんでしょ!』


 鑑定スキルは、俺に返事した後、アレクサンダー君に自己紹介を始める。


『初めまして! 僕、鑑定スキル。悪い鑑定スキルじゃないよ!』


 鑑定スキルは、どこで覚えたのか、よく聞くセリフで、アレクサンダー君に挨拶した。


「おお! これが念話じゃな! ウム。鑑定スキルよ! ワシが第15代カララム王アレクサンダー・カララム。ちょいワル王様じゃ!」


 なんか、アレクサンダー君は、自分がちょいワル王様だという事を認識してるようである。


「で、俺が陛下を護衛しながら、カララムダンジョンを攻略すればいいんだな?

 しかし、俺一人じゃ不安なんだが……」


『大丈夫ですよ。既に、ご主人様の女騎士達に、念話で指示しておきましたから!

 何か起きた時に、直ぐに対応出来るように、少し離れて着いて来てくれるという事です!』


「離れなくても、一緒に攻略すればいいのに」


『彼女達は、騎士に徹してますから、ご主人様から一歩引いて行動するみたいです』


「それ……騎士というより、忍者の行動原理だろ……」


『まあ、彼女達の師匠って、忍者のハヤブサさんだから、忍者的な主君の仕え方になってしまったんじゃないですか?』


「そういうことか……」


 俺は、妙に納得した。

 新学期になってから、学園下の地下迷宮以外では、彼女達は、いつでも俺から一歩引いて行動してたのだ。しかも完全に身を隠して。完全にくノ一になり切っている。


 でもって、


「よし! それではカララムダンジョンに向けて出発じゃ!」


 アレクサンダー君は、人の気持ちも知らないで、ノリノリでカララムダンジョンに出発したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る